マンションの建替えの流れとは?費用相場や立ち退き対応のポイントも紹介
賃貸マンションを長く経営していると、いずれ「建替え」について考えなければならないタイミングがやってきます。
しかし、いつ・どのような流れで建替えを進めれば良いのかわからないという方も多いでしょう。
入居者とのトラブルなく、スムーズに賃貸マンションの建替えを進めるためには、建替えに関する基礎知識をしっかりと理解しておくことが大切です。
この記事の前半では、基礎知識としてマンションの法定耐用年数と寿命について解説するとともに、賃貸マンションの建替えの流れを5つのステップに分けて紹介します。
さらに後半では、賃貸マンションの建替えに必要なおもな費用の相場、立ち退き料の内訳や支払うタイミング、立ち退き対応のポイントを解説します。
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この記事の目次
マンションの法定耐用年数と寿命
まずは、賃貸マンションを建替えるタイミングについて見ていきましょう。
以下では、マンションの「法定耐用年数」と、マンションの「寿命」および「建替え寿命」をそれぞれ解説します。
マンションの法定耐用年数
「法定耐用年数」とは、対象となる資産の価値を計算するため、法律で定められている基準のことです。
法定耐用年数の期間が経過すると、税務上、その資産の価値はなくなります。例えば、法定耐用年数が10年と定められている資産があった場合、その資産は時間が経つにつれ価値が減っていき、使用開始日から10年後に、税務上の価値を失うわけです。
ただし、税務上の価値を失ったからといって、その資産がすぐに使えなくなるのではありません。
法定耐用年数は、あくまで計算に用いるための基準で、実際の「寿命」や「建替え寿命」とは別物であるため注意しましょう。
マンションの法定耐用年数は、構造や用途によって異なります。
住宅用マンションの法定耐用年数を構造別にまとめたものが、以下の表です。
住宅用マンションの構造 | 法定耐用年数 | |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 47年 | |
鉄骨造(S造) | 骨格材の厚さが3mm以下のもの | 19年 |
骨格材の厚さが3mmを超え4mm以下のもの | 27年 | |
骨格材の厚さが4mmを超えるもの | 34年 |
鉄筋コンクリート造の住宅用マンションなら、法定耐用年数は47年なので、税務上は47年間使用可能ということになります。
同時に、マンションの取得にかかった費用は、47年かけて少しずつ経費に計上して処理していきます。これが「減価償却」と呼ばれる会計処理です。
マンションの寿命と建替え寿命
続いては、税務上の概念である「法定耐用年数」とは異なる、実際の「寿命」や「建替え寿命」について確認していきましょう。
・マンションの寿命
マンションの「寿命」とは、構造ごとの耐久性や経済的価値などを考慮した、建物の使用可能期間のことです。
法定耐用年数とは異なり、法律で定められている概念ではありません。
マンションの寿命については、国土交通省の「『中古住宅流通促進・活用に関する研究会』報告書 取りまとめ後の取組紹介」の資料にて、複数の見解が示されています。
見解の具体的な内容は、以下の表のとおりです。
「(参考)RC造(コンクリート)の寿命に係る既往の研究例」より | |
鉄筋コンクリート系住宅の平均寿命 | 推計68年 |
鉄筋コンクリート造建物の物理的寿命 | 推定117年 |
構造体としての鉄筋コンクリートの 効用持続年数 | 一般の建物は120年 外装仕上げで延命すれば150年 |
出典:国土交通省「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書
鉄筋コンクリート造の住宅用マンションの法定耐用年数は47年ですが、上記見解に基づけば、実際の寿命はもっと長いと考えられるでしょう。
ただし、寿命の長さは、マンションの管理状態や立地状況などに大きく左右されます。
定期的な点検やメンテナンスが行なわれていない、建材の品質が低い、海が近く塩害を受けやすいなどといったマンションの場合、寿命は短くなってしまうでしょう。
・建替え寿命
マンションの「建替え寿命」とは、使用可能期間に関係なく、マンションをそのままの状態で維持するのが望ましくない場合に用いられる目安のことです。
マンションの寿命と同じく、建替え寿命も法律で定められているものではありません。
マンションの建替え寿命は、一般的には30~40年程度と考えられています。
マンションの寿命自体は、長ければ100年を超えるとの見解も示されていますが、建替え寿命が30~40年程度と考えられる背景の一つに、耐震基準の問題が挙げられます。
