進学・転勤の季節である4月を控えて、2月・3月の賃貸マーケットは一年を通して最も忙しくなります。
アパートをはじめとした賃貸物件は学生・新社会人を中心にした多くの入居者を迎え入れます。
こんなにぎやかな時期にも関わらず、成約にいたらず空室が埋まらなかった賃貸物件は、繁忙期を終えたマーケットでどのようにして空室対策を行えば良いのでしょうか。
今回は、空室対策について原因の分析・家賃設定の検討・付加価値の模索・管理会社の変更など、様々な面から考察します。あきらめなければ空室を埋める対策は必ずあるはずですので、見ていきましょう。
4月になってから空室が目立つ時には
全国の賃貸住宅の空室率は増加傾向にあります。その理由は様々で、エリアによって対処方法も異なってきます。まずは何が空室の理由なのかを客観的に分析してみることが大切です。
4月に空室が目立ってくる大きな理由の一つが借り主の3月末の退去で、募集のタイミングが繁忙期を過ぎてしまうケースです。4月になって空室に苦慮されている方は、これを機にじっくり対策を練ることが必要です。
空室・退去の原因を複数の観点から探る
対策を考えるにあたって、なぜ空室が生じているのか、あるいは発生する可能性が高くなっているのかを把握しましょう。通常、賃貸住宅は下記のような原因で空室が生じるといわれています。
退去してしまう原因
• 入居者が利便性の悪い場所(郊外)から良い場所(中心部)に住み替えている。
• 中心部に新築分譲マンションが大量供給され、賃貸からの脱出組が増えた。
• 老朽化した実家を二世帯住宅に建て替えて親と同居するケースが増大。
• 共用部分の清掃などの管理が行き届いていない。
• 現在の入居者の意見・要望を汲み取った反映ができていない。
• 同条件の物件と比較して家賃が安くない。
埋まらない原因
• 築年数が古い。
• 老朽化した設備の更新を怠っている。
• 不景気によって安賃料の物件への住み替えが進み、価格競争力がなくなった。
• 管理会社が家賃設定や広告戦略でミス。
• 売れ残り分譲マンションを賃貸に回す、事務所ビルを賃貸マンションにする用途変更(コンバージョン)といった、競合物件の増加要因。
• 入居者の募集方法に問題がある。
• 埋まらない原因のリサーチが足りない。
• 同条件の競合物件と比較して特出すべきところがない。
• 物件周囲の環境整備が行われていない。
適切な家賃設定が空室解消への第一歩
賃貸物件の家賃を見直す際に最も重要な作業は事前準備です。3つのステップで準備を進めるとよいでしょう。
第1ステップは「現状を物件ごとに把握する」。管理会社にこの段階からまかせることも可能ですが、できれば物件の現状把握をご自身でした方が、次のステップでの決断がしやすくなります。
家賃に関して上記の「原因」に該当する状態がないかしっかり確認し、最新の状況把握に努めましょう。自力で解決できることは速やかに解決し、他の協力を求めなければいけない案件は関係各位に連絡を入れ解決に向けて動きます。
第2ステップは物件周辺の相場との比較です。ここで注意しなければいけないのは、周辺の相場賃料との差異が大きくないのに、空室を埋めたいばかりに無闇に賃料を下げないことです。
訳ありの人気のない物件だと思われて返って敬遠されてしまい、家賃を下げたことで益々空室が埋まらないという悪循環が始まってしまう可能性があります。
相場の価格帯と差があった場合は第3ステップの、事態を打開するための適切な交渉先、または客付業者を複数見つけ、実際に接触を開始する作業になります。
募集賃料と相場賃料との差異が大きい場合
賃料の値下げも空室対策の大きなポイントとなります。
入居者を惹きつけるための「付加価値」を考える
ペット可、DIY可など個人のライフスタイルに対応
既存の賃貸物件でも、付加価値を高めることによって集客力をアップすることが可能です。たとえば、ペット飼育可にするなどの条件変更が考えられます。ただし、既存入居者との関係があるので、条件変更は慎重に行わなければトラブルにつながります。
あるいは、高齢者対応可にするということも検討に値します。市区町村によっては、入居支援や補償を行っているところもありますので、調べてみるのもよいでしょう。
地域によっては敷金・礼金・更新料の見直しも検討しましょう。保証人がいなくて契約に至らない場合は、保証会社と連携するのも有効です。ただし、保証会社が倒産することもありますので、慎重に選ぶことが必要。優良な管理会社を選んで、滞納保証をしてもらう方法もあります。
入居者によるDIYリフォームを可能にする、女性向けの設備を充実させる、シェアハウス希望者への対応など、物件の付加価値を高める手法はいくつかあります。うまく機能すれば、賃料を下げずに入居率を上げることも可能でしょう。
