FEATURE
立退き料発生を避けるには
将来の建替えに備えて
定期借家契約に切り替える
借主にメリットのある契約条件の提示、
正当事由の発信などを行い、
借主の納得感を醸成することが重要です。
スムーズにする
直接赴く
条件をつける
必要性の情報発信
交渉を進める
4つのポイント
著者:生和コーポレーション編集部
監修者:生和コーポレーション編集部
当記事は、土地活用サポートで50年以上の歴史をもつ生和コーポレーション編集部が、建て替えに備えて立退きをスムーズに進める方法について解説します。
「定期借家契約」を結べば立退き料が不要に
テナント賃料の10年分の立退き料がかかることも
「普通借家契約(以下、「普通借」)」を結んでいる場合に、オーナー様の都合で物件からの退去を求める場合、立退き料が必要です。
ただし、立退き料には相場はありません。立退き料の内訳は、新物件への移転費用、移転によって生じる損失に対する補償などが含まれ、個々の事情を鑑みて算定されるからです(図1参照)。一般的にテナントの立退き料は高額になるケースが多く、「地域の常連客が多い」「近隣に空き物件がない」などの事情があると、賃料10万円の店舗の立退き料が約1000~1500万円と算定されることも珍しくありません。
図1 過去の判例から見るテナント立退き料の内訳
補償
対する補償
立退き料支払いの心配が不要な「定期借家契約」
高額な立退き料を避けるために検討したいのが「定期借家契約(以下、「定期借」)」への切り替えです。「定期借」は賃貸物件の契約形態の一つで、契約期間満了時に確実に明け渡しを求めることができます。建替えの検討時期に入って、テナントが入れ替わる場合、新たな借主には「定期借」を提案するのがベターでしょう。
一方、現在「普通借」で契約している借主に対して、退去を前提とした「定期借」への契約切り替えを打診する場合、話は簡単ではありません。しかし、借主からの信用や理解を積み重ねることで、「定期借」への可能性は広がります。上部で示したように、わかりやすいメリットを提示したり、時間をかけて建替えの必要性を発信し続けたりすることが重要です。
建替えを意識しはじめたら、弁護士などの専門家に相談しながら、立退き交渉をしたり、契約切り替えの準備を進めたりするといいでしょう。
借主への丁寧な説明が欠かせない「定期借家契約」
「普通借」と「定期借」の契約内容の違いは?
ここで、「普通借」と「定期借」の契約内容や契約方法の違いを見ていきましょう(図2参照)。
大きな違いであり、オーナー様にとっての最大のメリットは、前述のように、定期借は契約で定められた期間が終了すれば確実に物件を明け渡してもらえて、立退き料を支払う必要がないということ。
また、定期借では貸借期間を自由に設定できます。さらに、不合理でなければ「契約期間中の家賃の減額交渉に応じない」という特約を盛り込むことができます。ただし、自分に有利な条件や特約を盛り込むことになれば、借主にとっては契約締結のハードルが上がっていくので、交渉が難航することも予想できます。
図2 普通借家契約と定期借家契約の違い
普通借家契約 | 定期借家契約 | |
契約方法 | 口頭による契約でも、書面による契約でも可 (口頭の合意だけでも契約は成立しますが、 紛争を防止する観点から、契約書を作成し、 契約条件を明確にしておくことが望ましい) |
・書面の契約に限る ・「更新がなく、期間満了により契約が終了する」ことを契約書とは別の書面を交付して説明しなければならない |
更新の有無 | 更新をしないためには、賃貸人の賃借人に対する正当事由が必要 | 期間満了により終了し、更新なし (賃料の上昇なども含め、貸主と借主の双方が合意すれば再契約することもできる) |
期間を1年未満とする賃貸借の効力 | 期間の定めのない賃貸借とみなされる | 1年未満の契約も有効 |
賃料の増減請求 | 特約にかかわらず、請求可能 | 原則請求できるが、賃料も増減しない旨の特約を定めることも可能 |
賃借人の 中途解約の可否 |
原則として賃借人の中途解約は不可。特約があれば特約の内容に従う | ・原則として賃借人の中途解約は不可。特約があれば特約の内容に従う ・ただし、居住用の部分を含む場合は、一定の要件を満たせば中途解約可 |
出典:国土交通省「定期借家契約をご存じですか…?」(一部編集)
専門家のサポートを得て進めたい定期借の契約締結
基本的には貸主に有利に見える定期借ですが、契約時には必ず「書面を用いたうえでの事前説明」を行う義務が課せられています。
借主に対して、契約期間が満了したら物件を引き渡すことを、「契約書とは別の書面」を用意して説明しなければいけません。近年の判例では、「専門的な知識を持たない借主でも、十分に理解できる程度の書面が必要」「必ずしも口頭で説明を行う必要はない」などの基準が明らかにされています。
「定期借」の締結を進めるうえでは「借主にきちんと理解してもらうこと」を念頭に置きつつ、専門家のサポートを得るのがよいでしょう。契約内容に関わるアドバイスが必要な際は、ぜひ当社にご相談ください。