土地の広さやロケーションで変わる工法
建物の高さによって工法を選択する
木造
「木造在来工法」は日本の伝統的な木造軸組工法のこと。設計の自由度が高いのが特徴です。
「2×4(ツーバイフォー)」は2インチ×4インチの木材と合板を組み合わせたパネルで壁や床などを箱状に構成する工法で、「枠組み壁工法」とも呼ばれます。工期が短く、耐震性・耐久性などに優れています。
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鉄骨造
建物躯体に鉄や銅を使い、柱のない大きな空間(体育館など)を造るのに適しています。厚さ6mm以上の鋼材を用いる「重量鉄骨造」と、6mm未満の「軽量鉄骨造」に分類されます。鉄骨は工場で生産されるため、短い工期で済みます。
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鉄筋コンクリート造(RC)
鉄筋を組み合わせ、周囲をコンクリートで固めた構造。引っ張り力に強い鉄と圧縮力に強いコンクリートを組み合わせ、互いの短所を補っています。
基礎、柱、梁、床、壁、天井などを一体化した継ぎ目のない構造。中高層住宅やビルなどに用いられています。
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鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)
鉄筋コンクリート造に、さらに鉄骨を加えたもの。柱や梁を鉄骨で組み、その周囲に鉄筋を配してコンクリートを流し込みます。高層ビルなどに使われる強固な構造です。
法定耐用年数は、以下の通り。
木造ツーバイフォー …22年、鉄骨造(軽量鉄骨) …27年、鉄骨造(重量鉄骨) …34年、鉄筋コンクリート造 …47年
建物の寿命そのものは耐用年数とは関係なく、主に気候などの外部要因と管理状況に拠ります。
堅牢性や耐久性に優れるRC造は、高い耐震性や遮音性を持つ点も見逃せません。賃貸の集合住宅の場合、これらの点は入居者へのアピールポイントになります。
一方、木造はどこかぬくもりを感じさせますし、木が持っている吸湿・放湿効果で湿度をコントロールできます。火に弱いと考えられがちですが、ある程度の太さや厚みがある木材は表面の炭化層で燃え止まり、強度が低下しにくいという性質があります。
ツーバイフォー工法は、枠組材などがファイヤーストップ材となって空気の流れを遮断し、燃え広がりを防止します。その高い耐火性は火災保険料率に反映されています。
各構造のメリット・デメリットとは
先述で各構造の特徴を説明しましたが、ここではそれぞれのメリットとデメリットをまとめてみましょう。
木造
・メリット
建築費用が安く、短い工期での建設が可能で、解体費用も安価で済みます。
間取りやデザインなど設計に自由度が高いことや、リフォームが比較的容易に行えることもメリットとして挙げられます。
通気性に優れているのでカビが発生しにくく、アレルギー症状が出にくいと言われています。また、調湿機能があり、夏は湿気を吸い冬は乾燥を防ぐので、多湿な日本の気候にも適しています。
木造ということで耐火性が低いように思われがちですが、ある程度の太さ・厚みのある木材を使用すれば耐火性は向上します。
木造を扱っている工務店・建設会社が多いので、建築を検討する場合には工務店・建設会社の選択肢が豊富です。
・デメリット
一般に耐震性、遮音性が、他の構造と比べると劣っていると言われています。しかし近年では技術も進歩しており、木造の中には鉄骨造以上の性能があるものもあります。
また、シロアリは木が主食となるため、素材に木を使用している木造はシロアリ被害の可能性があります。
鉄骨造(S造)
・メリット
建築費用は木造の次に安価となり、工期は木造よりかかりますが、RC造・SRC造に比較すれば短い工期となります。
また、木造と比較すると耐震性は高めとなり、体育館のような柱のない広い空間に向いている構造です。
・デメリット
建物自体が比較的軽いので、横風や地震などの揺れの影響を受けやすく、また結露が発生しやすいため、カビも生じやすい構造となります。
また、壁が薄いため、遮音性があまり高くないところもデメリットでしょう。
万が一火事になった場合、鉄骨自体は不燃材料ですが、550℃で急速に強度を失うため、長時間に渡る火災に弱く、消火に時間がかかると倒壊の危険性があります。
鉄筋コンクリート造(RC)
・メリット
RC造は、他の構造と比べて耐震性、耐火性、遮音性、気密性が高い構造となります。
コンクリートを流し込んで造る構造なので、自由なデザインを得意とし、凝った意匠建築が可能です。
・デメリット
建物の重量が重いので、軟弱な地盤には適しないなど建築できる土地に制限があります。
メリットで気密性の高さを挙げましたが、それゆえに結露やカビが生じやすい面があります。
また、RC造は重量のある鉄筋とコンクリートからできているため、地盤によっては改良工事なども行う必要があり、建築コストが高くなってしまいます。
重量のある素材のため、取り壊す際の解体コストも同様に高めとなります。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)
・メリット
これまで紹介した構造の中では最も耐震性・耐火性に優れ、高層マンションなどの大規模建築物に向いています。
また、サビに強く、遮音性が非常に高いところもメリットです。
・デメリット
RC造と同様に、気密性が高い構造となるため、通気性が良くありません。
また鉄骨造やRC造と比較して建築費がかさむ点もデメリットと言えるでしょう。
限られた建物の大きさを活かしやすいのは木造
十分な広さの土地で、用途地域による建築物の制限が緩ければ、アパートやマンションの建築に関してあまり悩むことはありません。しかし、例えば建ぺい率60%・容積率200%といった制限がある第一種住居専用地域などの場合はどうでしょうか? 建物の面積や高さの制限が厳しい場合、工法はどう考えればいいのでしょうか?
