【事例付】店舗付き住宅とは?メリット・デメリットや建築時のポイント

土地のオーナー様のなかには、「店舗付き住宅」に興味がある方もいるのではないでしょうか。店舗付き住宅は、おもに1~2階にテナントが入った賃貸マンションを建てて経営する土地活用方法です。
この記事では、店舗付き住宅の概要からメリット・デメリット、建築時のポイントまで幅広く解説します。生和コーポレーションの店舗付き住宅建築事例も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の目次
店舗付き住宅とは?
店舗付き住宅とは、同一の建物内に店舗部分と住居部分がある、戸建てやマンション・アパートのことです。「店舗併用住宅」などと呼ばれることもあります。
一般的には、店舗部分は利用者がアクセスしやすいよう、建物の1階に設置されるケースが多く、その種類は以下のようにさまざまです。
- コンビニエンスストアなどの物販店舗
- クリニック
- 事務所
- コインランドリー
- 飲食店
- 美容院
- 花屋 など
これらの店舗は自身が経営するだけでなく、テナントを誘致することも可能です。また、住居部分に関しては、「自宅のみ」「賃貸住宅のみ」「自宅+賃貸住宅」といったパターンが考えられます。
よって、店舗付き住宅の組み合わせ例としては、「自身の店舗+テナント+自宅+賃貸マンション」や、「テナント+賃貸マンション」などが挙げられるでしょう。
店舗付き住宅のメリット

店舗付き住宅のメリットは、以下のとおりです。
【自身の店舗+住居】のメリット
- ① 店舗経営をしながら家賃収入を得られる
- ② 賃料をかけずに店舗経営ができる
- ③ 建て替えても従来の事業を継続できる
【テナント+住居】のメリット
- ① テナント料により収益性が向上する
- ② 建物全体の空室対策になる
- ③ 地域貢献につながる
ここでは、各メリットを詳しく見ていきましょう。
【自身の店舗+住居】のメリット
自身が経営する店舗と、自宅や賃貸住宅を併用するメリットは以下のとおりです。
店舗経営をしながら家賃収入を得られる
自身の店舗が入る賃貸マンションを建築すれば、店舗経営をしながら家賃収入を得られます。
店舗経営は、業種によっては、季節や流行などの影響で事業収入に増減が出ることも考えられるでしょう。そこで、毎月一定の家賃収入が発生する賃貸マンション経営を併用すれば、収入基盤が安定しやすくなります。
賃料をかけずに店舗経営ができる
店舗付き住宅を建てると、店舗用の物件を借りるときに必要となる保証金や賃料を支払わずに済みます。
特に、固定費である賃料は経営の支出のなかでも大部分を占めます。経営に適した立地の物件を選ばなければならない以上、削減が難しいものです。
その点、店舗付き住宅ならランニングコストを抑えられ、経営に余裕が生まれます。
建て替えても従来の事業を継続できる
築年数が経過するなどして建物の建て替えが必要になった場合でも、建て替え後に自身の事業を継続できなくなる心配がありません。
また、建物の1~2階を店舗とし、さらに自宅を併用することで、通勤時間をかけずに働けます。なかでも、仕込みに時間がかかる業種や、営業時間が長い業種の経営を行なう場合は、時間を有効活用できるメリットが大きいでしょう。
【テナント+住居】のメリット
テナント経営と、自宅や賃貸住宅を併用するメリットは以下のとおりです。
テナント料により収益性が向上する
店舗や事務所などのテナント料(賃料)は、一般的な住居の家賃よりも平米単価が高い傾向です。
そのため、単に賃貸マンションを経営するよりも、店舗付き住宅にしてテナントを誘致したほうが、収益性の向上が期待できます。
建物全体の空室対策になる
経営する賃貸マンションを店舗付き住宅にすることで、空室対策につながるメリットもあります。具体的には、飲食店やコンビニエンスストア、コインランドリーなどを建物の1階に誘致すると、2階以上の住居部分に住む人たちの利便性が向上します。こうした利便性の高い店舗は入居者のメリットにつながるため、より住居部分の集客力を高める効果が期待できるのです。
また、一般的に賃貸マンションの1階は家賃が安く収益性に劣ります。しかし、立地によるものの、テナントは利用客のアクセスが良い1階のほうが家賃が高い傾向にあるため、1階にテナントを誘致することで、より多くの家賃収入を得られる可能性があります。
地域貢献につながる
テナントの誘致によって、賃貸マンションの入居者に加え、その地域にも良い影響を与えられます。例えば、近隣にクリニックなどの医療系テナントが少ない場合、地域の方にも喜んでもらえるでしょう。
店舗付き住宅を建てて自分で店舗を経営したいと思っても、業種によってはエリア内におけるニーズが期待できないかもしれません。その点、医療系テナントは立地が悪くても一定のニーズが期待できるため、立地条件が悪い賃貸マンションでも誘致できる可能性があります。このように、周辺環境のニーズに合わせて最適な業種のテナントを誘致できるのは、賃貸マンションを店舗付き住宅にする大きなメリットといえるでしょう。
店舗付き住宅のデメリット
