土地の相続税対策とは?土地の評価方法や税金の費用について解説
「相続税の支払いのために、先祖代々所有してきた土地を売却した」といったエピソードを聞かれたことのある方はいるのではないでしょうか。
また、将来的な不動産相続時に発生する相続税に関して、不安をお持ちの方もいるはずです。
今回は、相続税に関する基礎知識を解説し、その対策についてまとめました。
相続税対策は、一朝一夕にできるものではありませんので、しっかり準備しておきましょう。
この記事の目次
土地には相続税がかかるのか?
そもそも、土地を相続した場合に、相続税はかかるのでしょうか。
ここで、相続税の対象となる財産とならない財産、また相続人に関しても確認しておきます。
相続税がかかる財産、かからない財産とは
相続税がかかる財産の種類は以下の通りです。
・金融資産…現金、預貯金、有価証券、公社債など
・不動産…土地、家屋
・動産…家具、貴金属、骨董品、自動車など
・各種権利…著作権、ゴルフ会員権、電話加入権など
・事業用財産…備品、商品、売掛金など
一方、墓石、仏壇・仏具、礼拝道具、一定金額までの生命保険金などは相続税がかからない相続財産です。
相続人の範囲とは
上記のような財産を相続できるのは「法定相続人」となり、被相続人の配偶者は必ず相続人になります。また、被相続人の血族は、優先順位が高い順に相続人になります。
相続人については、次項で詳しく解説しますので確認しておきましょう。
上記では相続する財産について紹介しましたが、借金のような債務も相続対象であるため、相続によって返済義務が生じます。財産の整理状況次第では、相続放棄という判断もあるでしょう。
土地の相続は誰に相続権があるのか
ここからは、相続する財産の中でも土地や建物を含めた不動産にクローズアップして解説していきます。
不動産の相続に関しては前述のように、被相続人の配偶者は必ず相続人になり、血族は以下の相続順位で被相続人の配偶者とともに相続人となります。
・第1順位…被相続人の子供
・第2順位…被相続人の直系尊属(父母・祖父母など)
・第3順位…被相続人の兄弟姉妹
血族は上記のような相続順位ですが、第2順位・第3順位は、それより上の順位の人がいない場合に相続人となることができます。なお、内縁関係の人は、相続人には含まれません。
また不動産の相続には、相続人で共有する方法と分割する方法があります。共有の場合は、複数の相続人名義で不動産を相続する方法です。一方、分割には「現物分割」「換価分割」「代償分割」の3つの方法があります。
現物分割…財産をそのまま各相続人に分配する方法
換価分割…財産を売却などで現金に換え、その現金を各相続人に分配する方法
代償分割…1人の相続人が財産を相続する代わりに、他の相続人にそれぞれの相続分に見合った金額を支払う方法
上記3つの分割方法を不動産に適用した場合、現物分割では「土地Aは配偶者、土地Bは長男」というように遺産を現物のまま分配します。換価分割では、不動産を売却して得た現金を各相続人に分配するということになります。そして、代償分割を不動産に適用した場合、不動産を1人の相続人が相続し、他の相続人にそれぞれの相続分に見合った金額を支払います。
上記いずれかの方法で相続方法を決めたら、全相続人が納得して相続方法を決めたという証明になる「遺産分割協議書」を残しておくとよいでしょう。遺産分割協議書とは、財産の分け方について相続人同士で話し合った記録であり、遺産相続の手続きで必要になります。
土地の相続税はいくらかかる?
