アパート経営の基本を徹底解説!メリット・デメリットや初期費用、経営開始までの流れも紹介
オーナー様のなかには、所有する土地を活用してアパート経営をしてみたいと考えている方もいるかもしれません。検討にあたっては、マンション経営との違いやメリット、リスクがどのような点にあるのか気になることでしょう。
アパート経営には、マンション経営とは異なる特徴があります。経営を軌道に乗せるには、特有のリスクへの対策を理解して、それに備えられるようにすることが大切です。
この記事では、アパート経営とマンション経営の違い、アパート経営のメリットとリスク・対策案について解説します。アパート経営に失敗しないためのポイント、税金にまつわることなど網羅的に紹介します。
この記事の目次
アパート経営とは?どんな特徴がある?
最初に、アパート経営とはどのような性質を持つ賃貸経営なのか紹介するとともに、マンション経営や株式投資との違いを解説します。また、アパート経営に向いている人の特徴も具体的に紹介します。
アパート経営は、基本的に建物一棟を取り扱う経営の仕方です。これを知ると「一般の人ではなかなか難しいのではないか」という印象があるかもしれません。
しかし、その内容にも様々なケースやプランがありますので、一概に「難しいものである」とは限りません。方法によっては、不動産投資を検討している人なら誰でも視野に入れて考えられる不動産投資方法とも言えるでしょう。
日本国内でも、アパートを一棟だけでなく複数棟所有し、億単位の不動産を資産として保有する方もいます。
最初は簡単な方法から始め、十分な収入や資金が得られるようになってきたら、アパート経営を考えてみる、というのも一つの方法です。
アパート経営とマンション経営の違いとは?
アパート経営はアパート一棟を取り扱う賃貸経営の手法です。これに対し、マンション経営は区分所有と一棟経営に分けられます。区分所有は、マンションの一戸ないしは複数戸、一棟経営ではマンション一棟丸ごとを投資対象とします。
アパートとマンションの区別に明確な定義はありませんが、次のように使い分けされるのが一般的です。
- マンション:鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)などで3階建て以上の共同住宅
- アパート:木造、軽量鉄骨造などで2~3階建ての共同住宅
同じ一棟経営の場合、マンションに比べてアパートは物件が小規模なのが特徴です。
関連記事はこちら:「アパート経営の節税の仕組みと効果・経費計上する際のポイントについても解説」
アパート経営と株式投資の違いは?
代表的な投資手法には株式投資が挙げられますが、アパート経営とはどのような違いがあるのでしょうか。両者の違いとしては大きく3点が挙げられます。
1点目は、メインで得られる収入の種類の違いです。株式投資でメインの収入となるのは、株式の売却益によるキャピタルゲイン。一方、アパート経営でメインの収入となるのは、家賃収入によるインカムゲインです。
ただし、株式投資でも配当金はインカムゲイン、アパート経営における物件売却益はキャピタルゲインにあたります。
2点目は、投資においてレバレッジを前提とするか否かという点です。レバレッジとは「てこの原理」を指し、借り入れたお金を投資に回してリターンを大きくすることを指します。アパート経営は資金を借り入れて始めるのが前提です。そのため、少ない自己資金で大きなインカムゲインが期待できるでしょう。一方、株式投資は自己資金の範囲内での投資が前提となります。
3点目は、投資期間中の関わり方の違いです。株式投資は、売買のタイミングを見計らいながら株式を保有していればよいのに対して、アパート経営は賃貸経営のため、ただ見守っているだけでは成り立ちません。物件管理を継続的に行いながら、物件の価値や魅力を維持しなければならない点が特徴です。
裏を返せば、アパート経営では物件の状態や管理を改善することで魅力度を上げると、収益を改善できる可能性があるともいえます。株式はあくまでも保有のみなので、投資家が主体的に価値を上げることはできません。
アパート経営に向いている人とは?
