2019年3月が8%と10%の分かれ目
2019年10月に行われる消費税アップ
安倍首相が消費増税の延期を表明し、増税時期は2019年10月にほぼ決定しました。税率は現行の8%から10%になります。
4年間延期された増税
2014年4月に8%となった消費税。政府は景気の状況を見ながら消費税を引き上げる方針で、当初は2015年10月に10%へと引き上げる予定でしたが、2017年4月に延期。さらに安倍首相は、2019年10月まで延期すると表明しました。
3月末までの契約なら8%の消費税が適用
アパートやマンションの建築には多額の費用がかかるので、消費税の2%アップは大きな負担となります。増税前に建築の契約を……と考える人も多いことでしょうが、消費税率が確定するのは契約時ではなく、建物の完成・引き渡し時です。建物の規模や工法によっては工期が半年から1年ほどかかるので、今から設計や事業計画の作成などを行ったとしても、2019年10月には間に合わないというケースがあり得ます。
そこで、契約から引き渡しまで一定以上の期間を要する建築工事の契約には法的な配慮が必要と認められ、特別な経過措置がとられることになりました。
新消費税率適用に関する特別な経過措置
- 新税率施行日の半年前を「指定日」とする
- 指定日の前日までに建築工事の契約を締結すれば、引き渡しが新税率施行日以降となっても旧税率を適用
消費税率10%のスタートを2019年10月とすると、「指定日の前日」は3月31日となります。したがって、2019年3月31日までに建築の請負契約が結ばれていれば、完成引き渡しが2019年10月1日の後になっても、消費税率は8%になるのです。(図1参照)
なお、2019年3月31日までに契約した場合でも、4月1日以後に工事などが追加されて当初の契約金額よりも高くなった場合には、 増額分についてのみ10%の税率が適用されます。
リフォームや修繕にも適用される経過措置
経過措置の適用は、アパート・賃貸マンションなどの工事請負契約にとどまりません。賃貸物件につきもののリフォームや修繕、改修工事も対象になります。すでに賃貸経営を行っているオーナー様は注意してください。
マンションの大規模修繕工事などは長期間にわたることがあるため、早めの計画と契約が重要。契約時期に問題がなくても、工期の遅れで完成が2019年10月1日以降にずれ込むと、消費税は10%となってしまうので注意が必要です。(図2参照)
今年の早い時期からスタートさせたい商談
2019年の3月末までに請負契約が完了していればいいのですが、実際には最低でも商談開始から契約まで2カ月程度かかるので、来年から商談をスタートさせるのではギリギリです。消費増税前に駆け込み的な契約が増えることは確実で、建設会社の対応が遅延することも予想されますから、年内にはある程度商談をまとめるようにするべきでしょう。
とりあえず契約を済ませ、詳細な仕様などは後から決めるということも可能ですが、額面は契約時に決定している必要があります。また、大幅な契約変更は別の契約とみなされ、旧税率が適用されない場合があります。
値上がりが予想される建築関連費
オリンピック特需などが押し上げる建築費
震災復興事業に続く東京オリンピック関連の建設特需もあり、建築資材の価格は高止まり状態。住団連の調査では今後も上昇するという見方が多くなっています。(図3参照)
需要と供給のバランスが大きく崩れると、マンション建設に使われる資材のさらなる値上げもあり得る状況です。
人手不足による人件費の上昇
リーマン・ショック後、大幅にダウンした建築の手間賃ですが、現在は急激な上昇を見せており、今後もそれは続く見込みです。(図4参照)
バブル崩壊やリーマン・ショックによって減った建設労働者の数は、建設業の需要が高まった現在でも元に戻っておらず、需要に供給が追いついていません。とりわけ、大工などの技術工は育成に時間がかかるので、人手不足がすぐに解消されることはないでしょう。(図5参照)
総じて、建築費が下がる要因は見当たらないというのが、図3~5の調査に回答した住団連の会員の見解です。消費増税が控えている今、マンション建設には早めの決断が必要と言えるでしょう。