アパート経営の新築と中古の違い
一口にアパート経営を始めると言っても、そのためにはさまざまな条件を比較検討する必要があります。たとえば新築にするか、中古にするかということも経営の成否を左右する重要な要素の一つです。
しかも、新築の方がいい場合もあれば、中古の方がいい場合もあるため、簡単な問題ではありません。
そこで今回は、アパート経営の新築と中古の違いについて解説します。
この記事の目次
中古アパートのメリット
・初期投資金額
一般的に新築物件と比べて建物の価値の違いにより、初期投資金額を抑えることができます。建築費用も不要です。土地の価値は新築の場合でも変わらないので、基本的に金額の差異は建物分の違いと言えるでしょう。
・利回り
購入金額が安い上、家賃も安定していることが多いため、物件が極端に古くなければ、同じ住環境の新築アパートより利回りが高くなる傾向があります。
・資産価値
建物の資産価値が経年とともに目減りしても、土地の資産価値は残るというメリットがあります。新築物件と比較して、取得後の目減りは少ないと言えるでしょう。
また、中古物件という点に関して「空室を招いてしまうのではないか」という不安が多少なりともお持ちであれば、リノベーションを行うのがおすすめです。新築にも負けない魅力的な付加価値をつけることで競争力は一気に高まります。
新築アパートのメリット
・初期投資金額 さまざまな条件から土地を選択できるので、賃貸の規模や間取りなど、ニーズに合わせて自分でプランニング可能です。2015年の相続税の課税強化により、賃貸アパートを建てると土地の評価額が下がって相続税が減らせるため、節税効果に有利なパターンと言えます。
・減価償却費
法定耐用年数と建物の価値の兼ね合いで、中古アパートと比較して減価償却の面で高い節税効果が期待できます。
・ランニングコスト・維持費
建物も設備も新しいため修繕費やリフォーム費用などのランニングコスト・維持費は低く抑えることができます。
一般的な傾向として、新築アパートはマーケットを反映した最新の設備を導入できるので、競争力の高い物件を建設することが容易です。これは中古アパートには難しい点です。
こういった面から、一部金融機関は新築アパートへの融資に対してより積極的です。
「融資」という視点からは新築アパートが有利になるケースは珍しくありません。
また、借り手側から見るとどうしても「中古」より「新築」に惹かれますから、入居者が決まりやすいのは事実でしょう。これは新築アパートの大きな強みです。
中古アパートのデメリット
・利回り
老朽化が進むと家賃の低下、修繕費などの増加、空室リスクの増加などにより利回りが低下する傾向があります。
・資産価値
経年による老朽化によって、早期に建物分の資産価値が大きく目減りする可能性があります。ただし、きちんと手入れをし、定期的なメンテナンスをすることで極力資産価値を維持することは可能です。
・ランニングコスト・維持費
建築から年数が経てば経つほど修繕費やリフォーム費用などのランニングコスト・維持費は増加していきます。また、建物や設備等は国税庁により法定耐用年数と償却率が定められており、建物の構造や用途により細分化されています。減価償却目的の人は、築浅の物件の方がより長く減価償却できる反面、年間の減価償却費が大きいため、キャッシュフローの面からも、借入期間と減価償却費のバランスが重要と言えます。
・瑕疵
中古アパートのデメリットとして瑕疵があります。
「瑕疵」とは隠れた傷や欠損を指し、中古アパートの売買契約において、売主と買主の間でしばしば起きるトラブルの原因の一つです。
購入した中古アパートに欠陥があり、この欠陥が瑕疵に該当する欠陥の場合、買主は売主に対して瑕疵担保責任を追及することができます。
民法では、瑕疵が発見された場合、買主が発見後1年間は売主に対して損害賠償を請求でき、契約の目的を達成できない場合は、契約の解除請求ができると定められています。
しかし、発見された欠損が瑕疵に当たるどうかの判別はかなり困難な上、売買契約書の中で、売主側が「売主の瑕疵担保責任の免除」、あるいは「責任追及できる期間の短縮」をしていることが多くなっています。
たとえ瑕疵に気付いたとしても、その頃に責任追及できる期間を過ぎていたら、買主が修繕費用を負担しなければならなくなります。
このような負担を防ぐためにも、買主は中古アパートの契約時に、売買契約書に記載されている瑕疵担保責任についてしっかりと確認をしておくことが大切です。
新築アパートのデメリット
・初期投資金額
新規に土地の取得、アパート建築をするため、初期投資金額は大きくなる傾向です。
・利回り
新築物件は、家賃を高めに設定してすぐに入居者様が決まれば利回りが高くなりますが、なかなか入居者様が決まらないと、家賃を下げざるを得なくなってしまいます。そのため利回りが安定せず読みにくい点があります。
