都市部の賃貸物件を選ぶ若者たち
若者層を中心とする賃貸志向の広がり
国土交通省が年ごとにテーマを変えて発表する「土地白書」。その平成25年版によると、住居に対する国民の意識調査で「土地・建物は両方所有したい」と持ち家を希望する回答が79.8%と、12年ぶりに8割を切りました。一方、「借家(賃貸住宅)でも構わない」が12.5%と過去最高となり、所有にこだわらない風潮が広がっていることが明らかとなりました。
「土地は預貯金や株式に比べ有利な資産か」の問いには「そう思う」が過去最低の32.9%で「思わない」(37.2%)を4年連続で下回っています。国土交通省は「土地への家計意識が徐々に変化している」と指摘しました。
平成27年11月に内閣府政府広報室が発表した「住生活に関する世論調査」でも同様のデータを見ることができます。この調査では、住宅を所有したいと考える割合が特に低いのは20代・30代という結果でした。
東京圏への回帰を鮮明にする動き
白書は、持ち家率の低下が若者の新たな居住スタイルの模索につながっていることも明らかにしました。その一つが「東京回帰」。「近い将来住みたい街」や「老後に住みたい場所」として、東京圏1都3県を挙げた若者が、中高年世代より高い割合を示したのです。
若者の実際の居住地が、こうした志向を裏付けています。21世紀の若者は、過去の若者たちのように郊外や近隣県に広い間取りを求めて引っ越すのではなく、都心を含めた23区にとどまり続けているのです。さらに、近隣県から東京に流入する傾向も見られます。
少人数の世帯に広いスペースは不要
若い人の多くは都会での生活を継続するために、家の所有にこだわらず賃貸に住み続けるという選択をするようになりました。とりわけ人気が高いのは中心市街地の「駅から歩ける場所」。こうした傾向は大阪や名古屋、札幌、福岡といった政令指定都市でも見られます。当然、家賃が高い上に居住スペースは狭くなりますが、こうした物件には確固たる需要が存在します。未婚・晩婚が進んで、一人暮らしや夫婦のみの世帯が多くなった結果、広い居住スペースを必要としない人たちが増えているのです。
こうした人たちは、地価の高い中心市街地でも、狭い賃貸物件ならば手が届くと考えます。物件を供給する側でもこうした需要に応えるようになり、物件選びの幅が広がっています。
堅実な賃貸経営のためにリサーチは必須
賃貸需要を支えるトレンドと注意点
賃貸需要を変化させている要因の一つは、若者たちの暮らしぶりの変化です。白書は東京・大阪・名古屋の三大都市圏に住む若者の通勤・通学手段を調査していますが、これまでの自動車中心から、鉄道やバスへのシフトが進みつつあります。また、若者の間では自転車利用も一種の流行となっています。
休日の外出先についてみると、居住地周辺の中心商店街や、片道1時間未満のいわゆる「近場」で済ませている人の割合が高くなっています。極めて都市型で、行動範囲がコンパクトな生活スタイルが広がっているのです。
こうした生活スタイルの変化に対応するためには、行政機能の集約や効率的な街づくりが求められます。白書は、医療・福祉や商業施設に公共交通機関で簡単にアクセスできるような利便性を有する「コンパクトシティ」構想を掲げています。
このような状況の変化は、賃貸需要にも波及します。生活の利便性が高い地域が人気を博す一方で、利便性の低い地域の賃貸住宅は厳しい時代を迎える可能性があるといえるでしょう。
賃貸経営には賃貸市場の適切な把握が必要
都心などの中心地への回帰志向が鮮明になっていると述べましたが、賃貸経営に有利と思われる利便性の高い地域でも、たくさんの賃貸住宅が林立するような状況になると競争が激化します。供給が過剰になれば空室が増え、家賃を下げる必要に迫られる可能性も出てきます。
そこで、当該地域にどれだけの賃貸住宅が存在し、平均相場はどれくらいなのかといったデータを踏まえて調査を行う専門知識を持ったパートナーが必要になってきます。当社では45年に渡り土地活用一筋で事業を展開し、地域に根差した堅実な不動産マーケティングに力を発揮しております。賃貸経営に興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。