具体的な相続税の金額に関して確認しましょう。
金額上限ごとの税率、控除額
相続税は、「相続税の速算表」を用いて計算され、法定相続分に応ずる取得金額ごとに異なった税率・控除額が適用されます。下記が取得金額ごとの税率・控除額です。
1,000万円以下 …税率10% 控除額-
3,000万円以下 …税率15% 控除額50万円
5,000万円以下 …税率20% 控除額200万円
1億円以下 …税率30% 控除額700万円
2億円以下 …税率40% 控除額1,700万円
3億円以下 …税率45% 控除額2,700万円
6億円以下 …税率50% 控除額4,200万円
6億円超 …税率55% 控除額7,200万円
※国税庁ホームページ:相続税の税率
土地・建物の相続税評価額の計算方法
相続税評価額とは、相続税を計算するときの基準となる課税価格であり、土地と建物の相続税評価額の計算方法は以下の通りです。
・土地
市街地など路線価のある地域は路線価方式で、路線価図にある1平方メートル単価(千円単位)に敷地面積をかけて計算します。また、路線価が付いていない場所は倍率方式で、固定資産税に各税務署に設定された一定の倍率をかけて計算します。
・建物
評価額は、固定資産税評価額と同じ金額です。
・賃貸物件
「固定資産評価額×借家権割合×賃貸割合」が評価減となり、建物の評価額(固定資産評価額)から、この評価減をさし引いた額が貸家評価額となります。
土地の相続税対策にはどのような方法があるか
多額の相続税が予想される場合、以下のような方法で事前の対策で節税をすることができます。
建物の建設で相続税評価額を下げる
相続財産に更地がある場合、その土地にアパートやマンションを建てることで貸家建付地となり、相続税評価額を下げられます。
貸家建付地の評価額は、以下の計算式で求めることができます。
貸家建付地評価額=更地(自用地)の評価額-更地(自用地)の評価額×借地権割合×借家割合×賃貸割合
例えば、更地の評価額を1億円、借地権割合を70%、借家権割合を30%、賃貸割合を100%(満室)とした場合を例に挙げると、以下のようになります。
貸家建付地評価額=1億円-(1億円×70%×30%×100%)=7,900万円
土地の分割・共有
相続税対策として、土地を購入して現金を減らし、相続人で共有財産(共有名義)にすることがあります。ただし、共有財産にしてしまうと、その不動産の売却や処分時にトラブルになりやすいので注意しましょう。
自己判断を避けてプロに相談するのが近道
相続税は、一旦申告した後で修正が必要になると膨大な手間がかかります。そのため、申請をする前には専門家にきちんと相談するのが賢明です。
調べるだけでは解決しないことも
ネット環境があれば、誰でもどんなことでも調べることができます。ただし、税金に関しては、解釈などが曖昧な表現になることがあり、情報を調べることだけで確実に解決できるものではありません。
専門家であれば節税対策も
税金の専門家は、知識だけでは解決しない事例に対応できるスキル・ノウハウを持っています。相続税対策に関しても、経験に基づいた心強いアドバイスをもらえるでしょう。
トラブル回避も
トラブルの元となりやすい土地の共有や分割についても相談でき、個々のケースに合わせた最善策を提示してもらえるはずですので、後々のトラブルが起こるリスクを大幅に減らせるでしょう。
相続税を理解して専門家の力を借りて節税対策を
相続税の課税対象、相続権、実際の相続税のかかり方、以上の相続税に関する基礎知識をまとめました。相続税の節税対策として具体的方法もご紹介しましたので、将来の相続税に備えておきましょう。
ただし、不動産や税金に関する事柄は個々の案件の条件ごとに判断が必要で、ネットや書籍で調べるだけでは解決が難しいものです。また、相続税対策には相応の準備期間も必要です。
相続税の対策をしっかり行いたい方は自己判断で行うのではなく、知識・経験が豊富でしっかりしたスキル・ノウハウを持った会社や、税理士といった専門家に相談をしましょう。
トラブル時やリスク回避のためには、弁護士の力を借りることも必要です。
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※本記事は、2019年4月以前時点の情報をもとに執筆しています。 マーケットの変化や、法律・制度の変更により状況が異なる場合があります
※記事中では一般的な事例や試算を取り上げています。個別の案件については、お気軽にお問い合わせください。