マンション経営や株式投資との違いを踏まえ、アパート経営に向いていると考えられるのは「土地を所有している人」と「相続税対策が必要な人」です。
土地を所有している人がアパート経営に向いているのは、その土地が収益物件となって継続的な家賃収入が得られるからです。活用できていない土地を所有していると固定資産税・都市計画税を毎年納めなければならず、収入はマイナスになってしまいます。
アパートを建てて収益物件化すれば、家賃収入によりキャッシュフローをプラスにできます。また、更地にアパートを建てると固定資産税が最大で1/6、都市計画税が最大で1/3に軽減される「住宅用地の特例(詳細後述)」が適用されます。節税にもつながるため、土地を所有している人にはアパート経営がおすすめです。
また、相続税対策が必要な人にとって、アパート経営は土地にかかる相続税を節税できる点で適しています。このあとの章でも紹介しますが、賃貸物件の相続税評価額の算出においては、借地権割合・借家権割合が考慮されるためです。それに加え、相続する土地の評価額が最大で80%減額される小規模宅地等の特例(詳細後述)により、大幅な節税効果が期待できます。
このように、賃貸物件の相続税評価額は基本的に時価よりも低くなるため、額面どおりの評価額となる現金、預貯金、有価証券などの金融資産に比べて、相続税額を抑えられるのもポイントです。
さらに、継続的な家賃収入を得られるので、アパートは優良な相続財産と言えるでしょう。
アパート経営の5つのメリット
アパート経営には、以下5つのメリットがあります。
- 安定した家賃収入が期待できる
- 土地にかかる固定資産税や相続税を節税できる
- 物件を建築しやすい
- レバレッジ効果を得られる
- インフレに強い
この章では、それぞれのメリットについて詳しく見ていきます。
安定した家賃収入が期待できる
アパート経営のメリットのなかでも特に大きなメリットとして挙げられるのは、安定した家賃収入が期待できることです。物件に高い客付け力があれば、中長期にわたって入居者から継続的に家賃収入が入ってきます。
区分所有のマンション経営や、戸建て住宅を用いた投資では、空室が発生すると収入が大きく減少してしまいます。一戸しか所有していなければ、空室の発生と同時に収入がゼロになってしまうリスクもあるでしょう。
アパート経営は一棟経営のため、空室が発生した場合にも、収入がゼロになるわけではありません。空室率によって家賃収入は上下するものの、区分マンションや戸建て住宅への投資に比べれば家賃収入は安定しています。
土地にかかる固定資産税や相続税を節税できる
先ほど少し触れたとおり、所有する土地の固定資産税や相続税を節税できる点もアパート経営の大きなメリットです。
アパート経営で土地の固定資産税が節税できるのは「住宅用地の特例」が適用されるためです。この特例では、住宅用地のうち一戸あたり200平方メートルまでの部分(小規模住宅用地)について、課税標準額が1/6に減額されます。
たとえば、15戸からなるアパートの場合、一戸あたり200平方メートル×15戸=3,000平方メートルまでの土地に住宅用地の特例が適用されるのです。
相続税にも同じような特例があり、「小規模宅地等の特例」と呼ばれます。特例の適用により、アパートが建築されている宅地は200平方メートルを限度として、相続税の課税価格が50%減額されます。
加えて、相続税額算出のベースとなる相続税評価額の計算にあたって、賃貸物件を相続すると借地権・借家権の割合分の評価額を差し引ける点もポイントです。借家権割合は建物だけでなく土地の相続税評価額にも適用されるため、大きな節税効果を期待できます。
物件を建築しやすい
アパートはマンションに比べて物件規模が小さいため、全体的な建築費を抑えられます。マンション経営よりも少ない初期費用でスタートできるのも、アパート経営のメリットと言えます。
アパートは、用途地域をはじめとした、都市計画法や建築基準法などによる建築規制を受けにくいのも特徴です。高層建築物を建てられない住居系の用途地域でも、アパートなら検討できるケースも考えられるでしょう。
ただし、商業系地域をはじめとした防火地域・準防火地域に指定されたエリアでは、建物に耐火構造が求められるため、基本的に耐火建築物または準耐火建築物でないと建築ができません。アパートに多い木造建築の場合、費用をかけて必要な設備を整えることにより耐火建築物の認定を受けられます。
