賃借人への補償も視野に入れた立退き交渉
古い集合住宅はリスクが高く収益性も悪化する
高度経済成長期に建築された「質より量」の老朽アパートはメンテナンス費用がかさむうえ、人気も低下して採算が悪化しがちです。また、防災・防犯面で問題がある場合も多く、相続したとしても不良資産となってしまいます。
特に都市部では、いつ来てもおかしくないといわれている大震災に備える意味でも、老朽アパートの建替えを検討されているオーナー様が多いことと思います。しかし、建替えにあたって大きなハードルとなるのが、居住者の「立退き」です。今回は、昨今の不動産事情を踏まえながら、立退き問題について考えてみましょう。
契約書通りには進まない立退き
通常、立退きにあたっては、入居者に対して理由を示すとともに、一定程度の補償を行うことになります。建物の賃貸借契約期間は2年程度ですが、期間が満了した賃借人に立退いてもらおうと思っても、そうはいかない場合が多いからです。
契約書にある契約期間が満了すると、通常は事前に「更新」の合意をして賃貸人が更新料を受領し、また2年程度の契約をします。しかし、賃貸人側が契約を打ち切ろうとしても、賃借人が拒否すれば、期間満了後も契約が続くのが原則となっているのです。
また、賃貸人側からの賃貸契約解約には「正当事由」が必要と借地借家法で定められています。この場合の正当事由とは、貸主が借主に明け渡しを求めることができる常識的な理由を指します。老朽アパートの場合は、耐震性の不足が正当事由として認められる可能性が高いですが、それも個々のケースで変わってきます。
立退き交渉の一般的な流れ
賃借人に立退いてもらえない場合、ケースによって異なりますが、以下のような手順を踏む必要があります。
交渉の肝となる立退き料の基準
立退き料が必要になった場合、その相場はどのくらいでしょうか?
立退き料の算定の仕方としては右の3つの要素があるといわれています。
特に店舗や事務所などのテナントの場合、(2)の営業権の補償が大きな金額となりますが、一般的な居住用賃貸の場合は、おおよそ家賃の2〜5カ月が目安といわれています。しかし、これもあくまで目安で、立退き料に相場はないというのが実態です。
立退きと引っ越しをセットで考える発想も必要
賃借人の引っ越し先を決めて立退きを促す
立退きをスムーズに進めるためのもう一つのポイントが、入居者に引っ越し先を斡旋することです。昨今の立退きの現場で、交渉の担当者が一番苦労するのが、実はこの点かもしれません。
老朽化したアパートの場合、長年住んでいて家賃も安いままという人が少なくありません。そのため、高齢者や収入の少ない人が今と同じ家賃水準で物件を探しても、見つからないことが多いのです。
建替えが進んで家賃相場が上がっている地域では、転居先としてちょうどいい家賃の物件が減少していることもあります。これでは、立退きを承諾したとしても、近場では引っ越しができません。
こうした場合、エリアを広げるなどして探すしかないため、賃貸人が情報を持っている不動産会社と連携するなどして、転居先を探す努力も必要になってきます。
立退き交渉には経験豊富なパートナーが必要
立退き問題には似たような過去の事例や判例もありますが、個々の事情や解決までのプロセスは千差万別。考慮しなければいけない要素は膨大で、感情や人間関係、家族関係といった数値化になじまない要素も含まれていますので、立退き料の事例一つとっても参考程度にしかなりません。
賃貸人も、交渉を人まかせにせず、借地借家法などの法律知識を踏まえた上で、立退き問題に対処していくべきでしょう。とはいえ、交渉に時間や労力をかけて取り組める立場の人が限られているのも事実です。
もし入居者の立退きでお困りの件がありましたら、生和コーポレーションの経験豊富な営業マンまでご相談ください。実際の現場で数多くの案件を解決してきているプロならではの目線で、お客様の立退き問題などを含め、土地活用のすべてについてご提案をさせていただきます。