大型の建物を木材で造る海外の試み
カナダで完成した18階建の木造建築
木は軽量で、低層の建物の材料としては十分な強度を持つため、一戸建てや2・3階建の集合住宅などによく使われています。2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されたこともあり、中・大規模の木造建築が注目されるようになりました。日本では法規制などの問題があり、なかなか大規模な建築物の実現には至っていませんが、海外では状況が変わってきているようです。
例えば、木造大規模建築の先進国カナダでは、これまでで最も高い18階建の木造建築が2017年に完成しました。その建物の名前は「ブロックコモンズ」。18階建で高さ53mの高層建築です。エレベーター部分をRC造とした木造の混構造ながら、建物の耐用年数は100年以上を想定しています。
同規模の施設を鉄筋コンクリート造(RC造)で建てる場合に比べて、工期を4カ月短縮したとされています。また、木は二化炭素を吸収して育った建材であり、繰り返し生産できる循環型のエコな資源。この建物では、合計2,233㎥の木材を用いることによって二酸化炭素の排出量をRC造と比べて243万2000トン削減しました。これは、カナダで511台の車が1年間に排出する量に相当します。
コストでも勝負できる2×4(ツーバイフォー)工法
カナダでは、ホテルやマンション、学校、市庁舎など様々な建築物において、木造が選択肢の一つとなっています。その主軸となっているのが2×4工法。部材の規格化を推し進めた2×4にはいくつかの利点がありますが、何と言っても低コストを実現したことが大きいでしょう。
2×4の普及により、欧米の戸建住宅市場では木造軸組工法(在来工法)はほぼ姿を消したと言われています。強度上の問題もないので、カナダでは2009年に6階建まで2×4で建てられるように法改正が行われました。なお積層建築でも建設コストは鉄骨造やRC造より20%低いとされています。
建築基準法改正により広がる木造建築の可能性
一方日本では建材として木はなじみ深い存在ですが、戸建住宅を除くと木造の建物は決して多くはありません。大型の建物を建てる場合、安全性の確保のため、建設地域や用途によって様々な基準に適合させる必要があるからです。
2000年の建築基準法改正によって性能規定化が進み、RC造などと同等の防火性能を有する木造建築物が認められるようになりました。設計上の工夫や技術開発により、木造建築の可能性は大きく広がっています。
日本における木造住宅のメリット
温もりを感じさせる木の質感に魅力を感じるのは国民性と言ってもいいかもしれません。湿度の高い日本では、木が持つ調湿効果はカビやダニの予防にも効果的です。
耐火性の面では、ある程度の太さや厚みがある木材は燃え始めると表面が焦げて炭化層を形成し、火が内部に進行しにくいという性質があります。この状態では、燃えても強度を維持できているのです。また、2×4工法は枠組材などがファイヤーストップ材となって空気の流れを遮断し、燃え広がりを防止するという特徴もあります。
常温での強度が同一の木材と鉄骨を約1,000度で加熱する実験では、5分後でもツーバイフォー構造部材はほとんど変形しませんが、鉄骨部材は変形が始まるという結果※でした。天井や壁の内側に貼られている石こうボードも耐火性を高めています。
※参考:日本ツーバイフォー建築協会HP
木造の集合住宅が持つメリット
限られた大きさを活かしやすい木造建築
狭い土地に集合住宅を建てる際は、空間に無駄が生じない木造が有利です。RC造の場合、一般的には構造の要となる鉄筋の入った太い柱がデッドスペースとなります。
また、RC造の小規模な集合住宅は一戸当たりの建築費が高くなる傾向にあります。一方で、規模が大きくて部屋数が確保できる場合はスケールメリットが出て収益性も高くなるので、RC造を選ぶべきでしょう。
47年以上にわたって賃貸マンションを建設してきた当社では、RC造で培った技術を取り入れた2×4の賃貸住宅にも高品質を追求しています。断熱性・遮音性、強固な骨組み、間取り変更を可能にする新工法の採用などで、価値ある賃貸住宅を実現。豊富なラインナップの中から、オーナー様のニーズに合わせた選択が可能です。