アパート経営・マンション経営の減価償却費の計算方法と活用方法
減価償却を活用すれば、収入があっても減税してもらえる可能性がありますので、減価償却の仕方を覚えて、上手に活用しましょう。
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この記事の目次
減価償却とは
建物には経年劣化というものがあり、新築時には価値の高い建物であっても、経年によって価値が下がってしまうことになります。
アパート経営・マンション経営では、物件の法定耐用年数を基準に、これを減価償却費として計上する必要があります。
税務上の所得計算では、その建物の減価部分を費用化する「減価償却費」を算入することが必要経費として認められています。
減価償却費は、まず構造や用途によって年数の定められている建物の建築費に応じて、毎年の経費に計上するというものです。
この減価償却費は、アパート経営・マンション経営による所得税を低減する上で、非常に重要なものとなることを覚えておきましょう。
定率法と定額法
減価償却費の計算方法には「定額法」と呼ばれるものと「定率法」と呼ばれるものがあります。
「定額法」とは、毎年一定額の償却費を計上するものです。
これに対して「定率法」は、毎年一定率の償却費を計上するため、返済当初の償却費が多くなり、年を経るに従い少なくなっていくという特徴があります。
最終的な償却費累計は同じになりますが、定率法を併用して早期に償却費を多くしておくと、当初の不動産所得を減少させることができ、他に多くの所得がある場合には、経営上有利に働くことになります。
「定額法」の場合、毎年の減価償却費の数値は同じですが「定率法」の場合は、初年度から徐々に減価償却費として計上できる額が下がって行きます。
例えば、2,000万円の物件だった場合、法定耐用年数が15年だとすると、定額法では償却率は6.7%で、減価償却費として134万円計上することになります。
同じ条件で定率法の場合は、初年度の償却率は16.7%で、減価償却費として334万円が計上できることになります。
関連リンク:減価償却の計算方法は?定額法・定率法の違いをわかりやすく解説!
付帯施設も定額法で
先述の通り、毎年一定の割合で減価償却費を計算する方法が「定率法」で、建物本体にはこの方法は使用できず、建物設備のみが対象となるものでした。
しかし、2016年4月1日以降にアパートやマンションを購入した場合、不動産の建物設備の償却方法は定額法に一本化されていますので注意しましょう。
また、もし2016年4月1日以前に購入したアパートなどの建物設備を定率法で計算する場合は、確定申告の際に届出書の提出が必要となることも知っておきましょう。
不動産の場合、減価償却の対象となるのは建物部分だけで土地は対象にならず、さらに建物部分は対象が本体(躯体)と建物設備(電気設備・給排水設備など)に分かれます。
建物の減価償却費は法定耐用年数に応じて計上され、建物の構造によって償却期間は異なります。各構造の法定耐用年数については後ほど説明するため省きますが、建物設備は電気設備・給排水設備などがあり、法定耐用年数は大体15年となっています。
減価償却費の計算方法
先述のように、現在の不動産の減価償却は定額法で計算し、減価償却費は「取得価格×償却率」で求めることができます。
償却率は法定耐用年数に応じて決められています。
例えば住宅用の場合は、木造だと22年(償却率0.046)、鉄筋コンクリート造だと47年(償却率0.022)、鉄骨造だと34年(償却率0.030)、となっています。
ただし、鉄骨造の場合は骨格材の厚さによっても変わってきますので注意しましょう。
新築物件の場合は、法定耐用年数によって決められた償却率をそのまま用いるため、減価償却費は以下のように算出できます。
・3億円の鉄筋コンクリート造の新築物件を取得した場合
減価償却費=3億円×0.022=660万円
そして中古物件の法定耐用年数は築年数によって決まるため、一般的に簡便法を使って算出します。
中古物件で法定耐用年数が残っている場合は、以下の計算式で算出できます。
法定耐用年数=(法定耐用年数-物件の経過年数)+物件の経過年数×20%
・築15年で3億円の鉄筋コンクリート造の中古物件を取得した場合
法定耐用年数=(47年-15年)+15年×20%=35年(償却率0.029)
減価償却費=3億円×0.029=870万円
となります。
また、中古物件で法定耐用年数が残っていない場合は、以下の計算式になります。
中古物件の償却年数=法定耐用年数×20%
なお、ここで償却年数が2年未満となる場合は2年となります。
・築年数が法定耐用年数を超えた築22年の木造3,000万円の物件を取得した場合
償却年数=22年×20%=4年(償却率は0.25)
減価償却費=3,000万円×0.25=750万円
となります。
鉄筋コンクリート造と木造とを比べてみると、1年に計上する減価償却費の割合は木造の方が大きいですが、償却期間で見ると鉄筋コンクリート造の方が長い期間計上できるという利点があります。
不動産投資の物件を選択する際には、建物の構造によって経費として計上できる金額に大きな違いがあることを知っておくことが大切です。
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減価償却費を大きくするメリットは?
