アパート経営・マンション経営の白色申告【経費・必要書類】
アパート経営・マンション経営で経費を差し引いても20万円以上の収入が得られている人は、サラリーマンであっても「確定申告」をすることをおすすめします。
これらの収入や支出は、会社の把握できるところではありませんので、会社の確定申告や年末調整だけではズレが生じてしまいますが、自ら申告を行えば、税金が必要以上に天引きされるのを防ぐことができます。
この記事の目次
白色申告とは?
白色申告は、青色申告とは異なる簡易的な「確定申告」の方法です。
以前までは帳簿作成の必要もなく、非常に簡易的なものでしたが、2014年1月以降、個人で事業を行っている方は、所得金額に関わらず、記帳と帳簿書類の保存が必要となったため、以前と比較すると、それほど簡易的とは言えなくなってしまったかもしれません。
ただし、記帳については、日々の合計金額をまとめて記載するなどの簡易な方法で良いとされていますので、申告の仕方としてはやはり青色申告よりは簡易的であると言えるでしょう。
青色申告では、手間がかかる代わりに様々な特典を受けることができますが、白色申告では、これらの特典がほとんどありません。
収入が多くなった際、事業の規模が大きくなった際には、青色申告に変更して、特典が多く受けられるようにすることをおすすめします。
白色申告のメリットとデメリットは?
簡易的と言われる白色申告のメリット・デメリットを検証してみましょう。
白色申告のメリット
事前申請が不要
白色申告は、税務署に事前申請する必要がありません。個人事業をスタートしてから特に税務署に申請しなければ、白色申告として扱われます。
申告に伴う作業がシンプルに行える
白色申告も記帳と帳簿書類の保管は青色申告同様に必要ですが、記帳に関しては日々の合計金額をまとめて記載といった方法も容認されるので、青色申告と比較すると少ない負担で済みます。
また、確定申告の際の提出書類が青色申告と比較して少ないです。
以上のように、比較的容易に始められて作業がシンプルなのが白色申告のメリットです。
白色申告のデメリット
青色申告に比べて受けられる控除が少ない
白色申告では、青色申告に適用される特別控除の対象にはなることはできません。専従者の場合でも、給料の全額を経費計上することは不可です。また、基本的に赤字を繰り越すこともNGとなります。
上記のメリット・デメリットから、元々白色申告は個人事業を始めて日が浅い方や所得が少ない方が選択する傾向にありました。
しかし、2014年の制度変更以降、白色申告にも記帳と帳簿などの書類保管義務が発生したため、白色申告の内容はやや青色申告に近づき、白色申告のメリットは以前と比較して薄くなっています。
不動産投資を行われている方は、事業全体の規模と家賃収入・税金・控除のバランスを見極めて切り替えるタイミングを検討することが必要でしょう。
青色申告との違いは?
白色申告と比較して、青色申告を選択した場合は記帳をしっかりと実行する必要があり、提出書類も増えるため、申告に費やす時間も多くなります。
それ以外に大きな違いとしては、青色申告には以下のメリットがあることです。
青色申告のメリット
青色申告特別控除(最高65万円)
この特別控除は、青色申告の最大のメリットと言って良いでしょう。納める所得税が少なくなり、この控除が住民税・国民健康保険料の計算にも反映されます。
控除額には10万円控除(簡易簿記か現金式簡易簿記)と65万円控除(複式簿記)の2種類があります。
白色申告の場合は、この控除の対象にはなれません。
赤字の繰越可能(3年間)
青色申告を選択すれば、赤字になった年の損失の全額を3年に渡って繰り越せるので、翌年以降の節税が可能です。
一方で、白色申告では基本的に赤字の繰越はできません。
家族への給与が経費での処理可能
白色申告の場合は、個人事業を手伝った家族に給料を支払ってもそれを経費計上することはできませんが、青色申告では経費にすることが可能です。
青色申告のデメリット
また、青色申告のデメリットには以下のようなことが挙げられます。
事前に申請が必要
青色申告を行う場合は、申告を行う前年の3月15日までに税務署への申請が必要になります。そのため、「今年から青色申告に切り替えたい」と思ってもすぐに切り替えることはできません。
正規簿記の原則に従った会計処理が必要
青色申告で65万円の特別控除を受けるためには、複式簿記で帳簿を付ける必要があります。複式簿記の記帳は複雑で手間がかかるため、簿記の知識がない方だと慣れるまでなかなか難しいでしょう。
書類の不備があれば青色申告が取り消されることがある
青色申告で使用する帳簿や領収書、請求書などは7年間保存することが法律で定められており、確定申告後も捨ててはいけません。
もし税務署からの調査があった際に書類を提示できないと、青色申告の承認が取り消されてしまう場合があります。
以上が、青色申告のメリット・デメリットです。
白色申告、青色申告それぞれのメリット・デメリットをしっかり検討した上で、記帳・帳簿管理に時間を費やす以上のメリットがあれば白色申告から青色申告の切り替えを進めましょう。検証した上で変更すれば成果は出るはずです。
小規模の場合は白色申告で
白色申告はどのようにして行うのか、といいますと、実は青色申告の届出をしなかった人は全て、白色申告ということになっていますので、わざわざ「白色申告にします」と言わずとも、自動的に白色申告をすることになります。
アパート経営・マンション経営を行っている場合、確定申告をするにあたって、青色申告をするべきか、白色申告をするべきかという疑問が生じるかと思われますが、この場合は事業の規模を基準に考えましょう。
青色申告では条件によっては、合計65万円の特別控除を受けることができますが、この場合は、5棟10室以上の規模のアパート経営・マンション経営を行っており、更に正規の簿記の原則に従った記帳を行っている必要があります。
「これほどの規模ではない」という方は白色申告を選択するのが良いかもしれません。
例えば「ワンルームマンション投資を1戸しかしていない」「帳簿をつける時間がない」「帳簿をきちんとつけられる自信がない」という方は、白色申告の方が、手間が少ない分、楽であると考えることができます。
アパート経営・マンション経営の不動産投資を行う中で、事業の規模が大きくなり、白色申告から青色申告に変更したいというご希望をお持ちになるオーナー様もいらっしゃるでしょう。
その場合は、申告書を提出する前年の3月15日までに所轄の税務署に「青色申告の承認申請書」を提出することで手続きできます。この書類は税務署で手に入れることが可能ですし、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。
その年の途中で申告方法を変更することはできませんので、注意しましょう。
白色申告の必要書類とは?