RC造であればもともと耐火性能を備えているので、特に追加で費用や手間をかける必要はありません。一方、木造では、費用をかけて必要な設備を整えたうえで耐火建築物の認定を受ける必要があります。
レバレッジ効果を得られる
アパート経営には、大きなレバレッジ効果を期待できます。レバレッジ効果とは、少ない資金でその何倍もの大きな利益を得ることです。アパート経営では不動産という現物があるため、金融機関からお金を借りられるメリットがあります。
物件の購入・建築資金の大部分で銀行融資を活用できれば、投入する自己資金を抑えつつ大きなリターンを期待できます。
インフレに強い
経済変動の影響を受けにくい点も、アパート経営で資産形成を行ううえでのメリットです。
物価が上がるインフレ時には実質的にお金の価値が下がります。現金・預貯金の価値が減少するリスクを避けるためにも、現物資産への投資が選択肢となります。中でも、居住用の賃貸物件は、景気による需要の変化が少ない傾向にあり、物価の上昇にともなって家賃が値上がりすれば、アパートの価値も高まります。そのため、投資目的でアパート経営を行うメリットは大きいといえるでしょう。
アパート経営における10個のリスクと対応策
安定的な家賃収入や節税効果などのメリットが期待できるアパート経営ですが、次に挙げる10個のリスクがあることも認識しておかなければなりません。
- 災害リスク
- マンションに比べて高い空室リスク
- 入居者による家賃滞納リスク
- 経年による家賃下落リスク
- 入居者トラブル発生のリスク
- 建物老朽化リスク
- 立地によるリスク
- 将来の金利上昇リスク
- サブリース契約にまつわるリスク
- 融資返済リスク
各リスクの内容と対応策を解説します。
災害リスク
築年数の古い木造や鉄骨造のアパートの場合は、火災が発生すると、鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションと比べて全焼する可能性が高くなります。そのため、火災保険の加入は忘れずに行いましょう。
ただ、新築物件や建築後日が浅い物件に関しては、厳しくなった防火基準を通っており、火が一気に回らない構造となっています。そのため、避難するまでに十分な時間は確保できるでしょう。
また、1981年以前に建築された物件は、現在の耐震基準とは違う古い耐震基準で造られています。そのため、万が一の事態に備えて避難方法・避難経路などは普段からしっかり準備しておきましょう。
1981年以降の改正された耐震基準で建てられた物件は、地震にも強いと言われています。特に、2×4工法を採用した建物は建物全体で揺れを受け止めて分散させるので、地震に強い構造となっています。
マンションに比べて高い空室リスク
アパートはマンションと比べると、一般的に空室率が高いと言われています。というのも、マンションは建材的に高層化が可能なので、駅前などの利便性の高い土地に建築される傾向があり、立地が理由で空室が発生しにくいのです。
一方でアパートは低層建築、ローコストで建てられるので、郊外でも採算が合います。そのため、駅近くの交通至便な物件と比較すると、立地の関係で空室が出やすくなります。
アパート経営を成功させるためには、事前に周辺をしっかりリサーチして、ターゲットのニーズをきちんと見極めることが重要になります。また、周辺状況に応じて、臨機応変に家賃を見直すことも大切です。
関連記事はこちら:「アパート経営のリスク」
入居者による家賃滞納リスク
家賃を滞納する入居者がいると、滞納期間中の家賃収入がなくなるだけでなく、新たな入居者の募集もできません。一般的には、3ヵ月以上の滞納がないと、貸主側から契約解除することはできないという前提があります。
賃貸借契約において適用される借地借家法は、借りる人の権利を保護する目的で定められているため、そもそも入居者に立ち退きをさせることは容易ではありません。
家賃滞納によるリスクを回避するには、入居時に十分な敷金を納めてもらうのが効果的です。併せて、入居者に家賃保証会社へ加入してもらえば、滞納時の逸失収入をカバーできます。
経年による家賃下落リスク
当然のことながら建物は経年劣化していくため、通常アパートの家賃は新築時が一番高く、築年数が経過するごとに下落していく傾向にあります。物件としての競争力も落ちていくので、近隣に新築物件が建築されると、従来の家賃では入居者の確保が難しくなることもあるでしょう。