店舗付き住宅のデメリットは、以下のとおりです。
【自身の店舗+住居】のデメリット
- ① 自己使用によりテナント部分の収益性が低下する
- ② 一般的な住宅と比べると売却しにくい
【テナント+住居】のデメリット
- ① 立地によってはテナントが集まらない
- ② 融資の審査に時間がかかりやすい
前章のメリットと併せて、デメリットも理解しておきましょう。
【自身の店舗+住居】のデメリット
自身が経営する店舗と、自宅や賃貸住宅を併用するデメリットは以下のとおりです。
自己使用によりテナント部分の収益性が低下する
自身の店舗経営と賃貸マンション部分の経営を両立させるのは、容易ではありません。テナント部分を自己使用することで、収益性が低下する可能性があります。
また、入居者がいる限り得られる家賃収入は事業収入と比べて安定性があるとはいえ、適切な対策を施さなければ空室が生まれ、その分収入も減ってしまうでしょう。空室リスクを回避するためには、管理会社に管理を委託して賃貸経営をサポートしてもらうのがポイントです。
一般的な住宅と比べると売却しにくい
年月が経って店舗経営をやめたくなったり、店舗を拡張移転する必要が出てきたりして、店舗付き住宅を売却し引っ越すことになるかもしれません。
一般的な住宅と比べて、特殊な間取りの店舗付き住宅の需要は限られるため、売却に時間がかかるリスクがあります。ただし、商業に適した立地であれば、比較的買い手が見つかりやすいでしょう。
【テナント+住居】のデメリット
テナントの賃貸経営と、自宅や賃貸住宅を併用するデメリットは以下のとおりです。
立地によってはテナントが集まらない
自身で店舗経営を行なうケースはもちろんのこと、テナントを誘致するケースでも立地が重要です。例えば、以下のように考えられます。
【飲食店の場合】
- OK例:「駅周辺」や「交通量がある道路沿い」など人や車の通行量が多い場所。ただし、ターゲットによって適した立地は異なる
- NG例:視認性の悪い場所や人通りが少ない場所
【美容室の場合】
- OK例:「商業地」や「閑静な住宅街」など。ただし、コンセプトによって適した立地は異なる
- NG例:悪臭があるなど周辺環境の衛生状態が悪い場所
店舗需要が低い立地だと、テナントが集まらずに空室が生まれ、得られるテナント料も減ってしまいます。このようなリスクを回避する方法として、専門家に市場調査を依頼することや、先にテナントを決めてから建築工事に着工することなどが挙げられます。
融資の審査に時間がかかりやすい
融資を受けて店舗付き住宅を建築したいと考えていても、金融機関の審査の段階では、どのようなテナントが入るか決まっていないこともあるでしょう。
この場合、金融機関は借主の経営状態を判断できないため、貸主の事業計画や実績などから慎重に融資可否を見極めることになります。その結果、融資の審査に時間がかかる傾向です。
店舗付き住宅の経営には、こうしたデメリットもあるため、土地活用方法としてそもそも店舗付き住宅が向いているのかも含め、専門家の意見を聞くことが大切です。
店舗付き住宅は用途地域の規制に注意が必要
店舗付き住宅を建てられるかどうかは、建築基準法に定められた土地の「用途地域」によって決まります。用途地域とは、計画的な市街地を形成する目的で、エリアを「住居系」「商業系」「工業系」といった建物の用途に応じて分類したものです。
現時点では、以下の13種類の用途地域が存在します。
住居系 | 第一種低層住居専用地域 |
第二種低層住居専用地域 | |
第一種中高層住居専用地域 | |
第二種中高層住居専用地域 | |
第一種住居地域 | |
第二種住居地域 | |
準住居地域 | |
田園住居地域 | |
商業系 | 近隣商業地域 |
商業地域 | |
工業系 | 準工業地域 |
工業地域 | |
工業専用地域 |
参考:用途地域|国土交通省
用途地域ごとに、建てられる建物の「建ぺい率」や「容積率」が定められています。建ぺい率とは敷地面積に対する建物の建築面積の割合、容積率とは敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合のことです。
これらに加え、建物の高さなどによる制限が設けられているエリアもあります。
例えば、第一種中高層住居専用地域に該当する場合、一般的な賃貸マンションは建築可能です。ただし、賃貸マンションを店舗付きにする場合は、以下の条件を満たす必要があります。
- 店舗部分の床面積が合計500平方メートル以内であること
- 店舗は3階未満(1階または2階)に設置すること
- 飲食店や事務所、診療所などのサービス業店舗であること
参考:建築基準法別表第二 用途地域等内の建築物の制限(第二十七条、第四十八条、第六十八条の三関係)|e-Gov法令検索
店舗付き賃貸マンションを建てる際の4つのポイント

店舗付き賃貸マンションを建てる際のポイントは、以下の4つです。
- ① 店舗部分は無柱空間にする
- ② 賃貸マンション部分のセキュリティを強化する
- ③ 店舗用駐車場を整備する
- ④ 店舗付き物件の知見が豊富な会社に相談する
