PROJECT STORY

プロジェクト・ストーリー 2023 年度グッドデザイン賞受賞

「アールコート早稲田」誕生までの物語

GOOD DESIGNAWARD 2013 神田川沿に建築された【アールコート早稲田】は、どの住戸も都会に居ながらにして自然の光や風が感じられるスタイリッシュな集合住宅。2013年グッドデザイン賞を受賞したこの建物の完成までにはどのようなストーリーがあったのか。生和コーポレーションの新たな可能性を切り拓くために、営業・設計・工事、それぞれの部門が取り組んだ挑戦の軌跡を紹介します。

登場人物

Yuunosuke 営業 調布支店営業部(当時) PROFILE
平成20年度新卒入社。調布支店で建築提案営業を経験。がむしゃらに行動し、お客様の信頼を勝ち得て、受注に結びつけていく営業スタイルを得意とする。
現在は課を束ねる課長に昇進し、建築営業の知識はもとよりお客様との向き合い方など、姿勢面に渡って強い営業マンを育成指導中である。
Takuya 設計 調布支店設計アドバイザー(当時) PROFILE
平成17年度入社。学校卒業後は建築デザイン会社に就職。基本設計図から具体的なデザイン図に落とすパートを担当。
自身のキャリアアップを図る上で、設計図を自ら作成したいという想いから生和コーポレーションに入社する。当初はCAD担当だったがその仕事の丁寧さを見込まれ建築アドバイザーとして基本設計の要を担う。
Koujirou 工事 工事部 PROFILE
平成12年度新卒入社。建築・工学系の大学を卒業後生和コーポレーションに入社。以来、工事部で数々の建築現場で施工管理業務に従事する。今回のプロジェクトでは初のグッドデザイン賞獲得を目指した重要案件の進捗管理の責任者として担当することになり、工事部の中での存在感は高い。後輩、新人に厳しいながらも温かく仕事を教え、新しい仲間に仕事の喜びを知ってもらいたいと接している。
Kenji 不動産 不動産部 PROFILE
平成18年新卒入社。生和コーポレーションでは幅広く業務を知るという意図から営業部などでの業務経験もある。 現在は不動産部の主任としてアールコート早稲田の物件担当として従事する。日々の仕事は入居付けからクレーム対応など多岐に渡る不動産管理を行っている。

PROJECT STORY START

PROJECTSTORY 01>営業編 担当者として信頼獲得に尽力。誠意ある対応こそが数多い競合に打ち勝つファクター。

落ち込んでいたときに舞い込んで来た紹介。

「あの時の私は、入社以来最も落ち込んでいました」と、Yuunosukeは振り返る。
2010年の冬、当時入社3年目のYuunosukeは、土地活用の提案をしても途中で話が立ち消えになってしまったり、他社に契約を持っていかれてしまったりと、思うような成果が上げられず、焦燥感ばかりが募る毎日。
落ち込む気持ちを振り払うため「どこかに良い提案ができる土地はないか」と足を棒にしながら、担当エリアである新宿区の営業活動をしていたとき、その話は舞い込んできた。挨拶に訪問した既存顧客から「早稲田の○○さんのところで建替えを考えているらしいよ」と一人の女性を紹介されたのだ。この女性が、後に【アールコート早稲田】のオーナーさまとなるTさまだった。
Tさまはご両親が亡くなられて相続した土地の有効利用を

検討していた。早速、アポイントを取って訪問した、西早稲田にあるその土地は、駐車場と大きな庭のある二階建て木造の空き家から構成される広い敷地。北側は神田川を臨み、東側には椿山という、便利な立地ながら自然にも恵まれた絶好のロケーション。Yuunosukeはこの土地を一目見た瞬間「ここになら素晴らしいマンションが建つ。現在の駐車場よりも有効に土地活用していただくためにも、なんとしてもこの話を成立させたい」と強く誓った。
「初対面のときのTさまは、私という人物が、お母さまから譲り受ける大切な土地を任せるに値するのかを見極めようとしていると感じました。最初の提案時間は20分程度でしたが、このチャンスを逃してはならないと、必死に話したことは忘れられません」。

