国が主導する、都市の「立地適正化計画」
今求められているのは人口減少に備えた街づくり
今、多くの自治体で都市再生への取り組みが進められています。その一つが「立地適正化計画」。2014年8月に施行された「改正都市再生特別措置法」に基づくもので、今後の地価や人口動態を左右する要素が含まれています。
この背景にあるのが、全国的な人口減少(図1参照)。特に郊外や地方都市では、少子高齢化に対応するための街づくりが急務となっています。
市町村の税収は減る傾向にあるのに福祉予算は増大しており、インフラ設備更新の予算の捻出は困難です。人口密度が低下した地域では、わずかな世帯のためにインフラを維持していくことは難しくなってくるでしょう。
住宅を集中させ、都市の機能も集約
こうした事態に備え、住まいや公共施設、医療施設、商業施設などを狭い範囲に集めた「コンパクトな街づくり」を行い、市街地の空洞化を防ごうというのが立地適正化計画です。これによって、生活サービスや医療などの都市機能を維持することも可能になります。
立地適正化計画の対象となるのは原則として都市計画区域で、以下のものが定められます。
居住誘導区域
居住を誘導すべき区域
- 居住誘導区域外からの移転を支援する措置などを実施。
都市機能誘導区域
医療施設、福祉施設、商業施設などの都市機能増進施設の立地を誘導すべき区域
- 都市機能増進施設の立地を図るための事業や支援措置などを実施。
※都市機能誘導区域は、居住誘導区域内に定められる。
居住誘導区域とそれ以外の区域を線引き
現在の市街地をさらに線引きし、住宅を集中させる「居住誘導区域」を設定。その中に公共施設や学校、病院などを集約させる「都市機能誘導区域」を設定するのが立地適正化計画の骨子です。主要な駅や既存の市街地などを核にして都市機能を集め、その周辺に居住エリアを配置するというイメージです。(図2参照)
居住誘導区域は一つの市町村内に複数設定される場合もあり、それぞれの居住誘導区域内に都市機能誘導区域が設定されることになります。誘導区域外では、一定規模以上の住宅開発などを行う場合、原則として自治体に届け出る義務があります。
居住誘導区域の外側は住宅の集積を抑制
居住誘導区域の外側(市街化区域内、非線引き区域の場合は都市計画区域内)には居住調整地域を配置することができます。居住調整地域の設定は任意ですが、市街化調整区域と同様にみなすことで、居住の集積や新たな宅地化が起こらないようにし、インフラ投資も抑制しようという狙いがあります。
誘導区域かどうかが、土地の評価基準の一つに
人口が増えると予測される地域でも、土砂災害の危険性が高いところなどは居住誘導区域としないような措置が取られますし、「跡地等管理区域」「駐車場配置適正化区域」などが設定される場合もあります。
跡地等管理区域
空き地における雑草の繁茂等を防止し、良好な生活環境等を維持するため、跡地等の適正な管理を必要と定められた区域。居住誘導区域に定めることはできない
駐車場配置適正化区域(都市機能誘導区域内)
歩行者の移動上の利便性及び安全性向上のため、駐車場の配置の適正化を図るべき区域
誘導区域から外れても住宅の建替えなどは可能
立地適正化計画によって居住誘導区域に指定されなかったエリアでは、住宅開発に制限があります。具体的には、3戸以上の住宅建設や1,000㎡以上の宅地開発など、一定規模以上の行為は届け出対象となります。
居住誘導区域外でも個人宅の建替えや、自分の土地での自宅新築が制限されるわけではありません。したがって用途地域の指定も変わりませんが、今後見直される可能性はあるでしょう。
自治体の立地適正化計画をチェックしましょう
この1年ほどで、各地の立地適正化計画の作成は大きく進みました。2017年12月31日時点で、立地適正化計画に関する具体的な取り組みを行っている市町は384に上ります。(図3参照)
計画中の市区町村は国土交通省のホームページで確認できますし、誘導区域は各自治体のホームページでチェックできます。これから住宅や土地を購入する際は、立地適正化計画の内容を確認しましょう。
各都市でこの計画が実現すれば、人口の集中するエリアと減少するエリアの二極化が進むと考えられ、これは当然、地価や賃貸経営に影響を及ぼします。土地の収益性が期待できない場合は、資産の組み換えの検討も必要でしょう。
所有している土地が都市機能誘導区域から外れている場合でも、居住区域などに定められていれば地価や収益性が上がる可能性はあります。このように土地の評価は単純ではありませんので、専門家のアドバイスが必要と言えます。賃貸経営の将来性も含めて検討させていただきますので、ぜひ当社にご相談ください。