土地や建物の評価額を圧縮する土地活用とは?
賃貸物件の建設で資産の評価額を下げる
所有している土地を利用していなかったり、空き地のまま放置していたりすると、土地に対する税金の優遇措置は受けられません。したがって相続の際には、土地の路線価に基づいて算出された相続税を支払う必要があります。
そこで、以下の3点を踏まえた節税対策を考えてみましょう。
1.税法上の建物の評価額は、現金などの金融資産よりも低くなる
2.賃貸住宅の場合は土地の評価額も低くなる
3.小規模宅地の特例が受けられる場合がある
1.現金を建物にするだけで相続資産が圧縮できる
現金などの金融資産の相続税評価額は、当然現金の価値そのものです。しかし、その現金を使って建物を建設した場合、建物の相続税評価額は約6割となる場合があります。現金を建物に変えることはできますが、その逆、すなわち建物を等価で換金することは事実上不可能なので評価額が下がるのです。後述するように、建物を現金で購入するか借金で購入するかに関わらず、建築による一定の効果が得られます。
2.賃貸物件として人に貸すとさらに資産評価減になる
相続税法上、賃貸住宅が建つ土地は、「貸家建付地(かしやたてつけち)」として約2割の減額評価がされることになっています。他人の借家権が発生することによって土地所有者の権利が制限されることから、借家権分の価値を減額して評価されるのです。しかし、実際のところ借家権の発生がオーナー様にとって大きな問題となることはあまりありません。むしろ、賃貸収入が得られるという点で価値は上昇しているとも言えます。
3.小規模宅地の特例措置で相続税評価額は最大8割減に
小規模宅地の特例の制度を使うことで土地の相続税評価額を下げることができます(表1)。被相続人や同一生計親族の事業用・居住用かつ一定の面積の土地が対象で、減額される割合は貸付事業用宅地の場合が50%、それ以外は80%の減額となります。ただし土地を複数所有していても適用は一つだけなので、どの土地に適用するかは慎重に見極める必要があります。
専門知識を要する分野は専門家との連携を
相続税対策において留意したいポイント
ここまで土地活用による相続資産の圧縮について述べてきましたが、相続税対策を行う際の全般的な留意点について確認をしておきましょう。
1.「税額圧縮」よりも先に、「納税資金の確保」と「円満分割」を考える
相続税対策というと資産評価額の減額による税額の圧縮に目が向きがちですが、その前に納税をきちんと行うこと、そして円満な遺産分割の方法を考えるべきです。
2.借金でも自己資金でも節税効果は同じ
土地活用(賃貸マンション建設など)のための自己資金が十分にある場合は、相続税対策のためにあえて借金をする必要はありません。借金をした方が節税できると誤解している人もいますが、資産の圧縮効果はあくまで現金を建物に変えることによるものなので、借金の有無は関係ないのです。
3.二次相続まで視野に入れて考える
親世代のどちらかが先に他界して発生するのが一次相続(配偶者と子供が残されるケースが一般的)。配偶者の遺産額が法定相続分(相続財産の2分の1)か、1億6,000万円のどちらか多い額まで相続税はかかりません。そのため、配偶者が財産を多めに相続すれば、相続税を減らすことができます。
しかし、次の二次相続に配偶者税額軽減のような特例はないので、子供の相続税の負担は大きくなります。これを避けるため、一次相続の段階で子供に多めに相続させる方法が有効なケースもあります。
4.相続後も、継続的な節税対策が必要
土地活用による資産の圧縮効果が最も高いのは、建物を建てた時。その後は家賃収入によって相続財産が増えるため、圧縮効果は低くなります。また、建物がある土地の評価額の基準となる路線価の変動により、納税額が上がる可能性もあります。節税の方法は折りにふれ見直しを。賃貸経営の法人化といった手法なども検討の余地があるかもしれません。
専門家のアドバイスを得ることが有効
土地活用や相続税対策には専門的な知識が必要とされるので、専門家に相談することがどうしても必要になってきます。税金の相談は不動産や相続に強い税理士に。土地活用については、不動産の知識を有するファイナンシャル・プランナーに相談するのもいいでしょう。
賃貸経営による土地活用の場合、入居者様の募集や、トラブル対応、建物管理などの業務が発生します。このほか、賃貸経営の法人化など様々な検討事項がありますので、土地活用の専門業者をパートナーとすることも検討されてはいかがでしょうか。