相続税は大幅増税、贈与税は見直し
25年度税制改正をおさらい
平成25年度税制改正により、何が増税となり、何が減税となるのでしょうか。
そのポイントをまとめたのが右上の表1。たとえば、所得税は、現行の税率構造に加えて、課税所得4,000万円超について45%の税率を創設。高額所得者の日本離れがますます進むことが懸念されます。
相続税、贈与税についても、いずれも最高税率55%(現行は50%が最高)が創設されます。
相続税については、税率構造が見直され、現行は3億円以下40%が2億円以下となり、3億円以下45%、5億円以下50%、6億円超55%となります(現行は3億円超一律50%)。さらに基礎控除が大幅に減額となります。現行の基礎控除5,000万円+(1,000万円×法定相続人数)が、改正で基礎控除3,000万円+(600万円×法定相続人数)となり、たとえば8,000万円を3人で相続する場合、現行は相続税がかからないのが、改正後は合計で350万円の税が発生します。(配偶者の税額の軽減については考慮しない)。
贈与税については、前述の通り、最高税率を相続税に合わせる一方で、直系尊属から贈与を受けた場合とそれ以外の場合で税率構造が異なるようになります。右下の表2のように子や孫などが受贈者となる場合には税率が緩和される方向で見直されました。
法人化により子が株主になり節税
税制改正により増税となると、節税対策が重要になります。
1 賃貸マンションや土地を所有する親と子の相続税対策として最も盛んに行われているのは、法人を設立して子が株主になる方法です。
法人が親の所有する賃貸物件を買い取る、あるいは親の土地に法人名義で賃貸マンションを建設する2つのパターンがあります。収入が法人および役員である子に入るので、親に集中していた財産・所得を分散することができ、相続税・所得税の節税が図れます。前者の場合は、築年数が長く借入金の残りが少ない賃貸物件を買い取る場合に効果を発揮します。また、両者とも相続までの期間が比較的長いと予想され、親の所有地に新たにマンションを建設する場合に有効です。
相続対策を急ぐ場合は親名義
2 法人化しない場合は、土地・建物ともに親名義でマンションを経営する方法が有効です。
親名義の土地に賃貸マンションを親名義で建設すると、土地の相続税評価額は、借地権割合と借家権割合が引かれる「貸家建付地評価」になります。地域ごとに借地権割合は異なりますが、相続が発生した場合に、自宅だけを建てた場合の自用地評価額に比べて、約2割程度土地評価額が減少します。 建物も貸家については3割の評価減が設けられており、元々の評価と合わせて建築代金の約5割になると言われています。
この場合は、借入金の残額は全部債務控除となり、相続税の負担が軽減します。
つまり、相続税対策重視型。特に賃貸マンションを建設した際の借入金が多額に残っている場合や、相続までの期間がそれほど長くないと予想される場合は、親の代では法人化せずに、子の代で検討した方が良いでしょう。