狭い土地でアパートを建てる場合には、空間に無駄が生じない木造がおすすめです。
それ以外に、以下のような場合にも木造が向いています。
将来的なリフォーム予定の建物
例えば家族構成が変化する予定があり、将来的にリフォームの可能性が高い場合は在来の木造が向いています。
限られた建物の大きさの中で間取りを変えるといった大幅なリフォームは、在来の木造なら比較的容易に行うことが可能です。
天井に凹凸がなく柱が出っ張っていないため建物内に無駄な空間が生じず、土地を有効に使えます。
建築費用を抑えたい
木造の建築費用は、他の構造と比べて最も安価です。
建築費用を抑えることができれば、賃貸物件の家賃も抑えることができますので、立地や入居率を検討して適正な家賃を決定する際に、木造は強い味方となります。
アレルギー症状に備えたい
木造は比較的アレルギーが出にくいと言われている構造です。
そのため、化学物質に敏感な家族や健康に不安を持つ家族がいらっしゃる場合におすすめです。
対して、一般的にRC(鉄筋コンクリート)造は鉄筋の入った柱が太いため、かなりのデッドスペースが生じてしまう点で木造より不利です。
しかし、最近ではRC造でもスペースを無駄にしない壁工法があり、梁の出っ張りなども軽減されています。こうしたスペース効率のいい工法を選択すれば、狭い土地でも部屋数を確保することが可能です。
また、以下の記事で木造の集合住宅について説明しておりますので、こちらも併せてご覧ください。
関連記事はこちら:「集合住宅において再び木造建築が注目される理由とは?」
建設コストが大きいRC造は土地を選ぶ
第一種住居専用地域で4階程度の建物が上限といった土地の場合が、悩みどころとなるでしょう。
耐震性や耐久性などに優れるRC造ですが、地盤によっては杭を深く打たないといけないケースがあり、そうすると建築費が高くついて採算が合わないということもありえます。
一方、防火地域であれば、防火性に優れたRC造が最初の選択肢となるでしょう。
RC造を採用するなら、建物のグレードに応じた高めの家賃を設定でき、部屋数を十分に確保できる場所がベターです。RC造は「土地を選ぶ」のです。
また、RC造を選択する場合には、以下のような場合に向いているでしょう。
中高層の建築をしたい
引張力に強い鉄筋と圧縮力に強いコンクリートが組み合わせることにより、マンションに必要な強度が出るため、中高層マンションなどに向いています。
実際に、多くのマンションでRC造が採用されています。
マンションの1階に店舗などを入れる
設計の自由度が高いので、1階をオフィスや店舗にする場合にもおすすめです。
デザインにこだわりたい
RC造は、コンクリートを流し込んで造る工法なので、デザインの自由度が非常に高く、凝ったデザインの建物もデザインに忠実に建築できます。
そのため、外観デザインにこだわりたい建築に適しているでしょう。
関連記事はこちら:「RC造の大型併用住宅による土地活用を考える」
耐震性・耐火性の高いSRC造
SRC造とは鉄骨の周囲に鉄筋を組み、さらにコンクリートを打ち込んだ構造となり、鉄骨・鉄筋・コンクリートそれぞれの長所をまとめて持っていると言っていいでしょう。
鉄骨造の「熱に弱い」「サビやすい」という欠点をコンクリートで包み込むことでくつがえし、さらに揺れへの弱さを鉄筋と鉄骨が支えているため、結果的にRC造に比べて耐震性・耐久性に優れた構造になっています。
高層マンションの多くはこの構造で建築されています。
柱や梁などのサイズを小さくしても耐震性を維持できるので、室内の間取りがスッキリとまとまり、その点も高く評価されています。
ただし、どうしても建築コストが高くなりますので、賃貸物件の場合は家賃に影響が出てしまいます。
震災時にも最も倒壊しにくいと言われている構造ですので、建築コストが高くとも耐震性は妥協しないという方におすすめです。
建築構造は目的に合わせた選択が大切
これまで紹介したように、建築構造は木造、S造、RC造、SRC造の4つに大別されます。
建物の高さによって構造・工法の選択には制限が設けられますが、その制限内であれば建築主の考え方で選択することができます。
検討項目は建築費用・工期・耐震性・耐火性・耐久性・遮音性・デザイン自由度・リフォーム自由度など多岐にわたります。
各構造のメリット・デメリットとご自身の希望する条件を照らし合わせて、検討してみてください。
※写真はイメージです
※記事中では一般的な事例や試算を取り上げています。個別の案件については、お気軽にお問い合わせください。