経年による家賃下落は避けられないものと考え、将来的な家賃下落も考慮に入れた資金計画が求められます。また、家賃下落を抑えるには、長期的な管理やメンテナンスの計画も欠かせません。計画を立てるだけでなく、その計画を将来にわたって遂行できるだけの安定した経営基盤や資金力のある管理会社を選定することも重要です。
入居者トラブル発生のリスク
入居者のなかにマナーの悪い人がいると、入居者同士のトラブルに発展するリスクがあります。よくあるトラブル要因としては、入居者の発する騒音、ゴミの出し方、部屋に放置されたゴミによる悪臭、ペット不可物件におけるペット飼育などが挙げられます。
トラブルが原因で他の入居者が退去してしまったり、新たな入居者を確保しづらくなってしまったりするかもしれません。
入居者トラブルを防ぐためには、ルールの守れない人が入居しないよう、事前にチェックする必要があります。委託先の管理会社に厳正な入居者審査を行ってもらうことが有効な対策です。
建物老朽化リスク
築年数が長くなると家賃が下落するだけでなく、建物の躯体や住宅設備も老朽化します。物件の価値や魅力を維持するためには、修繕やリフォームを行わなければならず、大きなコストがかかるでしょう。築古物件では、突発的な修繕対応が発生するリスクも高まります。
資金計画を立てる際には、定期的な大規模修繕費用だけでなく、突発的な不具合への対応コストも予備として見込んでおきましょう。また、経年による空室リスクを低減するために、計画的なリフォームや居室内のフルリノベーションなども欠かせません。
立地によるリスク
のちほど詳しく解説しますが、アパート経営においてターゲット選定は大切な要素です。ただし、ターゲットによっては、立地に関するリスクが大きくなる可能性があることに注意しましょう。
たとえば、近隣にある大学の学生や会社に勤める社会人などをターゲットにしている場合、ターゲットの通う大学や工場が移転してしまった途端に、賃貸ニーズが急激に低下するおそれがあります。
ターゲットとして重視する施設がある場合には、その施設に関する情報を事前によくリサーチしておきましょう。施設の動向に経営を左右されるというリスクの高さを認識し、アパート経営以外の活用方法も並行して検討したいところです。
将来の金利上昇リスク
日銀のマイナス金利政策が終了し、十数年続いた超低金利時代は終わりを迎えました。そのため、将来的に金利が上昇すると予想されます。超低金利を前提として変動金利型で融資を受ける場合、将来、金利上昇により月々の返済額が増加し、想定していたよりもキャッシュフローが悪化してしまうリスクがあります。
金利に関する様々な予測は存在しますが、結局のところどうなるかは誰にもわかりません。金利上昇リスクを重視する人は、固定金利型での融資や、自己資金の比率引き上げを検討するのがおすすめです。
サブリース契約にまつわるリスク
アパート経営におけるサブリース契約とは、オーナー様とサブリース会社の間で一括借上げする賃貸借契約を締結し、毎月固定家賃をオーナー様へ支払う契約形態を指します。
サブリース契約は、ニーズが安定している都市部の物件であれば、オーナー様が管理の手間をかけることなく一定の収入を得られるため、おすすめの契約形態です。
一方で、駅から遠いなど、賃貸ニーズが不安定な立地の物件においてサブリースを勧められた場合、サブリース会社側から将来、減額請求されるケースもあるため注意が必要です。
こうした会社は、オーナー様自身が賃貸ニーズを見込めないと考えている立地の悪い物件について、「サブリースで家賃を保証する」といってアパート建築の契約を迫るケースがあります。立地が悪い場合、サブリースであるかどうかに限らず、アパート経営は厳しいと考えましょう。
サブリース契約を締結する際は、賃貸ニーズが十分に見込めるか検証するとともに、事前に契約内容をしっかりとチェックするよう心がけましょう。
融資返済リスク
これまで紹介してきたリスクによってキャッシュフローがマイナスになると、融資返済が滞ってしまうリスクがあります。キャッシュフローの良し悪しに関係なく、融資は毎月返済しなければなりません。
一時的に家賃収入が減少したり、必要経費が増大したりしたとしても返済に窮しないよう、余裕を持った資金計画を立てましょう。
アパート経営が儲からないと言われるのはなぜ?
