大型オフィスビルの建設で変化する賃貸市場
低い空室率が続く都心のオフィスビル
近年、オフィス需要の高まりにより、東京都心のオフィスビルの不足感が続いています。2018年3月の空室率は2.8%で、10年ぶりに3%を割りました。(図1参照)
その要因として、働き方改革を進める大手企業や、IT系企業のオフィスの拡張意欲の高まりが挙げられます。また、女性やシニアなどの就業者数の増加も要因と考えられます。
東京都心部の空室率は需給均衡の目安とされる5%を大幅に下回っており、オフィスの平均募集賃料は2009年8月以来の高水準に達しました。賃料の上昇は51カ月連続となっています。なお大阪、名古屋、福岡でも最近の空室率は3%台で推移しています。
都心で建設が相次ぐ大規模なオフィスビル
2018年に大規模なオフィスビルが相次いで完成しますが、大半はテナントが決定していると言われています。しかし、2019年にも大規模なオフィスビルが相次いで完成するため、オフィス不足の状況は変わると考えられます(図2参照)。2年間の年平均新規供給面積は23万3000坪で、過去10年間の平均18万坪を3割近く上回ります。
ここまで供給量が多いと、需要を超えてしまう可能性があります。2019年末には空室率が2017年末比で3ポイントほど上昇し、5%弱になるという予測をする専門家もいます。しかも、同様な大型の再開発は東京オリンピックが開催される2020年まで続くため、空室率はさらに上昇するかもしれません。同様の事態は、東京以外の地域でも起こる可能性があります。
古い貸しビルの空室問題を建替えで解決
オフィス移転が進むと問題になる「二次空室」
東日本大震災後、耐震性や安全性への要望が高まっています。また、広いフロアに会社組織を集約することで効率化を図りたいといったニーズも根強いものがあります。
こうしたニーズを満たすビルの大量供給で生じる問題が、「二次空室」の増加です。企業が移転してしまった古いビルに生じる「二次空室」は、立地が良くない場合には解消が困難です。また、OA機器の設置がしにくいなどの理由でテナントが決まりにくく、賃料を下げざるを得ないケースもあります。
資金があれば、ビルのクオリティを保って賃料を維持できる可能性もあります。とはいえ、ビルの構造自体を変更することは困難なので、インターネット関連設備の格納などができないといった限界はあります。
築古のオフィスビルを賃貸マンションに建替え
大型のオフィスビルの新築ラッシュが続く一等地以外の地域では、築古のオフィスビルで今後安定した需要が見込めるかは不透明です。そのため、テナント併用の賃貸マンションに建替える事例も多くなっているようです。アパート・マンションの賃貸経営は、オフィスなどの土地活用方法に比べて賃料が安定しているため、景気の波に左右されにくいというメリットもあります。
事業転換してテナント併用の賃貸マンションに建替えるなら、建物のプランやデザイン、賃料の設定なども一から検討しなければなりません。また、テナントの退去に関する交渉が必要になる場合もあります。当社はこうした点も含めて対応させていただきますので、ぜひご相談ください。
事例
テナントの退店をきっかけに新たな土地活用を決断