契約の決め手は顧客との信頼関係。

その後、上司である調布支店長も交えて、提案は続けていたが、マンションの立地に絶好のロケーションであったその土地を、同業他社も放っておく訳は無かった。当時のTさまは、地元工務店から大手ディベロッパーまで多くの企業から提案を受けられていたという。
それを聞いたYuunosukeは大きな不安に襲われた。「他社の営業は、若造である自分よりも経験も知識も上に違いない。収支やコスト面でウチよりも良い数字を出してくる会社もあるかもしれない。また他社に契約を持っていかれてしまうのか…」不安に揺れるYuunosukeを叱咤激励したのは、調布支店長だった。
「入社3年目の君に経験も知識も足りないのは当たり前。提案の内容については私に任せて、君は担当者として、Tさまの信頼を得ることに力を尽くしなさい」。
その一言で、迷いが吹っ切れたYuunosukeは、知識や経験が浅い分、誠実な対応に注力した。決して知ったかぶりやその場しのぎの対応はしない。Tさまの疑問や要望は細かくメモを取り、確認を取ってから迅速に確実な回答をする。近くに来た際は必ず顔を出す。時には、Tさまご夫妻が組んでいるビートルズのカバーバンドのライブに調布支店長と足を運んだりもした。

これらの地道な積み重ねにより、Tさまとの信頼関係を築いたYuunosukeは、他社との競合に打ち勝ち、契約を果たすことができた。
「もちろん、契約が取れたのは私だけの力ではありません。実現性の高い企画と予算の算出に協力してくれた上司と設計の協力があってこそ。だからこそ、契約成立のお祝いで上司や仲間たちと飲んだお酒の美味しさは格別でした」。

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PROJECT STORY 02 設計編へ

PROJECTSTORY 02>設計編 オーナーさまの想いと自身の会社への感謝の気持ちを込めて何十枚も書き直した設計図。

会社の新たな可能性を切り拓くマンションに。

立地が良い優良顧客ということもあり、週に一度の打ち合わせは、Yuunosukeと調布支店長、統括本部長、常務、設計幹部と調布支店の設計アドバイザーTakuyaと、会社一丸となって対応していた。
その時点のTさまは「競合の多い地域だけに、それに負けないマンションを建てたい」というイメージは持ちつつも、具体的なビジョンが定まっていなかった。そこでTakuyaは、Tさまのイマジネーションを刺激することに注力した。
「通常はオーナーさまの意見を伺ってから図面を引くのですが、この案件ではあえて逆にしました。先に図面と具体的なビジュアルを提案し、そこで出たTさまの要望を次回形にして…というのを繰り返しました」。
そのため、打ち合わせをする毎にTさまからの要望は二

転三転した。元々建設予定だった敷地は、駐車場と空き家になっていた庭付きの家だったが、打ち合わせをしていくうちに、隣地にあり建て替えを予定していたTさまのご自宅も敷地に含めることに。さらには、マンションの上層階に、Tさまの長女さまのご自宅が入ることになり、それなら次女さまのご自宅も…と、要望が変化する毎に、当然設計も変わる。Takuyaが書き直した設計は何十枚にも及んだ。
「打合せごとに、プランをこんなに書き直した案件も珍しいですね」とTakuyaは苦笑しながら振り返る。
ただ、Takuyaの中では「この物件は、今まで生和コーポレーションにはなかった、新たな可能性を切り開くマンションになる」という予感が、図面を書き直す毎に確信へと変わっていった。

「会社に恩返ししたい」という想い。

Takuyaの予感は的中した。【アールコート早稲田】を生和コーポレーションのモデル物件として、社を挙げてグッドデザイン賞獲得を狙える物件とすることになったのだ。そのため、外観・内観のデザインは、外部の著名デザイン会社にも参画してもらう事になった。
とはいえ、Takuyaの仕事が減った訳ではない。グッドデザイン賞は、見た目の美しさだけでなく、機能性や使いやすさ、品質などが総合的に評価される。むしろ、ベースとなる設計を担当するTakuyaの責任は、重大になったといえる。
機能面でもTさまの要望はさまざまなところに反映された。例えば、賃貸物件には珍しいリビング壁面の収納の設置は、お嬢さまたちの一人暮らしでの経験を元に出た意見だ。他にも、キッチンの構造についてなど、主婦でもあるTさまからの意見は、Takuyaにとって良い勉強にもなったという。
【アールコート早稲田】を担当するにあたって、常にTakuyaの胸にあったのは「この物件を成功させて、会社に恩返しをしたい」という想いだ。
生和コーポレーションに入社前、Takuyaは大手ディベロッパーの分譲マンションのデザイン監修をする会社に所属していた。そこでは、図面からデザインを作成するため、図面作成にも携わりたかった。「見た目だけではなく、設計に携わりたい」と思い、生和コーポレーションにCADオペレーターの見習い社員として入社。あれから5年目。今回の案件