「アパート経営が儲からない」と聞いたことがある方も多いでしょう。たしかに、アパート経営にはメリットもあればリスクもあります。「アパート経営が儲からない」と言われる理由として挙げられる点は以下のとおりです。
- 投資資金の回収に時間がかかる
- 経営に向いていない土地にマンション・アパートを建てている
- 多額のローンが負担になる
逆に言えば、これらを理解して適切な対策を講じることで、アパート経営の成功確率は高まります。
アパート経営をしないほうが良い人の特徴
「アパート経営に失敗しやすい人」や「アパート経営に向いていない人」の特徴として挙げられるのは、以下の2点です。
- 表面利回りの高さだけを重視する人
- すぐに収入を得たい人
アパート経営において利回りを意識するのは大事ですが、表面利回りだけを見ていてはいけません。アパート経営では必要経費をしっかり計算に入れておく必要があります。これらを考慮できない場合、アパート経営を成功させるのは難しいでしょう。
また、すぐに利益を出そうと考えている人も、アパート経営は向いていないといえるでしょう。例えば、建築をする場合は、建築期間は収入が発生しません。そのあとも入居者の募集などがあり、実際に家賃収入を得られるまでにはタイムラグが発生します。収支を考える際は、月単位ではなく、数十年という長期スパンで考える必要があります。
アパート経営に失敗しないための事前準備5選
アパート経営に失敗しないためには、しっかりとした事前準備が大切です。ここでは以下5つのポイントを紹介します。
- アパート経営の目的と目標を定める
- ターゲットとなる入居者像を決める
- しっかりとした資金計画を立てる
- 賃貸経営に関わる知識を勉強する
- 相続前提の場合は関係者としっかり話し合いをしておく
これらの事前準備を一人ですべて考えるには限界があるため、パートナーとなる建築会社や管理会社と相談しながら進めることをおすすめします。万全な準備を整えたうえでアパート経営に臨めば、成功できる確率を上げられるでしょう。
アパート経営の目的と目標を定める
アパート経営を成功させるには、自分がアパート経営を行う目的を明確にすることが何よりも重要です。その目的によって、目指すべき方向性や達成すべき目標が変わってきます。
アパート経営の目的例としては、次のようなものが挙げられるでしょう。
- 相続税対策のため
- 所有する土地の固定資産税節税のため
- 公的年金の上乗せとなる老後資金を得るため
目的を明確化できたら、それを達成するために必要な目標数値を定めます。自ら決めた目的と目標を指標にしたアパート経営を心がければ、大きな失敗を回避できる可能性が高まるでしょう。
ターゲットとなる入居者像を決める
アパート経営における収入の柱は、入居者からの家賃収入です。アパート経営を成功させるには、入居率を常に高い状態でキープし、家賃収入を安定的に得られるようにしなければなりません。
入居率を高めるために必要なのは、ターゲットを明確にすることです。所有する土地周辺の賃貸ニーズをリサーチして、単身者やファミリーなど、入居してくれそうなターゲットを設定します。ターゲットが定まれば間取りや必要設備が決まるため、ターゲット設定は資金計画を立てるにあたっての基礎となります。
しっかりとした資金計画を立てる
アパート経営において、ずさんな資金計画は危険です。キャッシュフローがマイナスになれば、アパート経営に行き詰まってしまいます。
入居者が入れ替わるアパートにおいて、常に満室稼働というのは考えにくいでしょう。また、築年数が経過すれば、設備や建物の修繕、リフォームも検討しなければなりません。空室率や将来かかる修繕費などを考慮に入れ、適度に安全な資金計画を立てることが重要です。
その他、自己資金投入の有無と金額、投資回収年数の設定も確認しましょう。融資を活用する場合には、金融機関へ事前に相談し、融資可能額の目処をつけておくことも必要です。
賃貸経営に関わる知識を勉強する
アパート経営の本質は賃貸経営です。賃貸経営にまつわる知識が不十分なまま取り組んでしまうと、たとえ投資に関する知識があったとしても、アパート経営に失敗するリスクがあります。アパート経営を検討するのであれば、賃貸経営に関する知識を勉強しておくようにしましょう。
特に、支出や税金に関する知識は重要です。これらの知識を深めておくと、賃貸経営の肝である資金計画を立てる際にも有利になります。
相続前提の場合は関係者としっかり話し合いをしておく
アパート経営は長期にわたるため、その間に相続が起こるケースも少なくありません。相続を前提としている場合は、相続の際の後継者や承継資産の整理、引き継ぎ方法の確認などについて関係者でしっかり話し合っておきましょう。加えて、遺言書を作成しておくといった対策も必要です。
これらの相続対策がしっかりとなされていれば、相続発生時にトラブルが起こる確率を下げ、事業継承を円滑に進めやすくなるでしょう。
アパート経営に必要な資金と内訳
アパート経営を行うにあたっては、初期費用や維持費用が必要です。ここでは、アパート経営で見込むべき資金の種類と内訳を紹介します。
アパート建築費
アパート経営の初期費用のなかで大きな割合を占めるのが、アパートの建築費です。建物構造によって建築費は異なり、建物構造ごとの単価目安は次のようになっています。
アパートの建物構造 | 建築費の坪単価目安 |
---|---|
木造 | 坪60万~90万円程度 |
