評価減の可能性を探る不動産鑑定評価
不動産の「時価」によって大幅な節税も可能
不動産の鑑定評価とは、「不動産(土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利)の経済価値を判定し、その結果を価額に表示すること」です。 不動産の鑑定評価は、国土交通省または都道府県に登録されている不動産鑑定業者のみが行えます。そして、国土交通省に登録されている不動産鑑定士のみが、不動産鑑定業者の業務に関わり、不動産の鑑定評価を行うことができます。
相続税法は相続財産を時価で評価すると定めていますが、相続財産である不動産を不動産鑑定士が鑑定した結果、相続税路線価に基づく価格よりも不動産鑑定評価額が低くなることがあります。この場合、不動産鑑定評価額を採用して相続税申告することにより、大幅に節税できる可能性があります。
不動産鑑定評価は3つの方式を併用
鑑定評価方式の適用にあたっては、原則として原価法、取引事例比較法、収益還元法の3方式を併用しなければなりません。
原価法
価格時点(不動産の価格判定の基準日)における対象不動産の再調達原価を求め、再調達原価について減価修正を行い、対象不動産の資産価格を求める手法。この手法による試算価格を積算価格という。
取引事例比較法
適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて特殊な事情を考慮した「事情補正」および、相場の変動などを考慮した「時点修正」を行う。かつ地域要因の比較と個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量して対象不動産の試算価値を求める手法。特殊な事情の事例でも事情補正することが可能であれば取引事例として選択することができるが、投機的取引など適正さを欠く事例は選択できない。この手法による試算価格を比準価格という。
収益還元法
対象不動産が将来生み出すと期待される純利益の現在価値(将来発生する価値を現時点での価値に直したもの)の総和を求めて、対象不動産の試算価値を求める手法。この手法による試算価格を収益価格という。一期間の純収益を還元利回りで還元するのが直接還元法。連続する複数の期間に発生する純利益および復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計するDCF法もある。
健在なうちにやっておきたい不動産の評価
不動産鑑定評価が相続絡みで有用となるケース
相続に備えて必要となるのが、資産の種類に応じた評価。不動産鑑定評価は以下のような場合に有用です。
- ・関係者間における売買のため
- ・財産評価基本通達による評価が実勢価格よりも高い場合
- ・担保価値の把握のため
- ・賃料訴訟のため
- ・相続税申告における時価算定のため
- ・賃貸等不動産の時価算定のため
- ・相続財産の時価算定のため
- ・立ち退き交渉のため
相続対策の際に必要となるケース
相続対策を検討される際に、ご所有の不動産の処分、あるいは活用などを巡って不動産鑑定士などの専門家の査定や相談が有用となるケースがあります。不動産鑑定士は土地の最有効使用を想定して不動産を鑑定しますが、売却する場合の実勢価格、相続を行う際の相続評価額など、場合に応じてお客様が最適な手段を講じるための提案を行うことができます。
実際に相続評価額が下がった例も
相続税の申告の場合、路線価が基準とされますが、路線価評価で算定した価格が時価を大幅に上回る場合には、その土地の個別性を考慮した不動産鑑定による価格が適用されます。その結果、路線価評価で5,500万円の土地が鑑定評価で評価額が1,600万円、同じく9,000万円が2,000万円に評価引き下げといったケースもありえるのです。
基本となる税務通達に準じて機械的に評価するのではなく、不動産の本来の使われ方の実態や特徴を精査することによって評価額を下げられるケースもあります。とりわけ、ご所有の不動産が特殊である場合などは、土地活用の専門会社などへのご相談が有効といえるでしょう。