賃貸経営にとってメリットが大きい青色申告
家賃収入がある場合は確定申告が必要
賃貸経営などによる不動産所得のある人の大半は確定申告を行わなければなりません。家賃のほか、管理費(共益費)・礼金・更新料と、敷金・保証金のうち返還しなくともよいことが確定している金額も収入となり、そこから必要経費を差し引いた分が課税対象となります。
1月1日から12月31日までの不動産収入が確定申告の対象となり、申告期間は2月16日〜3月15日の1カ月間です(曜日によって変わる年もあります)。
節税するなら「白色」より「青色」
青色申告では、その名の通り青色の申告書を使用します。取引を記載した帳簿が必要になるため煩雑なイメージがありますが、青色申告にするだけで利益から10万円を差し引くことができ、その分納税額を減らすことができます(青色申告特別控除)。また、赤字を3年間繰り越せるなどのメリットもあります。
なお、白色申告から青色申告にいきなり切り替えることはできないので注意。適用を受けようとする年の3月15日までに、管轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。青色に切り替えるなら、すぐに手続きの準備をしましょう。(図1参照)
「事業的規模」なら青色申告のメリットが大
賃貸経営が「事業的規模」の場合は、青色申告がより有利になります。事業的規模の基準は、戸建てで5棟以上、アパートで10室以上、駐車場で50台以上。この基準を満たす場合は、青色申告を行うことによって65万円が青色申告特別控除として認められます。(図2参照)
事業的規模の場合、青色申告によって親族に支払う事業専従者給与の全額を経費とすることもできます。事業専従者への給与は経費として認めないのが原則ですが、事業的規模の賃貸経営ではすべて認められるのです。(図2参照)
※白色申告では原則1人50万円、事業主の配偶者は86万円までという制限あり
経費の記録の管理と保存が必要な青色申告
確定申告を行うためには、収入と支出についての記録が必要です。家賃収入や経費を現金でやり取りした場合は、領収書などの書類を保存。領収書のない交通費などは、支払い記録を作成します。 家賃の受け取りや各種支払いには、専用の口座を設けておくと管理がしやすいでしょう。
事業的規模で賃貸経営を行っている人が青色申告を行うには、より手間のかかる複式簿記の手法で記載した帳簿が必要。この帳簿は7年間の保管義務があります。また、確定申告時には貸借対照表と損益計算書を添付しなければなりません。
複数の所得があるなら損益通算の検討を
給与所得と家賃収入がある場合などは、損益通算を検討しましょう。損益通算とは、ある所得が赤字の場合に他の所得の黒字と合算して所得を求めること。例えば賃貸経営の経費計上を大きくして赤字とし、給与所得と相殺して課税所得を減らすことができるのです。
ただし、収入の種類によっては損益通算の対象から外れることがあります。また、すべての損失が対象となるわけでもありませんので、税理士などの専門家の判断を仰いだ方がよいでしょう。
法人化による課税所得の圧縮効果
賃貸経営法人化のメリットとは?
賃貸経営などがある程度の規模になると、法人化による節税のメリットが大きくなります。
法人の方が税金は安く、課税所得金額が700万円を超えるとその差は拡大します。法人化の手間を考慮しても、課税所得金額が700万円超なら法人化を決断しても良いでしょう。
■課税所得金額(家賃収入から必要経費を差し引いたもの)に対する税金の比較
- 個人(所得税+住民税)
-
900万円以下の場合33%
900万円超の場合43%
- 法人(法人税+法人事業税など)
-
800万円までの場合26~28%
800万円超の場合約33%
課税所得金額を圧縮できる法人
法人化すれば、人件費を経費とすることができます。個人でも青色申告すれば、事業専従者給与として家族に支払った給料を経費にできますが、家族が他の仕事をしていると事業専従者とは認められません。一方、法人ではこうした制約はありません。
このほかにも欠損金の繰越が9年間可能など、法人には様々なメリットがあります。また、相続税対策としても有効です。(図3参照)
法人化に伴うコストなどは専門家と相談して確認を
法人の設立には登録免許税や司法書士への報酬などの費用がかかります。社会保険料は強制加入になり、健康保険料や厚生年金保険料は労使折半で合計28%以上かかります。
こうした点を考慮しても、節税対策として法人化が有効なのは事実です。白色申告から青色申告、青色申告から法人化というステップをお考えの方は、来期からできるよう、早めに専門家へのご相談をお勧めいたします。