鉄骨造 | 坪90万~140万円程度 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 坪90万~150万円程度 |
アパート建築費以外にかかる初期費用
アパート経営では、建物の建築費以外にも初期費用として多くの費用がかかります。おもな費用項目を見ていきましょう。
登記費用 |
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不動産取得税 |
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印紙税 |
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融資関連費用 |
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保険料 |
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アパート経営中にかかる維持費用
アパート経営を実際にスタートすると、継続的に維持費用がかかります。維持費用の項目としては次のようなものが挙げられます。
管理費 |
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修繕費 |
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融資の利息支払い |
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税金(所得税・住民税、固定資産税・都市計画税) |
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原状回復費 |
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保険料 |
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事業収支が厳しい場合は自己資金の用意も検討
アパート経営の費用において、全額融資を活用する「フルローン」を検討しているオーナー様も多いかもしれませんが、融資契約時に一時金が必要になるケースもあります。そのため、フルローンであっても、多少の自己資金を手元に用意しておくと安心です。
また、自己資金の割合を増やすと融資額を減らせるので、返済にかかる費用を抑えることが可能です。フルローンで事業収支が厳しい場合には、自己資金の投入も検討しましょう。
ただし、無理に自己資金を捻出すると、経済的負担が重くなるリスクもあるため、資金計画と自分の経済状況をベースにした検討が大切です。
アパートの建築完了までの流れと期間
アパートの建築完了までの流れは以下のとおりです。
- 資金計画を練る
- 建築会社を決める
- 建築プラン作成
- 工事請負契約~建築申請~着工
- 竣工・引き渡し
アパート建築にかかる期間は、建物構造によって異なります。一般的な木造アパートであれば、建築期間は3~7ヵ月程度が目安です。鉄骨造の場合は木造+1ヵ月程度、鉄筋コンクリート造(RC造)なら、階数+3~4ヵ月程度(2階建てなら5~6ヵ月程度)は見ておきたいところです。
上記はあくまでも目安であり、土地の状況や工事条件などによって必要な期間は変動します。また、工事期間とは別に、建物の設計期間を見込む必要があるほか、既存建物がある場合には解体期間がかかる点も注意しましょう。
建設会社の選び方
アパート経営にかかる初期費用において大きな割合を占めるのが、アパートの建築費です。どういった建設会社に依頼するかによって、コストや建物のグレードが大きく異なります。ここでは、建設会社を選ぶ際のポイントを解説します。
建設会社の種類ごとの特徴を踏まえて選ぶ
建設会社と一口に言っても様々な種類があり、それぞれに特徴が異なります。どの種類が良い・悪いということではなく、オーナー様のスタンスに合ったタイプの会社を選ぶのがおすすめです。下表で、おもな建設会社の種類と特徴を見てみましょう。
建設会社の種類 | 特徴 |
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賃貸マンションを得意とする建築会社 |
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工務店 |
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ハウスメーカー |
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設計会社 |
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建築コストとグレードのバランスで選ぶ
初期費用を抑えようと考えるあまり、建築費の安さだけで建設会社を選ぶ方もいるかもしれませんが、それは危険です。建築費を抑えて建物のグレードを妥協した結果、入居者が確保しづらくなったり、将来のメンテナンス費用が膨らんだりして、長期的に見ると全体のコストが高くなることもあるでしょう。
アパート建築を依頼する会社を選ぶ際には、建築コストと建物のグレードのバランスを考慮することが重要です。
