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- ブームが過ぎてもマンションへの転用が可能なのはどれ?
ホテル・簡易宿所・民泊の違いは?それぞれのメリット・デメリット
今さら聞けない!? 旅館業法、民泊新法、民泊特区など、関連キーワードを解説
著者:生和コーポレーション編集部
当記事は、土地活用サポートで50年以上の歴史をもつ生和コーポレーション編集部が、不動産オーナーが知っておきたい旅館業法、民泊新法、民泊特区について解説します。とりわけ話題の民泊を中 心に現状を把握しておきましょう。
部屋バル(株式会社スリーアローズ)代表取締役、日本初の民泊専門不動産仲介会社。
民泊新法の施行で注目される住宅宿泊事業
日本を訪れる外国人観光客数が増え続けており、国が掲げる「2020年までに訪日外国人観光客4,000万人」の達成が見込まれています。これに伴って注目されているのが、インバウンド向けの宿泊施設。不動産のオーナー様の中でも事業の選択肢の一つとして、宿泊施設や民泊を考える人も多いでしょう。
しかし所有している物件で民泊を活用する場合は、民泊の需要のあるエリアや、法律(条令)で運用 が難しいエリアなどもあり、収益性に関する判断も重要になってきます。
民泊新法が施行され 事業が本格化
2018年6月15日、「民泊新法(住宅宿泊事業法)」が施行されました。一般の住宅に宿泊できる民泊は、訪日観光客増加に伴う宿泊施設不足の解消に寄与すると期待されています。
民泊新法施行の3カ月前から住宅宿泊事業の受付けが開始されました。民泊サイトに約6万件が掲載されていましたが、2018年6月時点の届出件数は約3000件。営業日数が180日までとされたことや、自治体による営業地域の制限などが届出件数の低下につながったようです。
その後認知度が高まって届出件数は増え、2019年2月15日時点で13,660件(うち事業廃止474件)に。民泊の成功例も多数報告されるようになり、宿泊日数の規定がない「特区民泊」も注目されています。
旅館業法における民泊事業の位置づけ
旅館業法では、旅館業は「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」に分かれています。
- 旅館・ホテル営業
- 施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの
- 簡易宿所営業
- 宿泊する塲所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のもの
- 下宿営業
- 施設を設け、1ヶ月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業
一軒家やマンション、オフィスビルなどを活用する民泊事業は、簡易宿所営業か旅館・ホテル営業のどちらかで許可を取得する必要があります。旅館・ホテル営業は玄関帳場(フロント)の設置義務があるため、簡易宿所営業の許可を取得するのが一般的です(図1参照)。旅館・ホテル営業の基準に達しない4部屋までの施設や2段ベッドを設置している施設は簡易宿所に該当し、民宿やペンション、スポーツ合宿施設、カプセルホテルなども含まれます。簡易宿所営業の場合でも都道府県知事(政令指定都市、中核市等保健所政令市では市長、特別区では区長)の許可が必要です。
◼︎図1 簡易宿所営業と旅館・ホテル営業の構造設備基準
2016年4月に簡易宿所の客室に必要な延床面積(33m2以上)の基準が改正されたため、許可の取得が容易になった。
簡易宿所営業 | 旅館・ホテル営業 | |
---|---|---|
客室床面積 延床面積 |
33m²以上 (宿泊者の数を10人未満とする 場合には、3.3m²に当該宿泊者の 数を乗じて得た面積以上) |
7m²以上/室 (寝台がある場合は9m²以上/室) |
玄関帳場 (フロント) |
規制なし (国の法令上の規制はないが、 条例で基準化している ケースがある) |
宿泊しようとする者との 面接に適する 玄関帳場(フロント)または 玄関帳場代替設備を有すること |
入浴設備 | 近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる 場合を除き、適当な規模の入浴設備を有すること |
|
換気等 | 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること | |
その他 | 都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあっては、 市又は特別区)が定める構造設備の基準に適合すること |
特区民泊や民泊新法で運用することも可能
簡易宿所営業の許可を取得する以外に、民泊新法(住宅宿泊事業法)や特区民泊として運用する方法もあります。民泊新法は簡易宿所営業に比べて制限や条件が緩やかですが、年間180日以内の宿泊日数が上限とされ、部屋面積に応じた宿泊人数の制限や、外国語による施設案内・交通案内などのルールが定められています(図2参照)。
◼︎図2 簡易宿所営業と民泊のメリット・デメリット