は、そこから自分の仕事を評価して建築アドバイザーに抜擢してくれた会社のために、力を発揮する絶好の機会でもあったのだ。
「【アールコート早稲田】が無事にグッドデザイン賞を受賞して、確かに嬉しかったし、自分の成長も実感できました。でも、それ以上に、この機会を与えてくれた会社と、設計図を建物としてしっかり実現してくれた工事部への感謝の気持ちの方が強かったですね」。

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PROJECT STORY 03 工事編へ

PROJECTSTORY 03>工事編 「いい物件にしよう」プレッシャーに打ち勝ちながらランドマークに相応しい建物を実現。

プレッシャーとの戦い。

「本当に自分に務まるのだろうか」正直なところ、【アールコート早稲田】の担当を命じられた工事部Koujirouは、最初戸惑ったという。入社して15年目、ここまで規模の大きな物件を担当することは初めてだったからだ。しかも社を挙げてグッドデザイン賞の受賞の獲得を狙う物件。デザイン設計が優れている分、受賞できなければ、それは工事部の責任となってしまう。
現場監督は文字通り現場を監督する仕事だ。その範囲は、設計部から渡される分厚い設計図書を基にした工程管理にはじまり、人員・資材の手配、材料の指定、現場用の図面の作成、職人への指示とクオリティチェック、さらには予算の管理などと多岐にわたる。
さらには、設計からの指定があっても、実際に作業ができない事態がしばしば起こる。例えば設計から「ここに

棚を取り付ける」と指定されても、鉄骨があって取り付けるための穴が空けられないことや、建物の構造上良くない場合や、入居者の安全性に関わる場合もある。その時に設計と相談し、調整をするのも現場監督の大事な役目だ。Koujirouの両肩にのしかかるプレッシャーは大きかった。
しかし、着工前に現場を視察して、その迷いは払拭された。早稲田という歴史ある文教地区であり都心への抜群のアクセスという立地。加えて東側に望む桜の名所でもある椿山荘の庭園、北側に流れる神田川の川沿いには桜並木。目を閉じると、春になって周辺に桜が咲き、住民の目を楽しませる未来が見えた。「きっとこれは 良い物件になる。いや、絶対に良い物件にしよう」。Koujirouは腹を決めた。

感動と少しの不安がよぎった竣工の瞬間。

【アールコート早稲田】のデザインは、外部の著名デザイン会社も入れて行ったものだ。そのため、【アールコート早稲田】で使用する外壁材やタイルなどの素材は、生和コーポレーションでは初めて使用するものが多かったという。
「ただ提案された素材を使うのではなく、『この素材ならどの下地剤をどのように使うか』までを考えて指示するのが現場監督の仕事。この案件では、初めて使う素材も多かったので、情報収集が大変でした。もちろん現場監督として、素材の相性や予算の問題から『ここにこの素材は適さない』と判断した時は、はっきり意見しました。その時は、デザイナーさんと話し合って、できる限り理想に近い代替品を探すようにしました。大変ではありましたけど、すごく勉強にもなりましたね」。
また、【アールコート早稲田】は、8、9階がTさまのお嬢さまたちのご自宅だったこともあり、そのこだわりから建設中に細かな修正が多く発生した。そのため、工事期間中、Koujirouは大半の時間を事務所での図面作成に費やすことになった。しかしその、可能な限りの対応が、より一層Tさまの信頼を強くし、後にTさまは「この建築において一番感謝しているのはKoujirouさん」とおっしゃっている。
2013年3月、ついに【アールコート早稲田】が竣工した。マンションを覆っていた足場が解体されていき、徐々に建物の全景が見えていく。完成の嬉しさと同時に、ふとKoujirou

