医療施設で土地活用する場合のメリット・デメリットは?種類や立地条件も解説
土地活用にはさまざまな方法があります。少子高齢化が進む現在は、将来のニーズを考え、土地活用の選択肢の一つとして「医療施設」を検討するとよいでしょう。
医療施設による土地活用は地域に貢献できるうえ、収益も安定しやすい点がメリットです。ただし、届け出の手間などのデメリットも存在します。
この記事では、医療施設で土地活用する場合のメリット・デメリット、医療施設の経営に向いている土地の特徴や、施設の種類について解説します。医療施設での土地活用を検討されているオーナー様は、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
医療施設として土地活用する方法は3つ!
医療施設として土地活用する場合、土地だけを貸す、自己負担で施設を建築して貸す、建設協力金で施設を建築して貸す、という3つの方法から自身に適したものを選ぶことになります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、最初に確認しておきましょう。
1.土地だけを貸す方法
1つ目は、医療施設を経営する医師などの事業者に土地だけの状態で貸し、地代を得る方法です。
医療施設の建築は事業者が行なうため、土地のオーナー様は初期費用を負担せずに済みます。また、数十年間の契約期間満了後は、更地の状態で土地を返還してもらえる点もメリットです。
一方、一般的に地代相場は建物の賃料より安い水準にあるため、収益性が低いのがデメリットといえるでしょう。その他、土地の上に建っている建物は事業者の所有となるため、建物を第三者に貸し出される可能性もあります。
2.自己負担で施設を建築して貸す方法
2つ目は、土地のオーナー様が医療施設の建築費用を自己負担し、建物を利用したい事業者を募って賃料を得る方法です。先述のとおり、建物の賃料は地代よりも高く設定しやすいため、高い収益性を見込めます。
また、賃貸目的の建物を建て、第三者に貸している土地は「貸家建付地」として評価されるため、更地のままにしているよりも相続税を節税できます。
それだけでなく、建築費用を借り入れた際の利息や、建物価格の減価償却費を経費にできるため、所得税を抑えることも可能です。
ただし、医療施設の建築には高額な初期費用がかかります。その他には、事業者が見つからないときや事業者が撤退したときの空室リスクがあることも、頭に入れておくべきでしょう。
3.建設協力金で施設を建築して貸す方法
3つ目は、土地を使いたい事業者から建設協力金を預かり、事業者の希望する医療施設を建築して貸す方法です。リースバックとも呼ばれ、預かった建設協力金は、建物完成後に賃料と相殺するかたちで事業者に返済します。
この方法なら、建築資金の調達が不要なうえ、事業者が確定した状態での計画進行が可能です。また、建物の所有者は土地のオーナー様となるため、貸家建付地として相続税を節税できるメリットもあります。
デメリットは、建物が事業者の希望する仕様となるため、万が一撤退されたときに転用が難しい点です。さらに、事業者撤退により建設協力金の返済義務がなくなった場合、建設協力金が所得とみなされ、課税される可能性があるでしょう。
医療施設として土地活用を行なう場合のメリット
医療施設だからこそ期待できる土地活用のメリットは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、地域貢献性・将来的な需要・施設の選択肢の3つの観点から解説します。
地域貢献につながる
病気の治療や健康維持のために欠かせない医療施設は、人々の生活との関わりが深く、ライフラインともいえる重要な設備です。
そのため、幅広い年齢層からの需要が見込めると同時に、地域貢献につながる土地活用法といえます。特に、医療施設が不足している地域の土地に新設すれば、地域住民からも喜ばれるはずです。
土地活用を通じて地域貢献したい方は、近隣にある医療施設の種類を調べ、足りない施設を補うような活用ができないか検討してみましょう。
将来的にも高い需要が見込める
一般的に、高齢になるほど医療施設にかかる機会は多くなるため、今後も少子高齢化が進めば、医療施設の需要はますます高くなると予想されます。
総務省の統計によれば、2020年9月時点の65歳以上の人口は約3,617万人で、総人口のうち28.7%が高齢者と過去最高の割合です。総人口における高齢者の割合は年々増加傾向にあり、2040年には35.3%になるとも見込まれています。
このことから、医療施設は他の業態に比べ、将来的な撤退リスクが低いと考えられるため、長期的な活用を目指したい場合に向いている方法です。
土地の広さに合わせた施設を選べる
