建替えに立ちはだかる立退き問題への対処法

土地や建物に関するコンサルティングカンパニーSEIWAから土地オーナーの皆様の今後をサポートする情報を毎月お届けする「生和ジャーナル」vol36

SPECIAL FEATURE
老朽化した集合受託を生まれ変わらせるためのステップ

建替えに立ちはだかる立退き問題への対処法

交渉は長期戦。適正な立ち退き料や代替物件の提供も必要に

賃借人への補償も視野に入れた立退き交渉

古い集合住宅はリスクが高く収益性も悪化する

老朽アパートの問題点

高度経済成長期に建築された「質より量」の老朽アパートはメンテナンス費用がかさむうえ、人気も低下して採算が悪化しがちです。また、防災・防犯面で問題がある場合も多く、相続したとしても不良資産となってしまいます。

特に都市部では、いつ来てもおかしくないといわれている大震災に備える意味でも、老朽アパートの建替えを検討されているオーナー様が多いことと思います。しかし、建替えにあたって大きなハードルとなるのが、居住者の「立退き」です。今回は、昨今の不動産事情を踏まえながら、立退き問題について考えてみましょう。

契約書通りには進まない立退き

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通常、立退きにあたっては、入居者に対して理由を示すとともに、一定程度の補償を行うことになります。建物の賃貸借契約期間は2年程度ですが、期間が満了した賃借人に立退いてもらおうと思っても、そうはいかない場合が多いからです。

契約書にある契約期間が満了すると、通常は事前に「更新」の合意をして賃貸人が更新料を受領し、また2年程度の契約をします。しかし、賃貸人側が契約を打ち切ろうとしても、賃借人が拒否すれば、期間満了後も契約が続くのが原則となっているのです。

立退き交渉(解約の申し入れ)は、法的には原則として契約期間満了1年前から6カ月前までの間に行わなければなりません。立退きを予定通りに終わらせるためには、余裕をみて1年前から交渉を行うのがベターでしょう。

また、賃貸人側からの賃貸契約解約には「正当事由」が必要と借地借家法で定められています。この場合の正当事由とは、貸主が借主に明け渡しを求めることができる常識的な理由を指します。老朽アパートの場合は、耐震性の不足が正当事由として認められる可能性が高いですが、それも個々のケースで変わってきます。

立退き交渉の一般的な流れ

賃借人に立退いてもらえない場合、ケースによって異なりますが、以下のような手順を踏む必要があります。

1.私信を書く、2.立退き料を交渉する、3.引っ越し先を探す、4.交渉が難航した場合

交渉の肝となる立退き料の基準

FG35(生和一括借上システム)とSEIWA24(生和24時間インフォメーションサービス)

立退き料が必要になった場合、その相場はどのくらいでしょうか?

立退き料の算定の仕方としては右の3つの要素があるといわれています。

特に店舗や事務所などのテナントの場合、(2)の営業権の補償が大きな金額となりますが、一般的な居住用賃貸の場合は、おおよそ家賃の5〜6カ月が目安といわれています。しかし、これもあくまで目安で、立退き料に相場はないというのが実態です。

立退きと引っ越しをセットで考える発想も必要

賃借人の引っ越し先を決めて立退きを促す

立退きをスムーズに進めるためのもう一つのポイントが、入居者に引っ越し先を斡旋することです。昨今の立退きの現場で、交渉の担当者が一番苦労するのが、実はこの点かもしれません。

老朽化したアパートの場合、長年住んでいて家賃も安いままという人が少なくありません。そのため、高齢者や収入の少ない人が今と同じ家賃水準で物件を探しても、見つからないことが多いのです。

建替えが進んで家賃相場が上がっている地域では、転居先としてちょうどいい家賃の物件が減少していることもあります。これでは、立退きを承諾したとしても、近場では引っ越しができません。

こうした場合、エリアを広げるなどして探すしかないため、賃貸人が情報を持っている不動産会社と連携するなどして、転居先を探す努力も必要になってきます。

立退き交渉には経験豊富なパートナーが必要

立退き問題には似たような過去の事例や判例もありますが、個々の事情や解決までのプロセスは千差万別。考慮しなければいけない要素は膨大で、感情や人間関係、家族関係といった数値化になじまない要素も含まれていますので、立退き料の事例一つとっても参考程度にしかなりません。

賃貸人も、交渉を人まかせにせず、借地借家法などの法律知識を踏まえた上で、立退き問題に対処していくべきでしょう。とはいえ、交渉に時間や労力をかけて取り組める立場の人が限られているのも事実です。

もし入居者の立退きでお困りの件がありましたら、生和コーポレーションの経験豊富な営業マンまでご相談ください。実際の現場で数多くの案件を解決してきているプロならではの目線で、お客様の立退き問題などを含め、土地活用のすべてについてご提案をさせていただきます。

生和の営業マンがお手伝いいたします

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田中 利生

齋藤総合法律事務所
弁護士 田中 利生

明渡交渉を
円滑に行うためには

明渡請求は法的請求ですので、基本的には弁護士の職務領域になります。弁護士に依頼するメリットとしては、明渡交渉を自ら行わなくてよいことであります。逆に、弁護士に依頼することで相手方も弁護士に依頼して、却って大事になり、法的手続を要し、立退き料が高額になることがあります。もっとも、テナント側の出方次第では最初から法的手続を覚悟せざるを得ない場合もあります。そこで、事前にご相談され、方針及び役割分担を定めた上で、行うことをお勧めします。

立退きの交渉の実態を
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TEL:03-6403-7800

世界の有名な建築物をご紹介します!

シュローダー邸(オランダ)

シュローダー邸(オランダ)

オランダのユトレヒトにあるこの建物は、オランダ人建築家ヘリット・リートフェルトが未亡人のトゥルース・シュローダー夫人の依頼を受けて設計し、1924年に完成しました。内部に壁がないのは、夫人の希望によるものです。リートフェルトは、モンドリアンなどが提唱したデ・スタイル派のメンバー。これは、調和と統制の理想のあり方を追求する芸術のムーブメントで、直線と原色、そして白と黒というエレメントによる構図が特徴です。シュローダー邸にはデ・スタイルの哲学が息づいており、モダニズムの初期に大きな影響を与えました。フレキシブルな空間、色、そして線が生み出す、理念と遊び心に満ちたこの建築は、2000年に世界遺産に登録されました。

生和コーポレーション編集部

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1971年(昭和46年)4月16日
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