どの営業形態にメリットが多いかは一概に言えないが、許認可の難易度は住宅宿泊事業法(民泊)、特区民泊、簡易宿泊営業の順に高くなる。 ※各規定は自治体の判断や条例で一部変わる場合がある
簡易宿所(旅館業法) | 民泊(民泊新法) | 特区民泊 | |
---|---|---|---|
許認可 | 許可 | 認定 | 届出 |
営業日数 | 制限なし | 年間 180日以内 | 制限なし |
宿泊日数 | 制限なし | 制限なし | 2泊 3日以上 |
玄関帳場 (フロント)の 設置義務 |
なし (一部条例による 設置義務あり) |
なし | なし |
客室面積 | 3.3m²/人 (宿泊者が 10人未満の場合) |
3.3m²/人 | 25m²以上 |
安全確保のための 非常用照明・ 消防設備の 措置義務 |
必須 | 家主居住型で 民泊部分が 小さい場合は緩和 |
必須 |
不在時の 管理業者への 委託義務 |
なし | あり | なし |
国家戦略特別区域で自治体が条例を定めた地域では、旅館業法の規定が適用されない特区民泊を行うことができます。年間宿泊日数の制限がないのが民泊との最大の違いですが、以下の条件が求められるというデメリットもあります。
- 特区民泊の条件
-
- 2泊3日以上の滞在が条件
- 台所や浴室などの洗面設備が必要
- 物件所有者と共同使用(ホームステイ形式)が認められない
- 床面積が25㎡以上必要
立地や建物規模によって選択する宿泊ビジネス
簡易宿所と特区民泊のメリット・デメリット
特区民泊は2泊3日以上の宿泊が条件となっているため、1泊だけの利用ができません。また、特区民泊は特区(東京圏は東京都大田区、神奈川県、千葉県成田市、千葉県千葉市)以外の地域では活用できません。一方、簡易宿所営業の場合、用途地域さえクリアしていればどこでも許可を受けられます。
とはいえ、簡易宿所営業の許可取得は特区民泊に比べて難易度が高いのも事実。特区内に施設がある場合は、許認可の手間やコストも考慮した上で、どちらにするかを判断する必要があります(図2参照)。
この1年で特区民泊が4倍(約1500室)に増えたのが、全域が特区の大阪市。全国の特区民泊の約9割が大阪に集中しています。そんな大阪では特区民泊専用のマンションの建設も行われており、ムスリムに対応した祈祷室まで備えているところもあるそうです。
規模や立地で考える賃貸経営の形態
賃貸経営を宿泊施設まで広げて考えた場合、ホテルや民泊のほか、マンスリーマンションという形態も選択肢に入ってきます。都市部主要駅の近くは利便性が求められるホテルの適地と言えますし、交通の便が良くなくても観光地が近ければ簡易宿所や民泊がビジネスとして成立する確率が高くなるでしょう。
ホテルと賃貸マンション両方のメリットを併せもつマンスリーマンションは長期滞在が前提のため、利便性よりも設備や周辺環境が重視される傾向があります。マンスリーと民泊のハイブリッド運営という成功例も報告されています。
マンションへの転用が可能な簡易宿所
コロナウイルスのパンデミックにより旅行者数が激減し、多くの民泊物件でマンションなど賃貸物件に転用される事例が多発しました。コロナ禍が落ち着いた現在は、インバウンド向けの宿泊施設の需要が戻ってきましたが、市場が変化した場合にマンションへの転用が可能な簡易宿所を選択するのがベターかもしれません。
最近の例では、民泊としても利用しやすいようにあらかじめ設計された賃貸マンションも登場しています。
◼︎図3 賃貸経営の形態による特性の違い
民泊は個人によるオペレーションからスタートするケースが多いが、トラブルの対応一つをとっても未知の部分があり、専門会社による運営の割合が増加すると思われる。
賃貸マンション | マンスリー マンション |
ホテル | 民泊・簡易宿所 | |
---|---|---|---|---|
規模 | 50坪〜 | 50坪〜 | 70室〜 (90坪〜) |
10室〜 (40坪〜) |
適する場所 | 駅から徒歩 15分以内 |
駅から徒歩 15分以内 |
駅から徒歩 3分以内 |
観光地内、 観光地の近く |
収益性 | △ | △ | ◎ | 〇 |
経営リスク | ◎ |
△
(事業の継続性の
リスク) |
〇
(20年は大丈夫だが
撤退される リスクあり) |
△
(オペレーションが
必要) |
自ら事業者になる以外に民泊事業者を活用する選択肢も
ご所有の物件や、新築物件で民泊を活用する場合は、ご自身が事業者となり、運用代行会社を利用し手間をかけずに運用していくケースと、民泊事業者と賃貸借契約を結ぶケースの、2つの選択肢があります。
ご自身が事業者となる場合は家具・家電などのスタートアップ費用がかかり、8月の繁忙期・2月の閑散期など、月により売上の波がありますが、しっかり稼働すれば最大の収益を見込めます。民泊事業者を活用する場合はスタートアップ費用がかからず、年間を通して、一般賃貸の相場より高い水準で安定した賃料(平均相場120%)が得られます。
どちらを選択するかは所有者様の方針次第ですが、民泊に需要のあるエリア、あまりないエリア、法律(条例)上で運用が難しいエリアと様々ありますので、民泊を活用できるのか、収益性がどうなのか、ご相談ください。
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