土地の広さやロケーションで変わる工法
最初の一歩を恐れずに踏み出す
借り入れをして初めて賃貸業に乗り出した時でも、不安はなかったと語る鈴木さん。
「最後は度胸です。みなさん、私も同じようなことを考えていたと言いますが、じゃあどこに差があるかというと、度胸でしょ。成功した人を見て、後からならいくらでも言えます。結局は、やるかやらないかの差なんです。ただそれだけですよ。もっとも私は女ですから、ふだんの生活を壊さない程度しかやりませんけど」
自己資金の面で無理をすることは決してしないという鈴木さん。お子さんの学資保険を崩さないと資金が足りなりなくて……そんな相談を受けた時には、身の丈に合わないことはやめるようにとアドバイスされたそうです。
「チャンスって、1回だけじゃありません。ちゃんと勉強して、アンテナを張って、待っていれば必ず別の物件と出会えます」
所有する物件が増えた今は現金でも買えるようになり、銀行にはもっと借りてくれと言われる鈴木さんですが、「大きくするのが目的じゃない」と、あくまで堅実です。
賃貸住宅を建てる際の考え方
「自分は先祖代々の土地を持ってるから、仕入れは建物だけで済むというのは勘違いです」と鈴木さん。土地は持っているだけで税金がかかるものですし、売る際にも税金がかかります。コストや利回りの計算、借用資金の返済計画から、土地を外して考えてはいけないのです。
相続税を減らすために借入金で賃貸住宅を建て、いよいよ賃貸経営がスタート。でも、減価償却で資産価値はどんどん下がっていきます。
「親から100もらって、ただ守ってるのは、減らすことと同じです。子どもが3人いたら、100ずつ残してあげなきゃ」。自分が親にしてもらったことを3人の子供にもしてあげるためには、100を300に増やさなければいけないということになります。
「私は郊外を中心で新築でも10年で元がとれる物件しかやりません。それより遠い将来、たとえば30年先のことはわからないでしょう?」
そのためには、無理な借金をしないこと。借金で相続税は減らせますが、借金を子孫に残すデメリットも考える必要があるのです。
自分でも管理に関われる賃貸物件の経営
「一番大事なことは、管理会社さんに頼りきらずにやっていけること。手に余るようなものを建てちゃいけません。見栄よりも実を取らなくちゃ」
人には階段がある、というのが鈴木さんの考え方。「一段一段登って行かないと」。鈴木さんの本を読んで、書いてある通りにすぐできると思っている人も多いですが、「私だってひとつひとつ課題をクリアして、だんだんノウハウが身についてきたんだから」
建てたら終わりと思っている大家さんも多いですが、仕事の始まりは建ててから。建てた瞬間から減価償却が始まって資産が減っていくのですから、それを少しでも食い止める努力が必要です。
「私がよく掃除に行くのはそのため。どこが傷んでるか、すぐわかります」
傷んでいるところに早め早めに手を入れていくのが、長持ちさせるコツ。修繕費も結局安くなります。
大家さんの「これぐらいは取り替えなくていいっていうのは、もう取り替えなさいということなの」と鈴木さん。「賃貸物件も商品なんだから、いつもきれいにしとかないと」
大家さんのやる仕事と管理会社の仕事は別
入居者のトラブルを防ぐのは管理会社ではなく、大家の仕事だというのが鈴木さんの持論。「うちは大家さんに、草取りと掃除は自分でしてねって言うんです」。アパートに通ううち、気の合った入居者から情報がもらえるようになります。気になる部屋は大家として訪問し、きれいに住んでいるかどうかを見れば、トラブルを抱えているかどうかはわかるとか。
情報をくれた人には、目立たないようにお礼を。鈴木さんはお礼の手紙と商品券をポストに入れておくそうです。
「いい大家さんと良い大家さんって違うんですよ」と鈴木さん。「どっちでもいい」、すなわち、なんでもイエス、イエスと言ってしまうのが「いい大家さん」。しかし他の入居者のためにも、ダメなことはダメとはっきり言わなければいけない局面があるのです。
必ず年に一度は「棚卸し」をする
将来を考えるために鈴木さんが行っているのが「棚卸し」。
「土地でも、自宅でも、何でも。相続で子孫に残すものか、自分の代で売るのか、修理してあと何年ぐらい使うのかとか、全部棚卸しをするべきです。その結果は毎年変わっていいんです」
これを毎年繰り返すことは、自分を納得させるための作業でもあると鈴木さん。「正月三が日など、時間や気持ちに余裕がある時でないとできません」
古くなって修繕費がかかるようになる前に売却するのがスタイル。収益がまだ出ているのに売るという決断はなかなかできませんが、鈴木さんが不動産の師匠と仰ぐ人に言われたそうです。
「儲かっている物件だから高い値段で買ってくれる。惜しいなっていうところで売るんだよ」
賃貸業は安定していて女性向き
バブルの時に羽生駅前も土地が高騰しましたが、今は1/5~1/6。でも家賃はそんなに落ちていません。
「そういう意味では大家さんってすごくいいよ。ボロ儲けはできないけど安定性はあります。きちんとまじめにやっていれば」
あとは、自分に合うパートナーを見つけることが大切。「弁護士さんでもなんでも、よく言いましたよ。お父ちゃんの次に好きよって」
大家さんってそんな大変な仕事じゃない、と鈴木さん。ご近所付き合いやPTAの大変な人間関係を経験している女性は、入居者との付き合いにも長けているので、「大家さんは女性向き」なのだそうです。
「さまざまな入居者がいますが、みんなかわいいもんです。その気持ちがあれば賃貸経営はできます」
あんまり利口じゃないほうがいいみたい、と笑う鈴木さんでした。