土地活用の目的や立地条件を再確認。
基本の構造は大きく分けて4種類
賃貸アパートやマンションを建設するにあたり、まず初めに決めを打ち付けた壁や床の面材で支えることから、木造"枠組壁"工法とも呼ばれます。これにより優れた耐震性・耐久性・気密性などを発揮します。
鉄骨造は建物躯体に鉄や銅を使用する建築構造で、体育館などの大空間を作るのに適しています。使用する部材の種類により、厚さ6mm未満の鋼材を用いる「軽量鉄骨造」と、厚さ6mm以上の鋼材を用いる「重量鉄骨造」にわかれます。軽量鉄骨造にはブレースという補強材が使われるのが特徴で、建物重量が軽く、加工がしやすい上に耐震性・耐久性などにも優れています。
一方、重量鉄骨造はハイテンションボルトや溶接などで組むため、より耐震性・耐久性などに優れ、高層住宅にも用いられる構造です。
「鉄筋コンクリート造(RC)」は、7~8階の中高層住宅によく使われる構造で、鉄筋で組んだ枠の中にコンクリートを流し込んで建物をつくります。耐震性・耐火性、耐久性、気密性、防音性など多くの性能に優れていますが、その分、コストも高いものになります。
鉄筋コンクリート造に、さらに鉄骨を使用したものが「鉄骨鉄筋コンクリート造」。柱や梁を鉄骨で組み、その周囲に鉄筋を配してコンクリートを流し込みます。骨組みがより強靭で、高層ビルなど10階以上の建物で多用されています。多くの面で強さを発揮する反面のデメリットとしては、柱や梁が太く、内部空間が制限される、施工が複雑で工期が長く、コストも割高、などの点が挙げられます。
このように、建て方にもさまざまな方法がありますので、土地活用の目的をはじめ、用途地域、立地条件、地域の事情なども考慮し、どの工法が最適なのかを見極めることが大切でしょう。
建物の構造は外からみることができず、また理解しづらい部分もありますが、賃貸アパート・マンション経営に失敗しないための基礎知識として、知っておくと安心でしょう。また、賃貸アパート・マンションの建設の依頼先によって、コストや設備が違ってきますので、注意が必要です。
賃貸マンションも付加価値の時代
賃貸住宅は、ただ貸すだけでは入居者に選ばれない時代。住宅としての強さや快適性は、近年では当たり前のようです。そこで、オーナーとしては、建物構造で特化したメリット(付加価値)を持たせるという方法もあります。
たとえば、木造住宅なら、木のぬくもりや質感にホッとするという入居者もいるでしょう。また、湿度の高い日本において、自然の吸湿・放湿効果はカビやダニの予防にも有効です。
さらに、火に弱いと考えられがちな木造住宅ですが、ある程度の太さや厚みのある木材は、燃え始めると表面が焦げ炭化層を形成します。つまり、火は内部に進行せず、強度が低下しにくいという性質を持っているのです。実大火災実験(日本ツーバイフォー協会)の結果から、このことは事実として確認されています。
集合住宅で重視される「音の環境」
集合住宅では、隣室の生活音や話し声、上階からの足音などがクレームになるケースが少なくありません。こうした音の問題は入居者間のトラブルへと発展することもあるので、事前に手を打っておくのが得策でしょう。
国が定める住宅性能表示制度にも音環境に関する項目があり、集合住宅に限らず遮音性は、住まいを建てる祭の重要なポイントとなっています。物を落とした時の落下音や、子供が走り回る足音といった衝撃音を吸収する床材や、二重構造になった壁材など、建築メーカー各社は遮音性能に優れた商品を開発し、より快適な環境を追求しています。
他の部屋の音を感じさせない、快適な住環境は、入居者にとって大きなメリットといえるのです。
多くの面に優れる鉄筋コンクリート造(RC)
遮音性に加え、入居者の関心を惹くのは、耐震性。特に大きな震災が起こってからは賃貸アパート・マンションにも耐震性へのニーズが高まっています。
鉄筋コンクリート造(RC)は、耐久性・耐震性や遮音性をはじめ、耐火性・気密性にも優れた工法です。現在、中高層の集合住宅に用いられる最も一般的な工法といえるでしょう。
以前は、中低層マンションは鉄筋コンクリート造(RC)、高層マンションは鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)というイメージが強かったのですが、技術が向上した最近では、鉄筋コンクリート造(RC)の高層マンションも建てられています。また、法定耐用年数は47年とされており、躯体寿命も長いものです。
さらに、鉄筋コンクリート造(RC)は家賃も各構造に比べ高くとることができます。法定耐用年数が長いので、しっかりとしたメンテナンスをすれば、築年数がある程度経過しても、入居率を落とすことなく、高利回りを保っている物件が少なくありません。