アパートローンを活用した相続税対策とは
現金や土地などの資産を持っている人にとって相続税は大きな問題です。せっかく努力して築き上げた資産を、できるだけ多く配偶者や子どもに残したいと考えるのは当然のことですが、どのような相続税対策をとればいいのか迷っているという方が多いのではないでしょうか。
しかし、適切な相続税対策をとった場合と何もしなかった場合では、納付する相続税の額は大きく変わってしまいます。
そこで今回は、アパートローンを活用した相続税対策について説明することにします。
アパートローンとは
アパートローンは一般的に、アパートやマンションなど賃貸住宅の建築、購入、リフォーム資金などとして使うことができるローンの一種です。
住宅ローンが、借り入れる本人やその家族が居住するための住宅や土地購入などに限って使えるのに対し、アパートローンは賃貸住宅として貸し出すための集合住宅一棟や、居室の区分所有権の購入など、事業目的として利用できるローンです。多くの金融機関がこのアパートローンを取り扱っていますが、貸出額の上限や金利、返済年数などの貸出条件は、金融機関ごとに異なっています。
アパートローンを活用した相続税対策
アパートローンを活用した相続税対策は、資産を評価することから始まります。現金や預金などの価値はその金額のままですが、土地や建物はどう評価すればいいのでしょうか。
たとえば土地の相続税評価額は、路線価が定められている場合は路線価に基づいて算出します。
・路線価方式の計算式
相続税評価額=路線価(千円/平方メートル)× 面積(平方メートル)× 補正率
*角地、二方道路、三方道路、不整形地、間口が狭小な宅地などは補正率を設定して特別な補正をします。
路線価が定められていない場合は、固定資産税評価額に地域ごとに定められた倍率を乗じて算出します。
・倍率方式の計算式
相続税評価額=固定資産税評価額 × 国税局長が地域毎に定める倍率
上記の相続税評価額のままでは、多額の相続税が課せられてしまいます。そこでアパートローンを使ってアパートやマンションを建築し他人に貸すことで、借地借家法が適用され、物件を自由に処分できなくなるため、国税庁が定めた借地権割合に基づいて、土地の評価額を減額することが認められています。たとえば更地で1億円、借地権割合30%の土地を所有していたとすると、満室の場合その土地の評価額は借地権割合の30%が減額されるため7000万円となり、大きな節税となります。
借入金がある場合、相続税は軽減されるのか
さらにアパートローンを使って借り入れた資金でアパートやマンションを建築すると、それによっても相続税は軽減されます。資金を借り入れただけでは、手元に現金が増えただけなので節税効果はありませんが、借り入れた資金でアパートやマンションを建築すれば、資産は現金ではなく建物ということになります。建物は建築費で評価されるわけではなく固定資産評価額で評価されるため、借り入れた金額よりも低く評価され、その分相続税が軽減されるわけです。
たとえばアパートローンで5,000万円の借り入れをしてアパートを建築したとします。建物の固定資産税評価額を建築費の70%とすると3,500万円となります。資産が1,500万円減ることになり、その分相続税は軽減されます。
このようにアパートローンをうまく活用すれば、相続税を大きく軽減させることが可能です。また、預貯金など多額の現金資産をお持ちの場合は、その預貯金を利用してアパートやマンションを建設し、相続税対策とすることもできます。
しかし、せっかく相続税対策ができても、アパート経営・マンション経営がうまくいかないと、かえってそれが重荷になってしまうこともあります。その点も十分に考えて、アパートローンを活用した相続税対策は実行することが大切です。
いずれにしても最終的には、税理士などの専門家としっかり相談することをお勧めします。