・納期
新築アパートのデメリットとして、納期の問題も挙げられます。
建築工事が建設業界の繁忙期と重なるとアパートの完成が遅れてしまう可能性があり、完成が遅れてしまうと、当然予定していた入居の時期もずれ込んでしまいます。
そうなると投資物件としての価値は下がってしまいます。
アパート経営は、一つひとつ条件が違うため一概に新築が有利、中古が有利という結論は出せません。新築は投資資金額が大きく節税効果が高いため、土地を相続した方に向いている、中古のアパートは比較的に投資資金額が少なく、会社に勤務する方の安定した副収入に向いているなど傾向としてあげられます。エリアの賃料が安定している、需要と供給のバランスなど、立地条件によっても大きく条件が異なります。大切なのは新築と中古の違いをしっかりと比較検討し、長期的な戦略を立てて賃貸経営していくことです。
アパート経営初心者には新築と中古どちらがおすすめか
アパート経営に関して、新築と中古のどちらがおすすめかというのは買主の属性や目的によるため断言することは難しいです。
これまでに述べたように新築アパート・中古アパート各々にメリットとデメリットがあり、買主にとってどのポイントが重要かによって判断は変わってくるからです。
たとえば初期投資額を抑えて、高い利回りを望む方には中古アパートが向いています。土地の資産価値が残るので、取得後に資産の目減りが少ないことも注目点になるでしょう。
一方で、大家としてまっさらな状態から土地の選択・規模や間取りを選んでいきたい方にとっては新築アパートが魅力的に違いありません。
アパート建築により土地の課税評価額が下がり、固定資産税が軽減し相続税対策になる点もポイントが高いです。また、減価償却の面では長期にわたる節税効果が期待できます。
また、建物・設備が新しいため、修繕・リフォームに関する費用を抑えることもできます。入居者にとって同じ条件なら「新築」の方がより魅力的ですから、空室対策に労力を費やすことは多くはならないでしょう。
初期の資金調達や利回りという点では、中古アパートの方がより初心者向きの側面を持っています。しかし、相続税・減価償却という点から長期にわたる節税効果を考慮すると、新築アパートに軍配が上がるでしょう。
初心者がアパート経営をする上での注意点
初めてアパート経営を行う方に対して、注意点がいくつかあります。
まず、一番大切なのは物件選びです。立地・間取り・環境などの要素から総合的に判断しましょう。
また、管理会社も重要です。管理会社の空室対策能力には差異があり、その結果により収支を左右しますので慎重に行いましょう。家賃滞納が発生したときに頼りになる管理会社であることも重要です。
立地によっては一括借り上げが可能となり、その場合は物件の管理や入居者への対応などをすべて管理会社が行うため、通常のアパート経営よりも手間が掛かりません。
災害に対するリスクにも備える必要があります。もし中古アパートを購入する場合は1981年以降に建築された、新しい耐震基準を満たした物件が無難でしょう。
そして中古物件購入時には、付帯設備の綿密な確認を忘れてはいけません。
物件設備の不調や不備が原因で空室が発生してしまったり、予想していた以上の修繕費が発生して収支計画が狂ってしまったりすることのないよう、確実な確認を行いましょう。
また、最悪なケースとして、設備不調が原因で入居者が被害を受けた場合、家主は責任を問われるケースもあります。
そういった面からも中古物件購入時の設備確認は慎重に行います。
不動産投資対象を決めるには、明確な投資目的や将来ビジョンが必要
不動産投資対象としての新築アパートと中古アパートは、それぞれメリット・デメリットがあります。どちらの物件が向いているかの判断は、投資されるご本人の資金状況・物件に対する志向・税金対策上の要望・初期費用・中長期的なビジョンなどいくつもの点からの検証が必要です。
ですが、こういった検証を自分自身で行うことはなかなか難しいものです。その場合は、専門家に相談してアドバイスをもらうのも良いでしょう。専門家ならではの豊富なデータの蓄積、そのデータに基づいた客観的判断、データに基づいたマーケット予測などが期待できます。
ご自身でいくら調べて検討しても回答が出なかった場合、客観的立場のアドバイスは心強いものですので、検討してみてはいかがでしょうか。
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※本記事は、2018年9月以前時点の情報をもとに執筆しています。 マーケットの変化や、法律・制度の変更により状況が異なる場合があります
※記事中では一般的な事例や試算を取り上げています。個別の案件については、お気軽にお問い合わせください。