鉄筋コンクリート造(RC造)の特徴とは?構造別の違いやメリット・デメリットを解説

建物の構造には、鉄筋コンクリート造(RC造)をはじめ、鉄骨造(S造)、木造(W造)など複数の工法があります。

例えば、賃貸マンション経営などを行なう際は、長期的な事業となるため、それぞれの工法の具体的な特徴を把握しておきたいオーナー様も多いのではないでしょうか。

この記事では、鉄筋コンクリート造(RC造)の特徴、メリット・デメリット、鉄筋コンクリート造(RC造)と他の構造(S造、W造)との違いを紹介します。

併せて、鉄筋コンクリート造(RC造)のメンテナンス方法についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

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鉄筋コンクリート造(RC造)とは「遮音性・耐震性・耐火性」に優れた構造

まずは工法の具体的なポイントについて、ここでは鉄筋コンクリート造(RC造)の特徴、メリット・デメリットをそれぞれ解説します。

鉄筋コンクリート(RC造)の特徴

鉄筋コンクリート造(RC造)の「RC」とは、「Reinforced Concrete(補強されたコンクリート)」の頭文字です。

RC造は、太さ1cm以上の鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造を指し、遮音性、耐震性、耐火性に優れているという特徴があります。

RC造では、柱や梁など建築物の骨格部分を構成する際、鉄筋を配置した型枠へコンクリートを流し込んで使用しています。中低層および中高層マンションの建築時に用いられるのが一般的で、おもな構造形式は「壁式構造」と「ラーメン構造」の2種類です。

「壁式構造」は、柱と梁の代わりに耐力壁で荷重を支えていることが特徴で、中低層マンションの建築に用いられています。

一方、「ラーメン構造」は、柱と梁を組み合わせた構造体を、溶接などで接合させていることが特徴で、中高層マンションの建築に用いられています。

鉄筋コンクリート(RC造)のメリット

RC造における1つ目のメリットは、デザイン設計の自由度が高い点です。構造的な強度が確保できるのであれば、室内に柱のない広々とした空間や大きな窓を配置した設計も可能となります。

そのため、デザイナーズマンションなど、デザイナーや建築家のコンセプトが活かせる建築物にもRC造は適しています。

2つ目のメリットは、断熱性の高さが空調機器の省エネルギー対策へとつながる点です。もともと鉄筋コンクリートは気密性に優れているため、断熱工法を取り入れることで断熱の効果をより高められます。

断熱工法のおもな種類には、コンクリートと内壁のあいだに断熱材を入れる内断熱工法と、コンクリートの外側に断熱を施す外断熱工法があります。

内断熱工法は、外観を活かしたままコストを抑えて施工できるという特徴があり、外断熱工法であればコンクリートが持つ蓄熱性を活かすことができます。

鉄筋コンクリート(RC造)のデメリット

RC造のデメリットは、工期が長くなりやすい点です。建築物の規模や工事の時期にも左右されますが、一般的にRC住宅の工期は5~6ヵ月程度、7階建マンションなら10ヵ月程度かかるとされています。

W造とも呼ばれる木造住宅の工期は、2階建アパートなら5カ月程度が一般的であることから、長めの工期を要することがわかります。

2つ目のデメリットは地盤の補強が必要なケースもある点です。RC造で使用する鉄筋コンクリートは高重量であるため、地盤が弱い土地に対して補強工事を行なう場合もあります。

補強工事には、表層改良工法や柱状改良工法などの種類があり、表層改良工法は1坪あたり2~3万円程度、柱状改良工法は1坪あたり4~5万円程度の費用相場です。ただし、これはあくまで相場であり、地盤の状態によって補強工事の費用は変わります。

鉄筋コンクリート(RC)と他の構造(S・W)の違い

鉄筋コンクリート造(RC造)には、デザイン性の高い建築設計に使える、断熱性が高いなどのメリットがありますが、ほかの工法とどのような違いがあるのでしょうか。

ここからはS造、W造のメリットとデメリットを紹介するとともに、RC造との違いについても見ていきましょう。

RC造とS造の違い

S造(鉄骨造)は柱や梁に鋼鉄を使用し、厚さ6mm以上の鉄骨を用いたものを「重量鉄骨造」、厚さ6mm未満の鉄骨を用いたものを「軽量鉄骨造」と分けて施工しています。

ここではS造のメリットとデメリットに触れながら、RC造との違いについても把握していきましょう。

【S造のメリット】
S造の大きなメリットの一つは、品質が安定しているという点です。S造では、工場で生産された鉄骨を使用するため、一つひとつの部材の品質が安定しています。