フリーレント期間を設けてみるのも一つの方法です。フリーレントとは賃貸物件に入居後、契約に基づいて一定の期間、家賃が0円になるシステムです。フリーレントは1~3カ月に設定するところが多く、このような賃貸物件に入居すれば、入居後一定期間は家賃が無料になります。
「無料期間だけ住んで退去されてしまったら」という不安をお持ちなら、「無料期間だけ住んでの退去はできない」という特約をつけると良いでしょう。
賃貸物件の入居には前家賃・敷金・礼金・仲介手数料・保険料などで通常家賃の3~6カ月分の初期費用が必要です。フリーレント期間があれば借主は初期費用をグッと抑えることができるので大きな魅力になるはずです。
また、家具付きの物件にして、主に単身者をターゲットに身軽に引っ越して来られる物件としてアピールする方法も、エリアによっては効果を発揮するでしょう。
間取り・設備に魅力が乏しくなった古い物件なら、思い切ったリノベーションを実行してみるのもおすすめです。
空室対策をする上での注意点
繁忙期を終えて手が空いている時期に積極的に空室対策をすることは大切ですが、その際、あくまでも借主目線で見ること、大家として借主にとって入居の動機付けになるように行うことを忘れてはいけません。
例えば周囲の物件との差別化を意図するあまり、部屋に個性的すぎるリノベーションを行ってしまうと借り手を選んでしまい、自らターゲットを狭めてしまいます。リフォームやリノベーションなどを検討する際は、シンプルに収納を見直すだけでも部屋の魅力はグッと増します。
また、想定している入居者が必要としている設備は何なのかを見極めて、リフォーム・設備見直しをすることも大切です。
単身者向けか、ファミリー向けか、高齢者を歓迎する物件か、その物件のターゲットによって必要な設備は違ってきます。高齢者に歓迎される設備は、若い世代には多くの場合不要です。逆に若い世代が望む設備を同じように希望する高齢者も多くはないでしょう。
そしてインターネットの環境を整えることも、物件の付加価値を高めます。通信関係の契約はどこの代理店を通すかで料金に大きく差が出るケースが多々あります。キャンペーンによるキャッシュバックなどのサービスが多く用意されているのもこの業界の特徴です。インターネットの代理店を行っていないか、まずは管理会社に聞いてみましょう。
その際、満室にするための各種方策は、あくまでも借主目線で行うことを常に念頭においてください。
適切なパートナー選びが賃貸経営には欠かせない
賃料相場の把握や賃料の適切な設定、募集条件の最適化などといった入居募集の根本をなす事柄には、やはりよきアドバイザーが欠かせません。町の仲介業者さんを回って地道に情報を収集し、自分で対策を講じることも可能ではありますが、その内容が間違っていたとしたら空室は解消できません。そんな時には、賃貸経営と管理を行う基盤のしっかりした管理会社へご相談されてもよいかもしれません。
思い切って不動産管理会社を変えてみることは現状を打破するきっかけになるかもしれません。それまでお願いしていた管理会社とは違う視点で対策に取り組んでもらえれば効果が早々に出る可能性もあるでしょう。実際、管理会社を変えたことで空室が減ったというパターンは珍しくはないようです。
管理会社には特徴があり、「広く浅く」業務を行う会社もあれば限定されたエリア内で「狭く深く」食い込んでいる会社もあります。
賃貸経営と管理の基本がしっかりしていれば、どちらのタイプも問題ありませんので、どの会社にお願いするかはオーナー様のご意向次第です。
また、担当者との相性もとても大切です。真剣に向き合ってオーナー様のご意向をヒアリングし、各種案件にスピーディに対応してくれる担当者と巡り会うことが一番です。
当社は40年以上賃貸経営一筋で事業を展開しており、累計着工戸数7万戸を超える実績を誇っております。賃貸経営でお困りの事があれば、お気軽にご相談下さい。
空室・退去の原因をしっかりと把握した上での空室対策を
健全なキャッシュフロー形成のためにも、繁忙期に埋まらなかった空室は繁忙期後にしっかり対策をして埋めてしまいましょう。
まずは空室・退去の原因を複数の観点から探ると、その作業の中で次にやるべきことが見えてくるはずです。
適切な賃料設定やリノベーションを行うなど、空室解消のためには様々な対策方法があります。ペット飼育可能にしてみたり、DIY 可能物件にしてみたりするのも面白いかもしれませんが、ただし、既存の入居者にもしっかり配慮することを忘れないように気を付けましょう。
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※記事中では一般的な事例や試算を取り上げています。個別の案件については、お気軽にお問い合わせください。