ここでは、各ポイントについて解説します。
店舗部分は無柱空間にする
店舗経営では、室内に柱があると邪魔になってしまい、テナントの誘致にも悪影響をおよぼします。そのため、室内に極力柱が出ない「無柱空間」が理想です。
無柱空間を作るためには、太い梁で建物の荷重を支えられる「鉄筋コンクリート造」が適しています。併せて、店舗部分の間口を広く取り、視認性を高めることもポイントです。
賃貸マンション部分のセキュリティを強化する
入居者以外の方の出入りが増えると、賃貸マンションの入居者のなかには、セキュリティ面で不安を感じる方もいるかもしれません。
このような問題を解決するためには、店舗利用者と賃貸マンション入居者の動線が分かれるよう設計することが大切です。具体的には、店舗入口は建物前面、賃貸マンションのエントランスは建物裏面にするといった方法があります。
そのうえで、建物自体のセキュリティ対策を施しましょう。例えば、エントランスのオートロックなどは不可欠です。
店舗用駐車場を整備する
駅から離れた道路沿いの立地などでは、車での集客を想定する必要があります。路上駐車のようなトラブルを防ぐためにも、店舗利用者用の駐車場が必須です。
何台分の駐車スペースを整備するのか、複数のテナントが入る場合には共同駐車場とするのかなどを検討しましょう。敷地面積が狭く、駐車場を整備できない場合は、近隣のコインパーキングと提携するのも一案です。
店舗付き物件の知見が豊富な会社に相談する
店舗付き賃貸マンションは、立地や敷地面積など、向いている土地がある程度限定される土地活用方法です。
所有する土地で店舗付き賃貸マンション経営ができるか、経営を成功させるためにはどのような設計にすればよいかなどのお悩みを抱えている場合は、豊富な実績やノウハウを持つ建築会社に相談しましょう。
また、テナントを誘致する場合は、建物の建築後にテナントが集まらないといったことが起こらないよう、テナントの誘致を併せて行なってくれる会社に頼むとよいでしょう。
生和コーポレーションの店舗付き賃貸マンション事例
土地活用のトータルサポートを行なう生和コーポレーションには、店舗付き賃貸マンションの建築事例も豊富にあります。
今回は、自身の店舗を経営するケース、テナントを誘致したケースから、それぞれ事例を紹介します。
自宅にもこだわった店舗付き賃貸マンション建築事例
1つ目は、老朽化が進んでいた自宅と仕事用作業場の2棟を、14階建ての店舗付き賃貸マンションへと建替えた事例です。1階部分をオーナー様が運営する店舗とし、店舗との行き来がしやすいように2階にご自宅を配置しました。
自宅は賃貸部分から独立させて専用の玄関を設けることで、「マンション内の一戸」ではなく、「一軒の住宅」のようにした点がこだわりです。
また、賃貸部分のエントランスは通りに面した場所に設けて防犯性を強化し、女性の入居者も安心して出入りできるようにしました。
賃貸部分の部屋の広さは、「25平方メートル以上」という区の条例による基準よりも広めに設計し、快適に暮らしやすい賃貸マンションとなっています。
関連リンク:店舗併用賃貸マンションへの建替え事例
競合物件と差別化した店舗付き賃貸マンション建築事例
2つ目は、10階建ての店舗付き賃貸マンションを建築した事例です。
オーナー様は、親から子へ土地を受け継ぎつつ、安定して収入を得やすい賃貸マンションの経営を検討していました。そこで、1階部分がテナント、2~10階が賃貸部分、10階の一部がオーナー様のご自宅という設計で、店舗付き賃貸マンションを建築することに決定しました。
駅の目の前という好立地で競合物件が多いため、差別化できるような外観を意識するとともに、エントランスや各部屋も、ホテルのような格調の高いデザインとなっています。また、周辺のリサーチによりコインランドリーの需要が高いと判断し、1階にはカフェを併設したコインランドリーを誘致しました。
これらのこだわりにより、高めの家賃設定でありながらも高水準の入居率を実現しています。
関連リンク:競合物件との差別化で入居率アップを目指す
まとめ:店舗付き住宅は生和コーポレーションで実現
店舗付き住宅は、賃料をかけずに自身の店舗を経営できたり、テナントを誘致することで建物全体の空室対策につながったりと、ケースに応じてさまざまなメリットが得られます。地階にテナントを入れられるような立地の場合は、住居の家賃よりもテナント料のほうが高い傾向にあるため、テナントの誘致を積極的に検討するとよいでしょう。
ただし、土地の向き不向きや、ポイントを押さえた設計など考慮すべき点が多いため、店舗付き住宅に興味がある方は、まずは信頼できる建築会社にご相談ください。
生和コーポレーションなら、先述した事例のように、オーナー様のご希望も汲みながら理想的な店舗付き住宅を建築可能です。店舗付き住宅以外の土地活用方法もご提案できるので、お気軽にお問い合わせください。
なお、以下のページでは、今回紹介した店舗付き賃貸マンション以外にもさまざまな建築事例を紹介しています。こちらも併せてご覧ください。
関連リンク:土地活用の貸店舗・テナント・事務所併用事例