特徴を抑え、土地活用を制す
それぞれのメリット・デメリットを理解し最適な活用法を見極める
アベノミクス景気や、消費税増税による住宅の駆け込み需要も一段落しましたが、じっくりと土地活用を検討されている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、土地活用を検討する前に、抑えておきたい土地活用の基礎知識についてみていきます。土地活用を積極的に検討されている方も、今後の情勢をみながらという方もぜひ、一緒におさらいしておきましょう。
さて、ひと口に土地活用といっても、さまざまな方法があります。当然、収益性やリスク、メリット・デメリットもそれぞれ異なり、たとえば、短期間に多額の収益を上げたい場合と、長期的に安定した収益を確保したい場合とではとるべき方法も変わってきます。しかし、適した方法だからといって、多額の投資を必要とするものであれば、それに耐えうる財産がなければならないでしょう。また、たとえば、交通量の多い狭小地であれば、マンションを建てるよりは駐車場にした方が有益であるといったように、土地には立地条件や周辺環境により、適した活用方法があります。
つまり、土地以外も含めた現在の財産状況から今の課題を明確化し、手持ちの土地の特徴を把握した上でベストな活用方法を見極めることが肝要です。
では、土地活用の基礎ともいえる内容、活用の種類と、それぞれのメリット・デメリットについてみていきましょう。右表をご覧ください。
土地売却は、資産を現金化する最短手段で、立派な活用方法のひとつです。メリットは、一度にまとまった資金が得られること、資産の組み替えが可能なことなど。その代わり、賃貸経営のように定期的な収入を得る機会はなくなり、譲渡費用などが発生するデメリットもあります。しかしながら、土地条件から賃貸住宅経営が難しい場合は、売却という判断が有益なこともあるのです。
等価交換は、オーナー様は土地を、買主(ディベロッパー)が建築に必要な資金をそれぞれ出資し、オーナー様は出資した土地評価額に相当する建物の持分(区分所有権)を取得します。有効活用できる土地ながら、大きなリスクを抱えるのが不安という場合に適しています。
駐車場経営は、少ない初期投資で始められ、平面式なら転用や更地への復帰も簡単。賃貸経営に比べれば税制上のメリットが少ないなどの短所もありますが、その分、気軽でリスクも少ないでしょう。
定期借地は、簡単にいえば長期一定期間の地代収入であり、土地は必ず返ってきます。また、建物を建てるのは借地人で、オーナー負担はなし。税制上の優遇制度もありますが、長期間にわたり土地の転用はできません。
そして、土地活用の中で最も人気があるアパート・マンション経営。収益が高い分、費やす労力も多く、綿密な事業計画や確実な管理体制が必要です。空室リスクなど頭の痛い課題もありますが、軌道に乗りさえすれば高収益が得られる点が魅力でしょう。このように、土地活用には、それぞれに向き、不向きがあります。土地の立地・環境、現在の財産状況を併せて整理し、オーナーにとって最も理想的な方法を検討しましょう。
賃貸需要が根強い背景
土地活用の中でも近年、最もポピュラーなアパート・マンション経営。その背景や、有効性とはどういったものでしょうか?
ひとつには、賃貸需要の根強さが考えられます。賃貸住宅は従来、マイホームを持つまでの仮住まいという意識が強くありました。しかし"土地神話"が崩壊した今、不動産を所有することの優位性が低下し、質がよければ賃貸住宅に住み続けてもよいと考える人も少なくないようです。実際、近年の賃貸住宅は、ペット共生型マンション、女性専用マンション、高齢者専用住宅など、入居者ニーズを捉えた物件が増加しています。入居者にアピールできる賃貸住宅で、高い入居率を保てれば収入が安定し、コストを大きく上回る収益を生み出すことも可能でしょう。
長期にわたる安定収入は私的年金に
アパート・マンション経営は、長期的な安定収入が大きな魅力。もちろん、それには立地や環境、物件の魅力をはじめ、入居者ニーズへの対応、確実な管理など、空室を出さないための継続的努力が必要です。しかし、そこを乗り越え、一定の入居率が確保できれば、安定収入が見込めます。年金制度への不安が高まる中、借入金返済後の家賃収入を私的年金として活用する、公的年金に頼らない生活設計もみえてくるでしょう。
固定資産税などの税負担
賃貸住宅なら優遇処置が
さらに、賃貸住宅では、固定資産税や都市計画税を節税できるというメリットもあります。通常、土地や建物などの所有者には毎年、固定資産税と都市計画税(都市計画区域のある市町村)が課されます。ところが、賃貸住宅を新築し、住宅用地として土地を使用する場合、当該土地の固定資産税は遊休地や駐車場用地の場合の1/6に、都市計画税は1/3に軽減されます。
建物部分についても、新たに建設したアパート・マンションは3年間に限り、固定資産税と都市計画税1/2に軽減。3階以上の中高層耐火建築物の場合、5年間の軽減措置も適用されます。
また、相続税についても、更地ではなく賃貸住宅を建てて相続した場合、固定資産税評価額から借家権割合が減額され、通常30%の節税に。確定申告をすれば、住民税や所得税の節税効果もあり、賃貸住宅経営は税制上の優位性が高い点も見逃せません。