医療施設の規模は、用途によって大小さまざまあります。狭い土地は小規模な診療所、広い土地は大規模な病院や老人ホームなど、土地の広さに合わせた施設選択ができる点は大きなメリットです。
また、医療施設の開設を希望する事業者は多いため、他の方法での活用が難しい土地でも、医療施設としてなら有効活用できるケースも少なくありません。
ただし、診療科目や導入する設備によっては、必要面積が設けられている場合があるため注意が必要です。土地の広さを理由に、自己判断で医療施設での活用を諦めるのではなく、土地活用の専門業者に一度相談してみるとよいでしょう。
医療施設として土地活用を行なう場合のデメリット
医療施設として土地活用を行なう場合、デメリットも踏まえたうえで、実際に土地活用するかを判断しましょう。ここでは、誘致・届け出・転用性の3つの観点から解説します。
医療施設の誘致が難しい
医療施設として土地活用する場合、借主は医師や福祉施設事業者に限定されるため、他の業態に比べ、そもそもの事業希望者の母数が少なくなってしまいます。
また、医療業界へのネットワークがなければ、医師や福祉施設事業者を募るのは難しいでしょう。そのため、医療施設として土地活用する際は、医療業界にネットワークを持つ専門業者のサポートを受ける必要があります。
届け出の手間がかかる
医療施設の条件によっては、各種届け出が必要となる場合があります。
例えば、入院用のベッドを有する医療施設は「特殊建築物」として扱われるため、工事の着手前に建築確認申請を行ない、耐火・防火措置を講じなければなりません。
その他、医療施設の開業時には、「診療所開設届」を保健所に提出したり、「保険医療機関指定申請書」を厚生局に提出したりするなど、各所への届け出を漏れなく行なう必要があります。
医療施設の土地活用実績が豊富な専門業者に協力してもらうことで、このような手続きもスムーズに進められるでしょう。
転用性が低い
医療施設は地域住民の生活を支えるものであり、一度経営を始めると簡単には廃業できません。そのため、土地活用の手段として医療施設を選ぶ場合は、長期的な経営を前提に考える必要があります。
また、医療施設の建築物の間取りは特殊なケースが多く、他の業態に転用しにくいことも知っておきましょう。
事情があり、どうしても土地の転用性を確保したいという方は、別の活用方法を検討したほうがよいかもしれません。
土地活用で考えられる医療施設の種類
一口に医療施設といっても、設備や診療内容によっていくつかの種類に分けられます。土地活用で考えられる医療施設の代表例として、診療所、病院、介護・福祉施設の特徴を解説します。
診療所
入院用のベッドが19床以下の比較的小規模な医療施設を「診療所」といいます。入院施設を備えていない場合も、診療所に分類可能です。
診療所は「~クリニック」「~医院」などの名称が多く、風邪などの軽い病気やケガ、通院が必要な慢性疾患の治療を担います。入院施設がない場合は、医師1人でも制限なく患者の診察ができるため、地域のかかりつけ医として診療所を開業する医師は少なくありません。
診療所は病床数が少ない分、必要面積が少なくて済むため、狭い土地でも活用しやすい医療施設といえるでしょう。
病院
20床以上の入院用ベッドがある医療施設は「病院」に分類され、そのなかでも100床以上の大規模な病院は「総合病院」として扱われます。
病院の役割は、大きく「外来」と「入院」の2つです。おもに救急時や専門的な診断・治療が求められる場合は外来、必要に応じて入院という流れになります。
手術や精密検査を行なうこともあるため、診療科目ごとに専門スタッフが配置されているのが特徴です。
病院では、医師の人数にも決まりがあります。外来患者40人に対し1人、入院患者16人に対し1人の医師が必要で、病院には最低でも3人以上の医師が在籍していなければなりません。
このように病院は、設備面・人員面の規模が大きい医療施設のため、広い土地の活用に向いているでしょう。
介護・福祉施設
老人ホームやグループホーム、デイサービスなど高齢者の介護・福祉のための施設は、少子高齢化の進行が見込まれる今後、さらに需要が高まると予想されます。そのため、診療所や病院とともに、土地活用の方法として検討の余地があるでしょう。
介護・福祉施設のなかでも、特に注目したいのは「グループホーム」です。グループホームとは、認知症を持つ高齢者の介護・福祉を目的とした施設のことで、5人~9人の利用者で1ユニットを作り、職員のサポートのもと共同生活を送ります。
グループホームは、利用者が穏やかな生活を送ることに重きを置く施設のため、公共交通機関の利便性が悪いなど立地条件に難のある土地でも活用できます。送迎サービスをつけるなどの工夫をすれば、さらに利用者から選ばれやすくなるでしょう。
