大都市圏や人気観光地で路線価が上昇
過去4年間で最も高い上昇率
国税庁は2019年7月1日、全国の路線価(2019年1月1日現在)を発表しました。全国約32万地点の標準宅地は2018年比で1.3%のプラス。路線価の上昇は4年連続で、上昇率はこの4年で最も高くなっています(2018年は前年比0.7%)。(図1参照)
2008年のリーマン・ショック以降マイナスに転じたが、この4年間はプラスで上昇率も高くなっている。
路線価上昇の要因として考えられるのが、地方にも波及しつつある訪日客の増加や再開発など。都道府県別では19都道府県で上昇しています(2018年は18都道府県で上昇)。上昇率トップは沖縄県で8.3%。続いて東京都4.9%、宮城県4.4%。以下、福岡県・京都府・北海道と続きます。昨年に引き続き沖縄の上昇率が最も高かったのは、観光関連の需要が旺盛なのが要因と考えられます。
大都市圏や観光地とそれ以外の二極化が進行
東京以外の首都圏でも上昇率が高い傾向は継続中で、千葉県と埼玉県は1.0%、神奈川県は0.9%と、いずれも6年連続で上昇しています。
景気回復やインバウンドの増加によるホテル需要の高まりなどで、東京の路線価は上昇しました。大阪の上昇要因は「おおさか東線」の全線開業。昨年11月に2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の開催が決まった湾岸部も注目されています。名古屋では商業施設や大型マンションの建設が路線価を押し上げました。(図2参照)
路線価のトップは銀座の「鳩居堂前」。3年連続で過去最高を更新しており、一昨年からバブル期を超えている。
一方、下落したのは27県。大都市圏や集客力のある観光地と、それ以外の地域の二極化傾向は続いています。
路線価の上昇は融資条件や相続税に影響
路線価には今回発表された「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2つがあります。単に路線価という場合は前者を指し、相続税などの算定基準となります。固定資産税路線価が発表されるのは3年に1度で、前回の発表は2018年でした。
路線価の上昇は、土地の担保力のアップにつながります。担保評価を重視する金融機関から、融資額の増大や融資条件の改善といった有利な条件を引き出すことも期待できるでしょう。
一方で、路線価の上昇は相続税評価額がアップするという側面もあります。土地にかかる固定資産税評価額も上昇しますので、節税対策を講じる必要も出てくるでしょう。
- 相続税路線価と固定資産税路線価
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相続税路線価
相続税や贈与税の算定基準となる土地評価額。主な道路に面した標準的な宅地の1㎡あたりの価格のことで、毎年1月1日時点で評価したものを国税庁が発表する。国土交通省が毎年3月に出す公示価格の8割程度を目安に、売買実例や不動産鑑定士の意見なども参考に算出している。全国地価マップ(http://www.chikamap.jp/)で調べるのが簡単で効率的。
固定資産税路線価
固定資産税や都市計画税・不動産取得税・登録免許税の基となるもので3年に1回、1月1日を基準日として計算される。公示価格の約7割が、固定資産税評価額になる。土地の価格が下落した場合は、見直しの年を待たずに下落修正が行われることもある。各市区町村のHPなどで公開されている。
インバウンドが牽引する路線価
外国人に人気の地域は路線価が上昇傾向
高まるマンション需要や大型の再開発などと共に、路線価上昇の要因となっているのが、訪日観光客の増加です。地方でも外国人に人気のリゾート地などでは、外国資本によるホテル建設などもあり、路線価が急上昇している例があります。
オリンピックが開催される2020年までに訪日観光客を年間4,000万人にするという目標を国が掲げていますが、これは達成されると予想されています。(図3参照)
2018年、外国人旅行者数はついに3,000万人を突破した(前年比8.7%増)。2012年に比べると約3.7倍となっている。
過去、オリンピックを開催した国はいずれも観光客が増えています。東京オリンピックが開催される2020年も相当な数の外国人が訪れ、その後も外国人観光客が多い状況は変わらないでしょう。それに向け、インバウンド向けの宿泊施設として民泊などが増えているのはご存知のとおりです。
オリンピック後も上昇が期待できる路線価
では、オリンピック後の路線価はどうなるのでしょうか? 2011年にいったん落ち込んだ訪日観光客数は2012年から右肩上がりで、リピーター数も1,700万人を突破しています。日本は観光地としてのイメージが定着しており、今後も多くの外国人が訪れると予測されます。訪日回数が増えるほど地方を訪れる割合が高いというデータもあり、大都市圏やメジャーな観光地以外の地域が活性化して路線価が上がることも期待できます。
路線価の上昇が続く都市部などでは、土地活用がビジネスとして成立する可能性が高くなります。当社は都市部を中心に、賃貸マンションだけでなく、ホテルや民泊、テナントビルなどのビジネスプランをご提案することが可能です。税金面や融資に関するサポートも行っておりますので、ぜひご相談ください。
リピーター数は近年大きく増加。リピート回数が多い観光客ほど、地方を訪れる割合が高くなるという傾向も。