そのためW造(木造)の工法などと違い、職人の腕によって完成度が左右される可能性は低いでしょう。特に「軽量鉄骨造」では、RC造と比べて軽量でしなやかなS造の特徴を活かした「プレハブ工法」が多く採用されています。

プレハブ工法とは、柱や梁、屋根トラスなどの部材を事前に工場で製造しておき、現場で組み合わせる工法のことです。プレハブ工法を取り入れることで、安定した品質の工事ができ、RC造よりも比較的短い工期での施工が可能となります。

【S造のデメリット】
S造で部材への防錆処理が必要となる点は、デメリットといえるでしょう。もともと鉄骨は湿度を調整する性質のない部材であり、内部結露が発生しやすいという特徴があります。そのため、防錆処理を施して強度に影響をおよぼさないようにする必要があります。

2つ目のデメリットは、断熱性が低い点です。鉄は熱伝導性が良いという特徴がある反面、外気温の影響を受けやすくなります。室内の気密性が高いRC造と違って夏は暑く、冬は寒くなりやすいため、空調機器の電気料金が高くなる原因にもなりえるでしょう。

さらに鉄骨は熱の上昇とともに強度が低下するため、耐火性が低い点もデメリットといえます。ただし、人造鉱物繊維などを用いた耐火被覆の処理を鉄骨に施すことで、耐火性の向上は可能です。

RC造とW造の違い

木造とも呼ばれるW造は、壁や柱などの構造部分に木材を用いた工法です。総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全国の住宅全体におけるW造のシェアは56.9%(平成30年)で、依然高いことがわかります。

ここからはW造のメリットとデメリットについて言及しながら、RC造との具体的な違いについて見ていきましょう。

【W造のメリット】
W造のメリットの一つは、RC造と比べて、建築にかかる費用が安い傾向にあることです。ヒノキやスギなど使用する木材の種類によって変わりますが、材料費も比較的安価です。

工期も短めの傾向にあるため、人件費などのコストも抑えることが可能で、結果的に建築にかかる費用が安く収まります。

2つ目のメリットは、断熱性に優れている点です。RC造の場合はコンクリートの気密性を活かした断熱性でしたが、W造の場合は熱伝導率が鉄と比べて低いという木材の性質を活かした断熱性があります。

この断熱性により室内の温度が保ちやすくなり、特に床材に用いることで快適に過ごせるでしょう。

3つ目に挙げるメリットは、湿度を一定に保てる点です。木材には、湿度が高くなると湿気を吸収し、空気が乾燥すると蓄えていた湿気を放出する性質があります。湿度を調節する特性が備わっているため、W造の建築物では季節を問わず快適に過ごせるでしょう。

【W造のデメリット】
メンテナンスの頻度が多い傾向にあることは、W造のデメリットといえます。木材を使用しているため、外壁塗装や屋根塗装などのメンテナンスを10年に1回程度行なって、耐久性を保つ必要があります。

また、2つ目のデメリットはシロアリへの対策を行なわなければならない点です。ベタ基礎と呼ばれる床下一面をコンクリートで覆う工法によって、シロアリの被害は減少傾向にあります。

ただし、ベタ基礎の工事を行なう際は、工事費用が別途上乗せされてしまいます。木材に対して薬剤を塗布もしくは散布する防蟻処理を行なったり、点検を依頼したりと定期的なメンテナンスも不可欠です。

さらに、遮音性があまり高くない点もW造におけるデメリットの一つでしょう。遮音性に優れているRC造と違い、例えば、マンションやアパートの部屋同士の壁が薄い場合は、生活音が響く恐れもあります。

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鉄筋コンクリート造(RC造)のメンテナンス方法

RC造の建物を長期にわたり維持していくためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。ここからは、ひび割れの補修、欠落部分の充填、外壁塗装、屋上箇所の防水の4つのメンテナンス方法を解説します。

ひび割れの補修

コンクリートの壁面に生じたひび割れは“クラック”とも呼ばれ、シーリング材を使った補修が可能です。ただし、シーリング材は5~10年程度で劣化するため、定期的なメンテナンスは必要となります。

そもそもコンクリートの壁面にひび割れが生じる原因には、乾燥すると収縮し、吸水すると膨張するコンクリートの特性が関係しています。長い年月をかけて少しずつ収縮と膨張を繰り返すことで、ひび割れが発生してしまうのです。

ヘアークラックとも呼ばれる微細なひび割れであれば、仮に浸水したとしてもコンクリートの石灰質が防水の役割を果たしてくれます。しかし、ひび割れが大きくなると雨水などが内部に侵入する可能性が高くなるでしょう。

