賃貸併用住宅の登記の種類と申請の流れ
不動産を取得し登記を行う際、建物と土地をそれぞれ登記しなければいけません。不動産登記簿には、所在地や地番、面積、地目、構造などが記載された表題部と、所有権や抵当権などが記載された権利部があります。賃貸併用住宅では、単独登記と区分登記という方法がありますが、それぞれはどのような違いがあるのでしょうか。また、賃貸併用住宅の登記申請はどのように行えばよいのでしょうか。
単独登記と区分登記の違い
建物の登記には、1棟を1つの建物として登記する「単独登記」と、1棟をいくつかに分けて登記する「区分登記」があります。区分登記は、1棟の建物に構造上独立した住居や店舗がある場合に行うことができる登記方法で、自宅部分と賃貸部分が独立した構造を持つ賃貸併用住宅でも区分登記の対象になります。また、賃貸部分に関してまとめて登記することも、各部屋ごとに分けて登記することも可能です。賃貸併用住宅における単独登記は、自宅部分と賃貸部分を1つの建物として登記する方法で、一般的な戸建て住宅ではほとんどが単独登記で登記をします。単独登記のメリットは住居部分の床面積が総床面積の51%であれば、建物の総建築費に対して金利の低い住宅ローンが利用できたり、住宅ローン減税が受けられること等があります。
自宅部分と賃貸部分を分けて登記する区分登記のメリットは、建物を設計する際に自宅部分の割合を気にしなくてもよくなることです。住宅ローンを組むときに、一般的に自宅部分の床面積が建物の半分以下だと融資を受けることができません。しかし、区分登記をすることで自宅部分の割合に関係なく、自宅部分については住宅ローンで融資を受けることができます。この場合、賃貸部分は事業用のアパートローンを併用することになります。また、住宅ローン控除を受ける場合にも、自宅部分の割合が半分以下だと控除の対象になりませんが、区分登記をすることで自宅部分の割合に関係なく、自宅部分の控除を受けることができます。さらに、区分登記をすることで、賃貸部分だけを売却したり、自宅部分と賃貸部分を別々に相続させたりしやすくなります。
区分登記をするデメリットは、自宅部分と賃貸部分についてそれぞれ登記をする必要があるので、単独登記の場合より手数料が多くかかることがあげられます。また、二世帯住宅の賃貸併用住宅の場合、区分登記によっては、相続税の小規模宅地の減税が認められないケースがあるので注意が必要です。具体的には同じ建物に相続を受ける家族が住んでいても、居住する区分が違うと「同居の親族」と認められずに、相続税の減税が受けられない場合があります。
賃貸併用住宅の登記申請はどのように行うのか?
新築の場合は建物の表題登記が必要ですので、表示部の登記を担当する土地家屋調査士が行います。また、登記簿の権利部の登記は司法書士が行います。それぞれ個別に依頼することもできますが、両方の資格を持つ事務所に依頼したり、司法書士に依頼し提携している土地家屋調査士に実務を代行してもらうこともできます。登記の申請には、登記申請書、印鑑証明書、住民票、委任状などの書類の提出が必要です。
登記にかかる費用は実費と報酬に分けられます。実費には、不動産を登記するときにかかる登録免許税があります。登録免許税は課税標準に一定の税率を掛けることでその金額を計算することができます。ただし、個人が取得する住宅で一定の条件を満たすものは、税率軽減の特例があるので確認しておくとよいでしょう。その他にも、登記事項証明書などの発行にかかる実費が1通当たり600円程度(法務局の窓口で申請する場合)かかります。報酬には、土地家屋調査士や司法書士へ支払う費用がありますが、登記する件数や不動産の課税標準額によって金額に違いが生じます。
賃貸併用住宅を建てたら、登記を行う必要があります。費用を安くするために自分で申請を行いたいと考える方もいるかもしれませんが、多くの書類を不備なく揃える必要があり専門知識が必要なため、司法書士など専門家に依頼することをおすすめします。