売却と保有継続のどちらを選択するかが問題
底地の所有者を悩ませる権利関係
底地(貸宅地)とは、地主から借りた土地(借地)に家を建てて住む借地人がいる土地のこと。底地を所有する地主(底地権者)と借地人(借地権者)という複数の権利者がいる土地ということになります。
底地の問題点としてまず挙げられるのが、権利関係の複雑さ。複数の借地人がいる場合もありますし、亡くなった借地人に複数の相続人がいて借地権者が増えるケースもあります。相続で権利者が増えるのは地主側でも起こり得ること。いずれにしても、権利関係が複雑になった土地は売却などの合意形成が難しく、市場に出しにくくなってしまいます。
基礎控除の縮小によって相続税が高くなっているのも問題です。相続税法の改正があった2015年あたりから、底地を持つ地主やその家族の意識も変わり、底地売却を買取り業者に相談する件数が増えてきました。
困難を伴う地代の値上げ交渉
相続が発生した後の税金負担に対応するため地代を上げたいところですが、昨今の厳しい経済環境下では、値上げに応じてもらうことは困難です。また、代々住み続けてきた借地人には、心情的に値上げ交渉がしにくいものです。もちろん、地代は双方の合意がなければ上げられませんので、交渉が長引くことは覚悟しなければなりません。
底地の問題の解決には売却か保有を選択
こうした問題を解決するためには、売却か保有のどちらかを選択する必要があります。売却には、底地のみの売却と、借地権と底地をセットにする同時売却があります。保有には、借地権の買戻しや等価交換などがあります。保有を継続する場合は、地代の値上げ交渉も視野に入れる必要があるでしょう。
ややこしい問題がなくなる「底地売却」
よくあるケースが、相続税の支払いのための売却。借地人が多すぎたり、借地人との関係がこじれたりしている場合に、借地人との関係を精算するために売却するケースもあります。
住宅地の場合、一般的に借地権割合は6〜7割で、底地を所有する地主の持ち分は3〜4割程度。買取り業者に底地を売却する場合、買取り業者が市場に出すための費用や利益を差し引くと、所有権として通常の不動産マーケットで販売する価格の1〜2割程度になります。
借地人に売却する場合は、買取り業者よりも高い金額での売却が期待できます。買うよりも地代を払い続けるほうが得と借地人が考えているとしたら売却は難しいですが、借地人が建物を建替えたがっている場合は別。借地のままだと住宅ローンの審査が通りにくいため、底地を買って借地権を外そうと考えるかもしれないので、売却のチャンスとなります。
資産を引き継ぐことも見据えた選択を
高値での売却が見込める「同時売却」
地主の持つ底地と借地人の借地権を同時に売却する「同時売却」。土地の所有権が得られるため、権利を別々に売るよりも高値での売却が可能になります。また、一般的な不動産のように、インターネット上などに土地の情報をアップして集客することもできます。借地人側にとっても、同時売却の場合は地主への承諾料が不要になるというメリットがあります。
同時売却を実現するには、借地人が借地権を手放したがっているタイミングであることがベターです。したがって借地人の人数が多いと、意志の統一がしにくくなるため、売却は困難になります。売却を急いでいる場合、同時売却は選択肢から外さざるを得ないと言っていいでしょう。
完全所有で相続対策にもなる「借地権の買戻し」
借地人に相当額を支払って地主が借地権を買うのが「借地権買戻し」。土地の完全な所有権が得られます。同時売却と同様に、借地人に借地権を売る意志があることが前提条件です。
権利者がまとまるため、相続時に現金化しやすいです。また、所有権化した土地に節税対策を兼ねて賃貸物件を建てるといったことも可能になります。
分割しやすい資産になる「等価交換」
不動産の権利を交換することを「等価交換」といいます。底地の場合、地主と借地人の権利を交換することによって、土地に複数の権利者がいない状態にできます。複雑な権利関係がなくなり、売買もしやすくなります。
例えば100坪の土地で、地主が持つ60坪の底地権と借地人が持つ40坪の借地権を交換すれば、地主は40坪の土地の所有権を得ることができます(特例により譲渡税はかかりません)。底地100坪より所有権化した土地40坪の方が売却しやすく、相続の際のリスクも減らせます。
地主と借地人から土地の提供を受け、デベロッパーが建設資金などを負担してマンションを建設する等価交換マンションも同様のメリットがあります。
保有を続け収益性も高まる「地代の値上げ」
すぐに売却できない事情がある場合は、「地代の値上げ」が収益性アップの早道です。とはいえ、地主が地代改定の交渉をするのはかなりの負担。そういう場合は土地の管理を委託し、不動産業者を通じて地代の改定交渉を行うというやり方もあります。
最適な解決策の選択にはプロの目が必要
複数の権利者がいる底地にまつわる問題は、地主様の事情によって解決策も変わります。当社ではベストな解決策のご提案から売買、土地活用まで幅広くお手伝いが可能ですので、お気軽にご相談ください。