白色申告に必要な書類は以下の3点です。
⦁ 確定申告書に添付する各種控除関係の書類
サラリーマンを経験された方なら年末調整のために生命保険・医療保険・住宅ローンなどの控除に必要な書類を提出されたことがあると思いますが、それと同様の手続きになります。
控除に必要な書類が保険関係であれば、保険会社から控除用の証明書が送られてきます。住宅ローン控除であれば住宅借入金等特別控除額の計算明細書(税務署で入手)、住民票の写し(市町村役場で入手)、建物・土地の登記事項証明書(法務局で入手)、建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し、住宅ローンの残高を証明する「残高証明書」(住宅ローンを借り入れた金融機関から送付)などが必要です。
⦁ 確定申告書B
最寄りの税務署で入手、あるいは国税庁のホームページからダウンロードすることができます。
⦁ 収支内訳書
こちらも最寄りの税務署で入手、あるいは国税庁のホームページからダウンロードすることができます。
上述の「確定申告書B」や「収支内訳書」を記入するには日頃から帳簿を付けておく必要があります。
記帳するのは「家賃などの収入」と「アパート経営・マンション経営での必要経費」です。経費はスマホやパソコンの通信にかかった費用なら「通信費」、経営上必要な移動のために電車やバスを利用した場合は「旅費交通費」と用途別の記載となります。
帳簿の記帳と合わせて領収書・請求書などの書類を保管することも必要となります。確定申告書と収支内訳書の記入は用途別になりますので、これらの書類も日頃から用途別に保管しておくのがおすすめです。
また、白色申告をサポートしてくれる無料で使える会計ソフトも色々ありますので、ネットで検索して使い勝手の良いものを探すのも良いでしょう。
白色申告の記帳の仕方
白色申告では、どれだけの売上があり、どれだけの支出があったか、日々の合計金額をまとめて記載するだけで良いとされています。
その他「記録保存」というものが必要になりますが、これは日々の合計金額を裏付けるための、領収書やレシートなどの記録になるものを保存することを言います。
これらの記録は、基本的に白色申告で提出する必要はありません。
「収支内訳書」という書類と「申告書A」というものを提出すれば良いだけです。
これらの書類は国税庁のHPでダウンロードすることができますので、一度確認して見てみましょう。
方法は簡易的でも、実際の項目などは初めての方には非常に難しく感じられるようですので、このような場合は税務署に直接相談し、書き方の手ほどきを受けて、きちんと記入できるようにしておくと安心です。
また白色申告の場合は、収入金額や必要経費が記載してある帳簿は7年間、それ以外の帳簿・及びその他の書類(領収書や請求書請求書など)は5年間、というように保存が義務付けられています。
ここでの期間とは、該当する事業年度の確定申告書の提出期限からの期間となります。
経費として計上できるもの
経費として計上できるものとしては、人件費、減価償却費、水道・電気・ガスなどの光熱費、建物のメンテナンスにかかった費用、管理会社への管理委託費用など様々ですが、これらの計上の仕方や、仕分けの仕方も、白色申告は青色申告と大きく異なります。
家族を従業員として雇用している場合、白色申告では、配偶者は86万円、その他の親族は1人につき50万円に限り計上できることとなっています。
減価償却費に関しては、10万円未満の減価償却資産に関してのみ計上できるようです。
減価償却については詳しくこちらで解説しています。(他記事誘導)
その他の経費については、一応の仕分けをしておくと良いようですが、アパートの一室を自宅として使用しているなどの場合は「按配」というものを行って、パーセンテージで経費に計上します。
どのようなパーセンテージで?とおもわれるかもしれませんが、これは税務署の方が納得するような数字であれば問題ないようです。
どこに仕分けてよいのか分からない項目がある場合には「雑費」として処理しても問題はありませんが、もっと適切な仕分けの仕方がある場合もありますので、このようなときのために、領収書やレシート、クレジットカードの明細書などを保存しておき、税務署に相談してみましょう。
経費をしっかりと計上できるかどうかは、還付金の金額にも関わってきます。慣れもありますができるだけもれなく申告できるようにしておくことをおすすめします。
将来的に事業規模を大きくするなら青色申告の検討も
アパート経営・マンション経営の確定申告は家賃収入を軸に、事業の規模がそう大きくない時期は白色申告でも問題ありません。青色申告と比較して負担も少ないですし、事前の申請なしで始められます。
帳簿の作成が苦手な方はネットで探せば無料で使える会計ソフトもありますから、チェックしてみましょう。
また、事業の規模が大きくなるに伴い青色申告のメリット(控除・赤字繰越・必要経費)も大きくなりますから、折を見て切り替える検討も必要でしょう。
その年の途中で切り替えはできないので、年単位で考慮していくことになります。
※写真はイメージです
※本記事は、2018年9月以前時点の情報をもとに執筆しています。 マーケットの変化や、法律・制度の変更により状況が異なる場合があります
※記事中では一般的な事例や試算を取り上げています。個別の案件については、お気軽にお問い合わせください。