の胸によぎる「設計とイメージが違う出来映えだったらどうしよう」という不安。だが、それは杞憂だった。
東西南北の四面全て異なる外観のスタイリッシュなマンションは、早稲田の新しいランドマークに相応しい美しさで、そこに存在していた。
その瞬間Koujirouの胸に熱いものが込上げてきた。これまでの数々の苦労が報われた瞬間だった。
神田川沿いの桜の開花まであと少し。「きっと、すばらしく美しい光景になるだろう」Koujirouは心の中で呟いた。

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PROJECT STORY 04 不動産編へ

PROJECTSTORY 04>不動産編 10年後、20年後の安定した経営のため。生和コーポレーションの信頼のバトンは受け継がれていく。

マンション経営は最初の入居率が肝心。

「今建築中の早稲田の物件は、社を挙げてグッドデザイン賞を目指しているらしい」。そう耳にしたとき、当時入社7年目だったKenjiは「自分もその一大プロジェクトに関わりたい」と興味を抱いた。その後、【アールコート早稲田】の物件担当に指名されたときは、強い高揚感に身震いしたという。
5ヵ月後に迫った【アールコート早稲田】の竣工までに全戸分の入居者を集めるために、不動産仲介業者に営業活動をする。それが不動産部に所属するKenjiに課された使命だ。通常の生和コーポレーションの物件は、20〜30戸程度だが、【アールコート早稲田】は全部で75戸(内オーナーさまご自宅3戸)。通常の3倍近くだ。工事中の建設地を初めて訪れたとき、その建物の大きさにKenjiは多少怯んだ。「本当に来年3月までに満室にできるだろうか?」。

そんな不安は、オーナーであるTさまにお会いして払拭された。
「Tさまは、自宅部分はもちろんのこと、賃貸部分についても入居者目線でこだわられて、細かい部分についても工事担当に提案されていました。また、早稲田周辺は高級物件も多い。ご両親から受け継いだ大切な土地に建てるからには、それらの競合物件に負けない良いものに、という強い想いをお話ししてくださりました。マンション経営は最初の入居率が肝心。Tさまの気持ちに応えるために、安定したマンション経営のスタートのため、絶対に全室満室にしようと決意しました」。
決意を胸に、さっそくKenjiは営業活動のために街へ出るのであった。

入居開始後も不動産部の仕事は続く。

社を挙げて建設するグレードの高い物件【アールコート早稲田】の魅力をより多くの入居希望者に伝えるため、不動産仲介業者に配信する物件情報の質にもこだわった。Tさまとアピールポイントを打ち合わせた上で、販促物などを手がける営業企画課スタッフに協力を仰ぎ、写真のクオリティを高め、設備と間取りの良さをアピールした。
その甲斐あってか、最初のKenjiの不安が嘘のように、物件周辺の大学への新入生、大手企業の社員を中心に、続々と入居者は決まっていった。むしろ人気が高すぎて、FAXが届くタイミングの差でお断りすることもあったほどだ。
1Kに比べて家賃が高い1LDKの出足がやや鈍かったが、Kenji は全く焦らなかった。「1LDKの大きなウェルバルコニーを見た人は、きっと住みたくなるはず。それだけの魅力がある物件だ。不動産仲介業者さんには、モデルルームへの誘導を強化してもらおう」。Kenjiの狙いは見事に的中し、72戸の賃貸物件は、竣工までに全て入居者が決まった。
しかし、Kenjiの物件担当としての仕事はこれで終わりではない。むしろこれからが本番と言ってもいい。マンションのメンテナンスを担当するグループ会社・生和アメニティと連携して、【アールコート早稲田】の不動産経営をこ

れからもサポートし続けていくのだ。
「生和アメニティとは月1回の報告書だけでなく、随時電話やメールで情報共有して、水回りや電気関係などの万が一のトラブルがあったときはすぐに対応できるようにしています。これまで生和コーポレーションの営業、設計、工事、それぞれの担当を信頼して、このマンションを任せてくださったTさまを失望させることだけはしてはいけませんからね」。生和コーポレーションの信頼のバトンは、確実に受け継がれている。

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GOOD DESIGN AWARD 2013 2013年度 グッドデザイン賞を受賞


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