グループホームをはじめとする介護・福祉施設は、多数の利用者が日常生活を送る場所として必要面積が大きいため、広い土地の活用に向いています。
医療施設の経営に向く土地の条件
医療施設のメリット・デメリットや種類を把握できたら、実際にどのような土地が医療施設の経営に向いているのかを確認しておきましょう。ご紹介する条件に当てはまる土地のオーナー様は、医療施設での土地活用を視野に入れてみてください。
適切な用途地域の土地
土地にはそれぞれ「用途地域」が定められており、それによって建築できる建物の種類が決まっています。土地活用の際は、自身の土地がある場所の用途地域を必ず確認し、希望する施設の建築可否を判断しましょう。
医療施設の場合、診療所はどの用途地域でも建築できますが、病院や老人ホームは以下のとおり用途地域の制限があります。
用途地域 | 建築可否 | ||
診療所 | 病院 | 老人ホームなど | |
第一種低層住居専用地域 | ○ | × | ○ |
第二種低層住居専用地域 | ○ | × | ○ |
第一種中高層住居専用地域 | ○ | ○ | ○ |
第二種中高層住居専用地域 | ○ | ○ | ○ |
第一種住居地域 | ○ | ○ | ○ |
第二種住居地域 | ○ | ○ | ○ |
準住居地域 | ○ | ○ | ○ |
田園住居地域 | ○ | × | ○ |
近隣商業地域 | ○ | ○ | ○ |
商業地域 | ○ | ○ | ○ |
準工業地域 | ○ | ○ | ○ |
工業地域 | ○ | × | ○ |
工業専用地域 | ○ | × | × |
住宅地から近い土地
普段の生活のなかで、病気やケガにより医療施設を利用する際、自宅から近い施設のなかから選ぶ方が多いでしょう。紹介状をもらい、大きな病院にかかるようなときも、比較的近場の施設を紹介されるケースがほとんどです。
このように、患者は自身が住んでいるエリアの医療施設を利用する傾向にあるため、人が多く住む住宅地周辺の土地は医療施設経営に向いています。すでにアパート・マンションが供給過多で、賃貸物件での土地活用が難しい場合でも、医療施設なら参入できる可能性があります。
ただし、住宅地周辺でも、競合する医療施設があれば患者の取り合いになってしまうため、市場調査が必要です。診療科目が競合していなければ、一定の需要が見込めるでしょう。
認知されやすく、来院しやすい立地の土地
いざというときに利用する医療施設として患者に選んでもらうには、施設の存在を認知してもらうことが第一歩となります。
そのため、狭い道路や裏路地に面した目立たない土地よりも、人の目に触れやすい場所のほうが医療施設経営に有利です。学校などの公共施設、人通りの多い駅やスーパーの周辺にある土地なら理想的といえます。
また、患者の立場から見た「来院しやすさ」も大切です。大きな通りに面した立地なら、車での来院が容易なうえに、医療施設の開設を希望する事業者も見つかりやすいでしょう。
逆に、墓地や葬儀場から近い立地は不幸を連想しやすいため、医療施設には向きません。すでに十分な医療施設がそろっている地域も、需要が見込めないため避けたほうがよいでしょう。
医療施設としての土地活用はプロの力を借りよう
ここまで解説してきたとおり、医療施設としての土地活用は、ニーズの見極めや施設の誘致、届け出など課題が多くあります。
また、近隣に調剤薬局やドラッグストアなどの医薬品販売施設がない場合は、医療施設と併せて誘致が必要です。すべてを自身の力で進めるのは難しいため、医療施設の土地活用実績を持つ専門業者を見つけ、サポートしてもらいましょう。
医療施設での土地活用を検討している方は、次のポイントに注目して専門業者を選んでみてください。
<専門業者選びのポイント>
・医療施設での土地活用実績が豊富か?
・医療施設の設計・施工や運営までノウハウがあるか?
・医療業界にネットワークを持っているか?
・医療施設での活用が難しい場合、他の方法の提案が可能か?
まとめ
地域住民のライフラインを担う医療施設は、他の業態と比べても特に地域貢献につながりやすく、有意義な土地活用法です。医療施設が不足している地域のニーズを満たす施設を建てれば、多くの人の生活に良い影響をもたらすでしょう。
また、将来的にも高い需要が見込めるため、長期の土地活用を希望するオーナー様にとっても大きなメリットがあります。
一方で、医療施設での土地活用を実現させるには、ニーズの見極めや施設の誘致、届け出などハードルが多いのも事実です。まずは信頼できる専門業者を見つけ、個別相談に乗ってもらうことから始めましょう。
生和コーポレーションは、土地活用ビジネス51年の実績とノウハウをもとに、オーナー様に最適な土地活用法をご提案します。建物の設計・施工やテナント募集も承っていますので、お気軽にお問い合わせください。