50年以上にわたり土地活用に携わってきた生和グループでは、こだわりの設計・施工と優れた技術力で、オーナー様の希望を実現できます。所有する土地をアパート経営で活用したいと考えているオーナー様は、ぜひお気軽にご相談ください。
関連リンク:生和コーポレーション
アパート経営をスタートするまでの基本の流れ3ステップ
建物建築後、アパート経営を実際に開始する際は以下の3ステップを踏みます。
ステップ1. 入居者の募集条件を決める
ステップ2. 管理内容を決めて管理会社と契約する
ステップ3. 資金計画に問題がないか再度チェックする
順番に解説していきます。
ステップ1:入居者の募集条件を決める
まず、入居者の募集条件を決めましょう。
その際、エリアニーズを踏まえた現実的な条件を設定するよう心がけましょう。併せて、ペット飼育や同居の不可など、入居にあたっての禁止事項なども定めます。
サブリースの場合にはサブリース賃料を決定するため、各部屋の賃料を設定しておかなければなりません。そのため、ステップ2のサブリース契約交渉時に諸条件が決定する流れとなります。
募集条件によって、入居者が集まるかどうかが決まると言っても過言ではないため、パートナーの管理会社と相談しながら決定しましょう。
ステップ2:管理内容を決めて管理会社と契約する
繰り返しになりますが、アパート経営は賃貸経営であり、適切な維持管理を継続的に行うことが重要です。経営を始める準備として、どのような管理をするのか決めなくてはいけません。
しかし、アパート経営における維持管理業務は多岐にわたり、すべて自主管理でまかなうには大きな手間がかかります。そのため、大まかな管理方針を決めたら、ノウハウが豊富な管理会社と契約し、管理内容の詳細を詰めていくとよいでしょう。
管理会社によるアパートの管理形態は、大きく次の3つに分けられます。
管理委託 |
|
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サブリース | パススルー型 |
|
家賃保証型 |
|
なお、生和コーポレーションは、アパート管理のノウハウも豊富です。物件の維持管理から、入居者募集・仲介に至るまで、一貫してオーナー様をサポートします。管理会社を検討されているオーナー様は生和コーポレーションにぜひご相談ください。
関連リンク:生和の賃貸仲介
ステップ3:資金計画に問題がないか再度チェックする
管理内容や募集条件を想定し、当初の資金計画に問題がないかを再度チェックします。資金計画に課題が見つかるようであれば、必要に応じて資金計画を見直しましょう。
「実際に経営を始めたらキャッシュフローがマイナスになってしまった」といったことにならないよう、一定のバッファを考慮した資金計画を立てることが重要です。
アパート経営でかかる税金と確定申告のポイント
アパート経営を行うにあたっては、税金についての理解を深めることも重要です。アパート経営に関連して納めなければならない税金の種類や、税額の計算方法を解説します。
家賃収入の税金について
家賃収入に対しては、所得税と住民税が課されます。家賃収入そのものが課税対象となるのではなく、家賃収入からアパート経営にかかった経費を差し引いた「不動産所得」に対して課税されるのがポイントです。
また、所得控除や税額控除が適用される場合、控除後の金額が所得税の納税額となります。
【不動産所得における所得税の計算方法】
家賃収入 - 経費 = 不動産所得金額
不動産所得金額 - 所得控除 = 課税不動産所得金額
課税不動産所得金額 × 所定の税率 = 所得税額
所得税額 - 税額控除 = 実際に納付する所得税額
所得税は累進課税のため、オーナー様の所得が高くなるほど税率も高くなります。所得税の税率は5~45%と、課税所得金額に応じて7段階に分けられています。
住民税は、所得割と均等割に分けられます。所得割の税率は、住んでいる地域の自治体によって異なるものの、課税所得金額に対して原則10%です。そして、均等割は住民税対象者に一律で割り当てられる税額で、年額4,000円(2014~2024年分は5,000円)です。
家賃収入のみであれば消費税は非課税のため、インボイス制度への対応は不要です。ただし、駐車場収入など、居住用以外での賃料収入があり、その収入部分が、課税期間の基準期間(※1)における課税売上高1,000万円を超えると、課税期間に消費税納付義務が生じます。基準期間での課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間(※2)での課税売上高が1,000万円を超えた場合には、課税期間に消費税納付義務が生じます。
なお、不動産所得は他の所得と損益通算が可能です。損益通算とは、同じ年の利益と損失を相殺できる仕組みのことで、アパート経営での赤字を計上すると、他の黒字の所得から損失分を差し引くことができます。それにより所得税の節税につながる点も、押さえておきましょう。
- ※1:個人事業者の場合、その年の前々年(課税期間が2024年だと基準期間は2022年)
- ※2:個人事業者の場合、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間(課税期間が2024年だと特定期間は2023年1月1日から6月30日)
関連記事はこちら:「家賃収入にかかる税金とは。その種類と計算方法を解説|家賃収入と不動産所得の違いについてもご紹介」
関連ページ:アパート経営における経費の範囲と節税のポイント
不動産にかかる税金について