耐震基準は建築基準法で定められる基準です。1950年の建築基準法制定から1981年5月までに適用されていたものを「旧耐震基準」、法改正を受けて1981年6月以降から適用されることとなった厳格な基準を「新耐震基準」といいます。
2021年時点で築40年を超えるマンションは、1981年以前に建築確認を受けていることから新耐震基準を満たしていない可能性が高く、地震に対する安全が十分に確保されているとはいえません。
そのため、新耐震基準に適合する高い耐震性を備えたマンションへ、早い段階で建替えるケースが多いのでしょう。
また、築30年以上となるとマンションの老朽化が進み、「配管が劣化した」「性能が市場のニーズと合わなくなってきた」などの理由から建替えるケースもあります。
ただし当社では、100年先まで見据えた「100年賃貸経営」にこだわっているため、築30~40年程度で建替えるという考え方に対して、挑戦をしております。
マンションの建替えの流れ~5ステップ~
賃貸マンションの建替えの一般的な流れには、次の5つのステップがあります。
【ステップ1】建替えについて検討を進める
【ステップ2】建替えの具体的な全体計画を定める
【ステップ3】新規入居を打ち切る
【ステップ4】入居者の立ち退きを開始する
【ステップ5】建替え工事に着工する
それぞれのステップについて、詳しく確認していきましょう。
ステップ1.建替えについて検討を進める
最初のステップでは、「経営している賃貸マンションを建替える必要はあるのか?」「建替え・修繕・売却のいずれが適しているのか?」などと検討を進めていきます。
建替えの必要性を検討する
経営する賃貸マンションの築年数と建替え寿命を比較しつつ、耐震性や老朽化の進み具合、近年の入居率などを鑑みて、賃貸マンションを建替えるべきか検討を始めましょう。
賃貸マンションの建替えは、オーナー様だけの問題ではなく、入居者へも影響を与えます。したがって、建替えの必要性やタイミングについては、慎重に検討しなければなりません。
修繕や売却という選択肢も考える
賃貸マンションには、建替え以外にも、修繕や売却という選択肢があります。
例えば、現在の耐震基準を満たしていない賃貸マンションなら、修繕ではなく建替えをする必要があるでしょう。
一方で、賃貸マンションの構造自体はあまり劣化しておらず、見た目の老朽化が進行しているだけなら、外壁塗装や屋上防水工事などの小規模な修繕で済む可能性も出てきます。
また、仮に賃貸マンションを建替えたところで、建替え前より空室が増えてしまうなど、希望とする収益性の向上が期待できないケースもあるかもしれません。
「建物の価値は下がっていないものの、オーナーとしてこのまま賃貸マンションの経営を続けるメリットは少ない」と判断するなら、建替えや修繕をするのではなく、売却という選択肢も考えてみるとよいでしょう。
ステップ2.建替えの具体的な全体計画を定める
建替えの必要性を吟味し、修繕や売却とも比較したうえで賃貸マンションを建替えることを決めたら、具体的な全体計画の策定に進みます。
計画を始めるのは建替え着工の1~2年前から
具体的な全体計画の策定を開始するのは、賃貸マンションの建替えに着工する1~2年前が目安です。
まずは、建替え後のマンション経営の事業計画や資金計画などを定め、そのうえでどのような間取りや外装にするか、共用部分や専有部分の設備や仕様はそれぞれどうするかなどを計画していきます。
併せて、建築会社などの選定も行ないましょう。
「既存不適格」に注意する
建替えの計画を始める際に注意しなければならないのが、築年数が古い賃貸マンションは「既存不適格」に該当する可能性があります。
既存不適格とは、その建物を建てた時点では法律に準じていたものの、その後の法改正などを経て、現在の法律には適合しなくなっている状態をいいます。
既存不適格建築物は、そのままの状態で存在するだけなら、何ら問題はありません。
しかし、建替えや増改築工事などを行ない、それでも現在の法律に適合しないままだと「違法建築物」として扱われ、工事の停止や除却などの行政命令が入ることもあります。
既存不適格建築物を、現在の法律に基づいて建替えをするとなると、特に「容積率」と呼ばれる、敷地面積に対する延床面積の割合を縮小しなければならない可能性があります。
容積率が小さくなれば、賃貸マンションの規模も小さくなるため、収益性が低下してしまうリスクに注意が必要です。
ステップ3.新規入居を打ち切る
建替えの全体計画の策定を進めるのと並行して、不動産管理会社へ建替えをする旨を連絡し、賃貸マンションの新規の入居者募集をいったんストップする必要があります。
これは、建替え時に入居者が多く残ったままだと、立ち退き交渉の手間がかかるうえ、立ち退き料も高額になるためです。