アパート経営・マンション経営の場合、不動産所得は、給与所得などの他の所得と合わせて課税されることになっています。これを「総合課税」と呼びます。
累進課税により、所得が多いほど課税率が高くなるということですので、アパート経営・マンション経営以外に所得のある方は、単純に支払わなければならない所得税も高くなるということになります。
給与所得のあるサラリーマンがアパート経営・マンション経営を行っている場合は、専門でやっている方よりも課税率が高くなることは必至です。
そこで、定率法を併用することによって、給与所得のある償却期間の前半に減価償却費を多く必要経費として計上し、不動産所得を低く、または赤字報告することによって、給与所得と合算すれば、総所得金額が減少し、給与で源泉徴収された税金が還付されることとなります。
退職後には減価償却費を大きく計上する必要はありませんので、計上できる減価償却費が少なくても特に問題はありません。
つまり経営開始時の減価償却費を大きくすることには、多くの収入が得られているときに、支払うべき所得税を減らすことができる、というメリットがあるのです。
また、将来のビジョンとして、所有している物件を最終的には売却することを考える方もいるでしょう。
もし、個人事業主が物件を売却して売却益が出た場合には、譲渡所得税が発生します。
これは、以下の計算式で算出できます。
売却益=譲渡金額-譲渡費用-物件の簿価
物件の簿価とは評価金額から減価償却費を引いた金額を指します。売却した年の月割り減価償却費は売却益の計算に入れても、不動産所得の経費に入れても、どちらでもよいことになっています。
確定申告の処理次第で節税金額は大きく変わってきますから、税金を払い過ぎてしまわないよう注意が必要です。
減価償却費の上手な活用方法とは
先述のように、減価償却の対象は建物だけです。ということは、売買価格のうち建物の割合が高ければ、減価償却費も増え、物件所有期間は法定耐用年数が終わるまでその状態が続きます。
中古物件などの売買契約書に土地と建物の金額が総額で記載されている場合、合理的な方法で土地と建物の価格が算出します。代表的な方法が固定資産税の評価額で按分する方法です。
以下のように例を出して見てみましょう。
・5,000万円で物件を購入した場合
固定資産税評価額:土地建物3,500万円
土地建物の内訳:土地1,400万円、建物2,100万円
建物価格=5,000万円×60%(建物の固定資産税評価額2,100万円÷土地建物の固定資産
税評価額3,500万円)=3,000万円
となり、減価償却費はこの3,000万円から計算されてしまいます。
中古物件を購入する際には、売主と交渉して売買契約書に土地建物の総額ではなく、土地価格と建物価格に分けて記載してもらいましょう。そうすることで、購入後の減価償却費を事前に調整できます。
また、土地建物の売買契約では、基本的に交渉でまとまった総額が売買される不動産の時価となります。そのため、建物価格に関して売主としっかり話をする価値があります。
減価償却費は「お金が出ていかないのに発生する費用」であり、必要経費として計上すると課税対象の利益を圧縮する効果があります。
減価償却費を上手に活用して節税に役立てましょう。
減価償却費に関するQ&A
減価償却費に関してよくある疑問とその回答について、見ていきましょう。
⦁ 中古物件を大規模修繕した場合の減価償却費はどうなる?
中古物件を大規模修繕することは、その物件の資産価値を高めることになります。
そのため、大規模修繕にかかった費用は修繕費ではなく資本的支出となり、資産の一部とみなされますので、減価償却費として処理することができます。
⦁ 建物は、躯体も設備も併せて減価償却が可能か?
建物の躯体と設備は、減価償却することが可能ですが、ここで大切なのは躯体と設備を分けて減価償却することです。
躯体と設備を分けて減価償却することで償却期間を短縮することができ、節税の効果を得ることができます。
減価償却は不動産投資の収益において重要なポイントとなる
減価償却費はお金の支出を伴わない経費であり、節税と密接に結びつき不動産投資の収益を大きく左右します。アパート・マンションなど賃貸物件で不動産投資をお考えのオーナー様は、まずは法定耐用年数と償却率の基本を把握していただくことが第一です。
その上で確定申告の際に減価償却費を計上することの意味をご理解いただければ、不動産投資における減価償却費が、いかに投資の成功の鍵を握るかを認識いただけるでしょう。
新築物件で長期間の節税効果を狙うか、中古物件を選択して短期間で一気に節税効果を求めるかは、どちらが正解というものではありません。選択肢によってキャッシュフローも含めて事業計画は大きく違ったものになります。
オーナー様の不動産投資に対するお考えや、将来的な運営をどのように描いくかも大切なポイントです。
※写真はイメージです
※本記事は、2018年9月以前時点の情報をもとに執筆しています。 マーケットの変化や、法律・制度の変更により状況が異なる場合があります
※記事中では一般的な事例や試算を取り上げています。個別の案件については、お気軽にお問い合わせください。
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