ひび割れが大きい場合は、Vカット工法という施工法で対応します。Vカット工法では、まずひび割れに対し、サンダーという電動工具を使ってVの形に切込みを入れます。その後、シーリング材の充填などの工程を経て、仕上げに塗装を行なえば完了です。

欠落部分の充填

コンクリートの壁面などが欠落してしまった場合、セメント・水・砂を練り合わせた建築材料「モルタル」を使用して欠落部分の充填が可能です。軽微な欠落であればポリマーセメントモルタルを使用し、大きければエポキシ樹脂モルタルを使用して充填します。

コンクリートが欠落する理由には、ひび割れの放置や地震などの物理的な要因が挙げられます。特に、ひび割れを放置し続けていると、コンクリート内部に雨水が侵入して、鉄筋部分の錆びが引き起こされてしまうため注意しなければなりません。

錆びた鉄筋は膨張するため、結果的にコンクリートを押し出してしまい、コンクリートの外壁を欠落させます。錆びた鉄筋が原因で大きなひび割れを生じさせた状態は、コンクリートの“爆裂”とも呼ばれます。

充填で使用するモルタルには柔軟性があるため、欠落部分の補修に使いやすいという特徴があります。欠落した部分を放置すると、経年とともに規模が拡大する恐れもあるため、見つけ次第、早めに対処することが肝心です。

外壁塗装

外壁塗装は、下地であるコンクリートの劣化を防止する役割を持っており、一般的に10~15年程度で耐用年数を迎えます。コンクリートの外壁塗装で使われる4つの方法と特徴を見てみましょう。

外壁塗装の種類 特徴
1 撥水剤 ・コンクリートの防水性を高められる
・撥水剤は透明なため、外壁の美観を保てる
2 カラークリアー塗料 ・撥水剤の上に塗布することで、耐水性をより高められる
・着色するため、補修の跡や汚れが目立ちにくい
3 弾性塗料 ・ひび割れが発生した外壁に向いている
・塗料に伸縮性があるため、コンクリートがひび割れても雨水を防げる
4 再現工法 ・コンクリート風の塗装を施し、新築時のような外観へ戻せる
・補修の跡を隠しつつ、コンクリートの風合いを活かせる

外壁塗装を剥げたまま放置すると、下地部分が雨水など外部環境の影響を受け、劣化が早まる恐れもあります。専門業者へ定期的なメンテナンスを依頼し、こまめに補修や塗装を行なうことで、外壁の美観を維持して耐久性を長く保てるでしょう。

屋上箇所の防水

屋上箇所の防水は、劣化の程度に応じて部分的に補修したり貼り替えたりできます。防水性能は、メンテナンスをせずに何十年もの耐久性があるわけではないため、定期的なメンテナンスは必須です。

一般的にRC造では、傾斜がある三角屋根でなく、フラットな構造の陸屋根が用いられています。屋上には雨漏りを防ぐことを目的として、塗装ではなく防水処理が施されており、おもな4つの工法の特徴は以下のとおりです。

防水の種類 特徴
1 ウレタン防水 ・液体状の防水材を使うため、複雑な形状でも施工しやすい
・耐用年数は8~12年程度
2 FRP防水 ・ガラス繊維のマットを敷き、ポリエステル樹脂で塗装する
・上部からの重みや、熱や薬品に対する耐久性が高い
・耐用年数は10~12年程度
3 シート防水 ・塩化ビニールやゴムのシートを、接着剤や専用工具で固定する
・防水材を乾燥させる手間が省け、一気に広い面積を施工できる
・耐用年数は10~15年程度
4 アスファルト防水 ・ルーフィング(アスファルトをコーティングした合成繊維不織布)を使い、貼り重ねて施工する
・車の重量にも耐えられ、雨水や紫外線に強い
・耐用年数は15~20年程度
ウレタン防水の耐用年数は8~12年程度、アスファルト防水の耐用年数は15~20年程度など、それぞれの耐用年数は異なります。メンテナンスの周期も考慮しながら屋上箇所の防水方法を選べば、コストの削減にもつながるでしょう。

まとめ

鉄筋コンクリート造(RC造)は、優れた断熱性や遮音性を有しているうえ、デザイン性を活かしたマンションを建築できるなどメリットが豊富です。

一方、工期が長くなりやすいことも特徴で、7階建マンションなら10ヵ月程度の期間は想定しておく必要があります。また、コンクリートのひび割れや欠落、防水などに関する定期的なメンテナンスは欠かせません。

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