更新規定のある賃貸借契約を入居者と締結している場合、マンションのオーナー様から契約を解除するには、法律に基づき「正当事由」と「立ち退き料」が必要となります。
正当事由とは、賃貸借契約を解除するための正当な理由のことで、単に「老朽化してきたから建替える」といった理由では、正当事由としては弱いとみなされてしまうでしょう。
賃貸マンションが法定耐用年数に到達しており、人が住めないくらい老朽化の状態が甚だしいことなどが明らかである場合は、強い正当事由として認められる可能性はあります。
しかし、そのような状態になってから建替えるのは現実的ではなく、多くのケースでは正当事由が弱いと判断されるため、入居者を立ち退きさせる十分な理由にはなりません。
そこで、立ち退きを依頼する際には、正当事由を補完する相応の「立ち退き料」を、入居者に支払う必要が出てくるのです。
ケースによるものの、賃貸マンションの立ち退き料は1戸あたり50~100万円程度が目安となるため、残っている入居者が多ければ多いほどオーナー様の負担は重くなります。そのため、建替え時にはある程度の空室がある状態が理想です。
計画的に空室を確保しておくためには、「定期借家契約」への契約変更も選択肢となるでしょう。
なお、立ち退き料については「マンションの建替えに必要なおもな費用」および「立ち退き料の内訳と支払うタイミング」の章で、定期借家契約への契約変更については「立ち退き対応でトラブルが起きそうなときは『契約内容の変更』も検討する」の章で解説していますので、併せてご覧ください。
ステップ4.入居者の立ち退きを開始する
賃貸マンションの建替えにより、契約を解除しなければならないことを入居者へ伝え、立ち退きを順次開始していきます。
立ち退きを勧告するのは、遅くとも「契約期間が満了する半年前まで」です。
借地借家法第26条では、建物の賃貸借契約を更新しない場合は、契約期間満了の1年前から6ヵ月前までに、相手方に更新しない旨を伝えなければならないとされています。
したがって、立ち退きについては、余裕をもって入居者へ伝えるようにしましょう。
その際、立ち退き料を支払うからといって、オーナー様から一方的に解約できるわけではなく、入居者の合意を必ず得なければなりません。
合意が得られずトラブルに発展することのないよう、入居者へは、立ち退きに至るまでの経緯や、感謝・お詫びの気持ちなどについて丁寧に説明する必要があります。
併せて、入居者が新たな住まいを探す負担を軽減するため、自分が経営する別のマンションや、近隣にある同水準のマンションなど、代替物件の提案をするとよいでしょう。
なお、立ち退き対応の注意点については、最終章「立ち退き対応でトラブルが起きそうなときは『契約内容の変更』も検討する」にて詳しく説明しますので、併せてご覧ください。
出典:借地借家法
ステップ5.建替え工事に着工する
入居者の立ち退きが完了したら、最後のステップとして、賃貸マンションの解体に着工します。この段階までくれば、オーナー様がすべきことはおおむね完了です。
既存のマンションをすべて解体したあとは、新しいマンションの建築に着工・竣工となります。
マンションの建替えに必要なおもな費用
マンションの建替えには、古いマンションの解体費用・新しいマンションの設計費用・新しいマンションの建築費用・入居者への立ち退き料・各種税金の5つの費用が必要です。
それぞれの費用について、以下で概要を解説します。
古いマンションの解体費用
既存のマンションを柱や梁などの基礎部分から取り壊し、更地の状態にするための費用です。
どのくらいの費用がかかるかは、マンションの規模や構造、立地などの条件に大きく左右されます。
特に立地条件に関しては、隣接する建物との距離が近かったり、重機が使用できなかったりと特殊な環境の場合、解体作業の手間がかかるため費用が上がる事もあります。
一般的な目安としては、鉄筋コンクリート造のマンションなら、1戸あたり200~1,000万円程度、1坪あたりに換算すると5~8万円程度です。
よって単純計算では、マンション1棟あたり50戸の場合、解体費用には最低でも1億円程度かかることになります。
新しいマンションの設計費用
新しいマンションの設計・管理について、工事会社や設計事務所などへ依頼する際、設計費用が発生します。
設計費用は、建築費用の額に応じて設定されるのが一般的です。
加えて、建築費用の額が大きければ大きいほど、全体に占める設計費用の割合は減る傾向にあります。
例えば、建築費用が3億円のマンションなら、設計費用は6%程度、すなわち1,800万円程度が目安となるでしょう。
新しいマンションの建築費用
新しいマンションの建築費用は、既存のマンションの解体費用と同様に、マンションの規模や構造、立地などのさまざまな条件により変動します。