ここでは、アパート経営のフェーズごとにかかる税金の種類と、税率・税額を見ていきましょう。
経営フェーズ | 税金の種類 | 税率・税額 |
アパート建築時 | 消費税 | 建築費に対して10% |
不動産取得税 | 建物の固定資産税評価額×3%
※本則は4%、2027年3月31まで軽減税率3% |
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印紙税 |
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登録免許税 |
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固定資産税 | 課税標準額 × 1.4%
※住宅用地については軽減措置あり ※税率は自治体によって異なる場合あり |
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都市計画税 | 課税標準額 × 0.3%
※住宅用地については軽減措置あり ※税率は自治体によって異なる場合あり |
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所得税 | 課税所得金額に応じて5~45%の7段階 | |
住民税 | 所得割:課税所得金額に対して原則10%
均等割:年額4,000円(2014~2024年分は5,000円) |
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アパート売却時 | 譲渡所得税 (所得税・住民税) |
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確定申告について
不動産所得に対して課税される所得税、住民税、事業税は、確定申告を行って納める必要があります。
事業税とは、アパート経営が一定の事業規模を持つと判断された場合に課せられる税金です。アパートの場合、おおむね10室以上賃貸しているケースでは事業規模と判断され、事業税の課税対象となります。
確定申告は、毎年1月1日~12月31日の1年間に発生した所得について、翌年2月16日~3月15日に行う必要があります。
確定申告の申告方法は、白色申告と青色申告の2種類です。白色申告は申請手続きが不要で、簡易簿記の帳簿のみで申請できます。青色申告は事前に「青色申告承認申請書」「開業届」の提出が求められ、複式簿記の帳簿が義務づけられています。
青色申告は白色申告に比べて手間がかかるものの、最大65万円の特別控除などの優遇措置が受けられる点は大きなメリットです。
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事前の税務相談が大切
ここまで見てきたとおり、アパート経営には多くの税金が絡んできます。アパート経営を検討する際には、相続や将来の資産組み換え、税金対策などを見据えた計画が必要となるでしょう。
税金に関することは専門的な分野ゆえに、オーナー様個人だけで考えるのは難しいものです。事前に税理士などの専門家に相談しておくことも大切です。
アパート経営の5つのメリット
0アパート経営の成功に向けては、自分に合った管理方法を選ぶことが重要です。アパートの管理方法はおもに、サブリース・管理委託・自主管理の3種類に分けられます。
サブリースは、サブリース会社に入居者との契約や管理業務をすべて代行してもらう方法です。管理業務を一任できるため、3種類の管理方法のなかで最も手間がかかりません。
サブリース会社が物件を一括して借上げる仕組みになっているため、空室状況に関わらず一定の家賃収入を得られる点もメリットです。
最もポピュラーなのが、管理会社に管理を委託する方法です。専門的な知識が必要な管理業務を代わりに行ってくれるため、他に本業がある場合や管理業務に時間を割けない場合でも安心してアパート経営ができます。
管理業務をすべて自分で行うのが自主管理です。管理費用を抑えられるのがメリットですが、クレームやトラブルには自ら対応しなければなりません。また、適切な管理をするためには、それなりの経験やノウハウが必要になります。
これらの管理方法のメリット・デメリットを踏まえると、信頼できる管理会社に依頼し、管理委託かサブリースから自分と物件に合ったものを選ぶという選択が最適解と言えるでしょう。
アパート経営の5つのメリット
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アパート経営の5つのメリット
2アパート経営には、安定収入を得られる・節税対策になる・景気変動に強いなどの大きなメリットがありますが、空室リスクや災害リスク、融資返済リスクなどの様々なリスクも存在します。そのため、「アパート経営は儲からない」と言われることもあります。しかし、これらのリスクは、アパート経営の目的の決定・的確な入居者像の決定・現実的な資金計画・賃貸経営の勉強など、事前準備を行うことによって回避できます。
さらに、アパートを建築する建設会社や、税金に関する相談ができる専門家の選定など、アパート経営にはあらゆる選択が必要です。
本記事で解説した内容を参考に、ご自身のビジョンに合ったより良い選択を行い、アパート経営の成功率を上げましょう。
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