仲の良かった兄弟が…
遺産分割をめぐる家族間のトラブルを避けるために
遺産相続をめぐって、いままで仲の良かった家族や兄弟姉妹が、ドロドロの争いを繰り広げる……そんなことは映画やドラマの中だけの話だと思っていませんか。遺産分割をめぐる事件の裁判(家事調停・審判)は、年間1万3000件以上(平成22年)。しかも、ここ数年は増加傾向にあります(右図3)。
2012年8月に成立した社会保障と税の一体改革関連法案では、消費税の増税にばかり注目が集まっていますが、この案の中には相続税の改正も盛り込まれています。この改正の注目点は、右の図1、図2の内容で、これにより相続税の課税対象者は、現在の4%から6%に増加すると政府は想定しています。2%というと200万人以上の人に新たに相続税がかかることになります。多数の土地を所有している資産家だけではなく、持家のみでも相続税がかかることが想定されます。
それでは死後の家族間のトラブルを回避するためには、今のうちに何をすべきでしょうか。まず第一に法的に有効な遺言書は必ず残しておくべきでしょう。
孫のためにおじいさんが貯めた貯金は孫の物?
答えは「NO」。孫の名前で祖父がこっそり貯めた預金は「名義預金」または「借名預金」であり、本当の預金者である祖父のものと見なされます。したがって、祖父が亡くなれば、遺産分割の対象となります。祖父がかわいい孫のために残すつもりでいたお金も、故人の遺産としてカウントされてしまいます。
会社の株式や事業用資産を親族に分けていい?
答えは「△」。いわゆる“お家騒動”になりかねないので、できれば避けたいことです。会社経営の安定化のためには、1人の後継者に集中させた方が、経営に対する決断の支障にならないのでベター。特に会社に関係のない他の相続人に分散させると、売買などが行われてとんでもない事態を招く可能性もあります。
生前に父親がビデオテープに残した遺言は有効?
答えは「NO」。たとえ本人が語っているものでも、正式な方式(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)でなければ、遺言とは認められません。また、自筆証書遺言は、遺言の全文、氏名及び日付を自書し、押印するなど、法定の要件を満たさない場合、無効になることがあります。
専門家に頼んだ遺産分割が不満なら分け直せる?
答えは「NO」。公平に分けてもらったものであれば、不満は通用しません。どうしてもわがままを主張する人がいる場合は、家庭裁判所での調停が必要です。
愛人とその子に遺産相続の権利はある?
答えは「△」。愛人には相続権はありません。但し、その子の場合は認知されていれば相続権はあります。また、愛人であっても、方式に則った遺言書に財産を相続させる旨の記載があれば、相続の権利があります。