鉄筋コンクリート造のマンションの場合は、1坪あたり100~120万円程度が目安となり、7~8階建て前後のマンションなら、1棟あたり3~5億程度かかるイメージです。
材料の価格や人件費は高騰傾向にあるため、既存のマンションと同じ規模で建替えるとすれば、既存のマンションを建築したとき以上の費用がかかる可能性が高いでしょう。
また、新しいマンションを建築する際には、マンション本体の建築費だけでなく、「付帯工事費」がかかる点にも注意が必要です。
付帯工事費には、電気・ガス・水道を引き込むための費用や、工事に必要な足場・仮設トイレの設置費用などが含まれます。
希望する設計内容でのマンションの建築費用相場を知るためには、複数の工事会社へ見積もりを依頼することが大切です。
入居者への立ち退き料
入居者への立ち退き料は、法律上「財産上の給付」と表現され、借地借家法第28条にその根拠があります。
<借地借家法第28条>
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
引用:借地借家法
ただし、立ち退き料として入居者にいくら支払うべきかについては、明確な計算式があるわけではありません。あくまで立ち退きに合意してもらうことが目的だからです。
賃貸マンションの一般的な立ち退き料の目安として、1戸あたり50~100万円程度の予算を確保しておくとよいでしょう。
それでも提示した金額に入居者が納得しない、オーナー様の手続きに不備があり立ち退きを急かすことになったなどのケースでは、立ち退き料に迷惑料や慰謝料を加えて支払うこともあります。
なお、立ち退き料の内訳については、次章「立ち退き料の内訳と支払うタイミング」にて詳しく説明しますので、併せてご覧ください。
各種税金
賃貸マンションの建替えでは、新たに建物を建築・所有することになるため、登録免許税・不動産取得税・固定資産税・都市計画税・印紙税がかかります。
各種税金の概要を確認していきましょう。
登録免許税
登録免許税とは、不動産の登記を申請する際に課される税金のことです。
新しいマンションが完成したら「所有権保存登記」を申請する必要があり、その際に「マンションの固定資産税評価額×0.4%」の登録免許税がかかります。
不動産取得税
不動産取得税とは、不動産を取得した際に課される税金のことです。
新しいマンションを取得してから原則60日以内に申告する必要があり、その際に「マンションの固定資産税評価額×4%」の不動産取得税がかかります。
ただし、特例として令和6年3月31日までに新しいマンションを取得した場合、不動産取得税の額は「固定資産税評価額×3%」です。
固定資産税
固定資産税とは、不動産を取得した翌年度から毎年課される税金のことです。
毎年1月1日現在において、固定資産課税台帳に登録されている人に対して課税され、年4回に分けて納付します。
固定資産税の額は、原則「マンションの固定資産税評価額×1.4%」です。
特例として、住宅用のマンションには、土地と建物それぞれに税率が軽減される措置があることを覚えておきましょう。
都市計画税
都市計画税とは、固定資産税と同様に、毎年1月1日現在において固定資産課税台帳に登録されている人に対して課される税金のことです。
固定資産税との違いは、都市計画税は「市街化区域内に土地や建物を所有している場合にのみ」課税される点にあります。
建替えるマンションが市街化区域内に該当するか不明な場合は、自治体や不動産会社などに問い合わせておくとよいでしょう。
都市計画税の額は、原則「マンションの固定資産税評価額×0.3%」であり、固定資産税との一括納付が可能です。
また、都市計画税の場合、住宅用のマンションの土地に限り、税率が軽減される特例措置があります。
印紙税
印紙税とは、建物の建築請負契約などの課税文書に対して課される税金のことです。
課税文書に購入した印紙を貼り付け、消印により印紙税を納付します。
印紙税の額は、課税文書に記載された契約金額によって変動し、請負に関する契約書の場合、例えば、記載された契約金額が1億円を超え5億円以下なら、税額は10万円です。
なお、上記5つの税金とは別に、建替えたマンションを将来相続する際には、相続税を支払う必要があります。
相続税の額については、建物部分はマンションの固定資産税評価額と同額で、土地部分は国が定める公的な価格「路線価」が定められているかどうかで額が異なります。
土地活用一筋54年。累計着工戸数120,000戸超の実績。
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立ち退き料の内訳と支払うタイミング
前章「マンションの建替えに必要なおもな費用」では、入居者へ支払う立ち退き料について、概要を紹介しました。
以下では、立ち退き料の内訳と支払うタイミングについて解説します。
立ち退き料の内訳
お伝えしたとおり、立ち退き料は明確な計算式に基づいて算出できるものではありませんが、おもに次の3点を考慮して決定します。
移転費用の補償
立ち退き料に必ず含めるべきなのが「移転費用の補償」です。
具体的には、以下のような費用を補償します。
・入居者の引越し代
・引越し先の仲介手数料
・引越し先の礼金
・現在のマンションの返還敷金と引越し先の敷金との差額など
消滅する利用権(借家権)の補償
「消滅する利用権(借家権)の補償」とは、入居者が現在のマンションを相場の賃料よりも安く借りている権利を補償するものです。
入居者が現在のマンションを相場の賃料より安く借りている場合、立ち退きによってその「価値」が消滅してしまうため、補償しようとの考えに基づきます。
現在の賃料が安ければ安いほど、「消滅する利用権(借家権)の補償」として支払う金額は高くなると覚えておくとよいでしょう。
営業権の補償
「営業権の補償」とは、入居者が店舗などを営む権利を補償するものです。賃貸マンションなどの居住用物件では、基本的に考慮する必要はありません。
ただし、賃貸マンションの1階部分に店舗が入っているなどのケースでは、店舗への立ち退き料に「営業権の補償」を含める必要があるでしょう。
立ち退き料を支払うタイミング
一般的には、入居者がマンションを明け渡すのと同じ日に立ち退き料を支払います。
とはいえ明確な決まりはないため、双方の合意があれば、例えば、立ち退き料の50%を明け渡し前に支払い、残りの50%を明け渡し日に支払うということも可能です。
入居者としては、立ち退き前に転居先の契約・支払いなどを済ませるケースが多いため、立ち退き料を早めに欲しいと考えるでしょう。
一方で、マンションを明け渡す前に立ち退き料を支払うのは、オーナー様にとってリスクにもなります。
トラブル防止のためにも、立ち退き料を支払うタイミングについては双方でしっかりと話し合うことが大切です。
立ち退き対応でトラブルが起きそうなときは「契約内容の変更」も検討する
マンションの立ち退きは、「建替え」という明確な理由があったとしても、入居者にとっては負担となるため、交渉がスムーズに進まない可能性も考えられるでしょう。
トラブルに発展するリスクを回避するために、立ち退き対応の選択肢の一つとなるのが、「あらかじめ契約内容を変更しておく」という方法です。
建物の賃貸借契約には、「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。
普通借家契約は、更新規定のある賃貸借契約のことで、一方の定期借家契約は、更新規定のない契約のことです。
すなわち、定期借家契約を取り交わしている場合は、契約期間が終了すれば、入居者は必然的に立ち退かなければなりません。
よって、入居者の契約を普通借家契約から定期借家契約にあらかじめ変更しておけば、入居者は契約期間の満了にともない、必ず立ち退かなければならなくなります。
2000年3月1日以降に締結された賃貸借契約なら、双方の合意のうえで普通借家契約から定期借家契約へと契約変更が可能です。
定期借家契約に変更できれば、立ち退き料の支払いは不要となり、入居者の立ち退き時期も確定するため、立ち退き対応にまつわる手間が格段に減るでしょう。また、入居者とのトラブルの発生リスクを軽減させる効果も期待できます。
ただし、単に普通借家契約から定期借家契約へと契約変更するだけでは、入居者にはメリットがないため、賃料の減額を交換条件とするのが一般的です。
立ち退き料を支払う方法で立ち退き対応を行なうのか、あらかじめ契約内容を変更しておくのか、どちらが正解ということはないため、ケースに応じて計画的に対応しましょう。
まとめ
賃貸マンションの建替えの一般的な流れは、次のとおりです。
1. 建替えについて検討を進める
2. 建替えの具体的な全体計画を定める
3. 新規入居を打ち切る
4. 入居者の立ち退きを開始する
5. 建替え工事に着工する
また、マンションの建替えに必要なおもな費用と、その相場をまとめたものが以下の表です。
ただし、各種税金を除いた費用は、さまざまな条件によって大きく変動するため、あくまで参考程度と理解しておきましょう。
生和コーポレーションでは、賃貸マンションの経営や建替えに関して、多数の実績とノウハウを持った専門家がアドバイスを行なっています。
「賃貸マンションの建替えの経験がない」「建替えで失敗しないだろうか」という不安を抱えているオーナー様は、生和コーポレーションへお気軽にご相談ください。
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